2019.12.10 一般質問
第47回 議会だよりで一般質問をどう扱うべきか
回答へのアプローチ
まずBはとれません。たくさんの時間が割かれているからといって、議会だよりでもたくさんの紙面を割くべきということにはなりませんし、議会において、一般質問に時間を割きすぎている現状の方がかえって問題といえるかもしれません。
Cは微妙です。確かに、一般質問が、次の選挙で誰に投票すべきか、その材料を与えてくれるでしょう。また、市政の問題点を指摘するものであるという点もそのとおりです。議会だよりこそが、議会と住民をつなぐ唯一のツールなら、それを最優先にするという判断もあるかもしれません。しかし、今や議会に関する情報を伝えるツールは議会だよりだけではないのです。他のツールとの関係で議会だよりが果たす役割を踏まえて、一般質問をどう扱うか検討しなければなりません。場合によっては、「これまでの扱いは大きすぎる」と判断する議会もあることでしょう。回答としてはAとしたいと思います。
実務の輝き
地元には「別にそれほどおいしいわけではないけどね」などといわれつつ、繁盛している食堂があります。ほかにもお店はあり、そちらの方が味もよく、店構えもおしゃれなのに、どうしてその食堂に行くのか尋ねると「悪くはないし、昔から通っているから……」といった答えが返ってきたりします。
現在の議会だよりのつくりについても、同じようなことがいえるかもしれません。しかも、形の上では議会側(議員側)と住民側の需要と供給がマッチしているのですから、厄介です。「別にそのままでいいんじゃないの」ということになりがちです。しかし、あれだけの費用をかけて印刷・配布しているのです。議会改革の成果を住民に反映するためにも効果的なものとしなければなりません。
ちなみに、華ある委員長さんの議会のウェブサイトでは、議会に関する情報が、どの程度詳しく、どの程度のタイムラグ(時間のズレ)で紹介されているでしょうか。まず、それを確認しましょう。フェイスブックやブログなどでも議会の紹介をしているところもあるでしょうが、議会に関する情報は議会のウェブサイトを起点にして提供する時代になっています。「会議録は中央図書館の2階にあります」、「政務活動費関係書類は申請をした上で議会図書室の隣の閲覧室でご覧ください」なんていわれたら、ゲンナリすることでしょう。様々な情報提供ツールがあればあるほど、議会のウェブサイトの重さが増し、それを中心にして、リンクを考えていかなければならないのです。「議会情報のワンストップサービス」とでもいえば分かりやすいでしょうか。議会のウェブサイトから議会だよりが読めるようになっているのはそのためですし、反対に、議会だよりにQRコードが付けられているのもそのためです。
「いっそのこと、大きなコストのかかる紙の議会だよりは廃止してもいいかも……」。そう思ったかもしれません。しかし、それも違います。令和の時代にも議会だよりが果たすべき役割があります。一つは、高齢者を中心にした情報弱者に議会情報を確実に届ける意味です。多くの自治体で、議会だよりはまだ各戸配布されていることでしょう。それも最低限の議会の情報をすべての住民に届けるという役割からなのです。さらに紙媒体特有の役割もあります。議会の活動のインデックスとしての機能です。もちろん、会議録や審議資料などは議会図書室や中央図書館に保存されているはずです。そうであっても、過去に行政のどんなことが問題となり、議会がどんな議論をし、どんな意思決定をしたのかを探るのは骨が折れます。議会は議事機関です。議決責任がいわれるのも、自治体の意思決定機関だからです。のちのち市民があのとき、どんな議論があって、どんな決定をしたのかをたどれるようにすることはとても重要です。文書管理はまだまだ発展途上の自治体が多いですし、ウェブサイトなどは次々に更新されていくものです。だからこそ、変わらない紙媒体としての議会だよりが、これからの時代もインデックスとしての機能を果たしていくと考えられます。
提言
インデックス機能を重視すると、議会だよりでの掲載事項や掲載順位のメリハリが見えてくるはずです。一般質問の記事をなくすことはできませんが、写真の掲載をやめ、質問の項目を書き出し、QRコードでリンクでもして、残りは議会のウェブサイトでじっくりと読んでもらうということも選択肢としてあることでしょう(2)。
いずれにしても、広報広聴委員会で誰に向けて、どんなことを中心に発信していくのか、時代の変化や議会だよりの役割を見つめ直して編集方針を議論することです。編集方針を決めることは議会だよりの改革に欠かせません。その結果として、一般質問の扱いは決まってくるといえるのではないでしょうか。
(1) アンケート結果は、それぞれの議会のウェブサイトから見ることができます。
(2) 大津市議会議会局の清水克士次長には今回の記事を書くに当たって様々なご教示をいただきました。誌面を借りて御礼申し上げます。なお、清水氏は「一方で適正な事務執行の観点からは、公費の二重支出と言われかねない側面も看過できない。議会費で発行される『議会だより』のほかに、政務活動費で発行される会派広報誌においても、一般質問等における質疑応答が中心となっていることが多い」(自治日報2019年3月22日)との指摘もされています。