2019.11.25 議員提案条例
第2回 議員提案条例を活用しよう!─行政監視型条例の意義と活用─
2 住民からみた二元代表制のメリット
住民からみた二元代表制のメリットとしては、議会の三つの機能、「意思決定機能」、「行政監視機能」、「政策立案機能」とパラレルに、①首長の独断専行の抑制、②議会による行政監視、③多様な政策の選択肢の提示の三つが考えられる。
①は議会が自治体の重要な意思決定機能を有することにより首長の暴走を抑止することである。②は議会が首長から独立して行政監視機能を発揮することにより良質な公共サービスを効率的に提供できるのである。③は議会が首長と別の立場で政策を住民に対して提示することにより住民にとって政策の選択肢が増えて、首長と議会が補完的に政策を立案することにより住民の満足度の向上につながる。
しかし、地方議会のオール与党化の中で、これらのメリットも失われることが懸念される。政治的立場はともかく、今一度、二元代表制の制度的な意義に沿った取組みを進めていくことが求められる。
3 行政監視型条例とは─地方議会特有の立法─
上記の「二元代表制」のメリットのうち、③の住民に政策の選択肢を増やすことにつながる議員提案条例には、内容的に、①議会内部のルールを定めたもの(委員会条例、議員定数条例、議員報酬条例など)、②首長と議会との関係のルールを定める条例(総合計画等を議決事項とする条例、出資法人運営適正化条例など)、③住民と自治体との関係のルールを定める条例(自治基本条例や議会基本条例など)、④特定の行政分野に関する条例(理念的や規制的な内容の条例など)の四つの類型の条例がある(2)。
この中で、②首長と議会との関係のルールを定める条例は、従来は首長の裁量で実施されていた政策に関して、議会が一定の場合に議決や報告を求めるなど、議会が関与をすることにより、首長と議会の緊張関係を現出させ、議会のチェック機能を高めたり、政策決定の透明性を高める作用がある。このように首長と議会の関係を規定する議員提案条例のうち、特に行政監視機能を有する条例を、ここでは「行政監視型条例」ということにする。これは二元代表制の地方議会に特有な立法行為である。
すなわち、議院内閣制の国会では、行政を担う内閣は与党議員によってつくられるため、与党が多数派を占めると国会で内閣を厳格にチェックすることはおのずと限界がある。もちろん、国会にも一定の行政監視の仕組みはあるものの、「政府与党」という言葉が象徴するように、内閣に対して与党が完全に客観的な立場での行政監視が全うできているかは疑問が残る。
一方、地方議会では、行政監視型条例により、従来、首長の権限で決定されていた事項が、議会の議決事項や議会への報告事項となった場合、その内容が議会の議案として公開される。公表された事項について、議員が議会で質疑することにより、住民が自治体の政策決定プロセスを知ることができる。このような議会や住民に対して、行政を執行する首長は一層の説明責任を果たすことが求められ、結果として行政の透明性、説明責任の質が向上することとなる。
いわば、行政監視型条例は、議会や住民にとって、首長の有している様々な情報を公開の場に引き出し、議論することにより、自治体の政策形成に議会や住民が参画するためのツールであるということができる。
図1 議員提案条例の分類