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2019.11.11 コンプライアンス

第18回 災害時の活動と公職選挙法

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2 募金・援助等(Q1①②④⑦、Q2①~④⑥関係)
 公職者等や後援団体などによる寄附が禁止されているのは解説1で述べたとおりですが、具体例を見ながら改めて確認しましょう。
 また、寄附に当たらない形での援助についても考えてみます。

(1)公職者等による募金と寄附
 公職者等から選挙区又は選挙区域内の者に対する寄附が禁止されているのは、すでに述べたとおりです。
 したがって、自身が選挙区又は選挙区域内の被災者や会社、団体等に対して募金をすることはできません。会社や団体にあっては、本社や本部のみならず、支店や支所、事務所が選挙区又は選挙区域内にある場合も含まれているので、例えば日本赤十字社などは各市町村に地区・分区があるため寄附ができないことになります。
 また、よく勘違いをされており気をつけるべき点としては、自治体も選挙区又は選挙区域内の者に当たるということです。
 そのため、自らの歳費を返上することは、いくら善意によるものであっても、債務の免除すなわち寄附となるため許されません。これに対し、歳費を削減する条例が制定されれば、これに基づく歳費削減はそもそも債務の免除に当たらず寄附となりません。この方法によって事実上、歳費を返上するのと同じ結果となります。
 なお、第三者が公職者等の名前で寄附をすることも禁じられていますので(法199条の2第2項)、公職者等ができないから後援者が代わりにお金を出し、公職者等の名前を使って寄附するということもできません。
 寄附の禁止は公職者等の関連会社についても及んでいます。
 解説のとおり、公職者等が役職員又は構成員を務める団体(法199条の3)が公職者等の氏名が表示され又はその氏名が類推されるような方法で寄附することは認められません。例えば、「●●株式会社代表取締役A」といった名義や「△△会(××市選出県議会議員ほか○名)」といった記載で寄附をするような場合です。公職者等が社長・理事長や役員となっている会社・団体が典型ですが、「職員」、「構成員」も入っており、単なるヒラ職員や一般メンバーの場合にも適用されますのでご注意ください。
 さらに、後援団体の行う寄附についても規制されています。
 解説で述べたとおり、後援団体からの寄附は禁止されていますが、後援団体内部での関係にも適用されます。したがって、後援団体内部で構成員に金銭を交付することも寄附となります。
 この点、後援団体においては寄附ができる例外が定められ、設立目的に従った事業に関する寄附が認められているものの(法199条の5第1項ただし書)、その場合でも花輪、供花、香典、祝儀その他これらに類するものとしてされるものは認められていません。後援団体によっては、会員相互の扶助や懇親なども目的とされていることもあると思いますが、たとえ後援団体の規約で、「被災時には決議をもって見舞金を支給する」と定めてあったとしても、法の規制が優先され違法です。規約に従って支払っただけだという抗弁はできません。

(2)情報の提供や無形の援助、間接的援助
ア 無形の援助
 実際に金銭や物品を提供しない形での援助も考えられます。
 例えば、被災者に向けた有益な情報の提供や「がんばろう日本」に表されるような被災地への応援を掲示するなどの方法です。
 こうした無形の援助は、例えば提供される情報が特別の利益・価値を持つような場合(有料の記事を無料配信するような場合など)でない限り、財産上の利益を与えるものではなく寄附の禁止等の制限はないものと考えます。
イ 間接的援助
 「食べて応援」や「買って応援」などのように、被災地への直接的援助ではなく、被災地の産業や名産品などの消費・購入などにより間接的に援助するという方法もあります。
 これについては、「寄附の禁止」とパラレルに考えることができます。相当の対価を支払って購入し、又は特産物を消費することは、対価のない財産上の利益を与えるものではありません。反対に、対価性がない場合には寄附に該当する可能性が出てきます。

(3)設問の検討
Q1① 歳費の一部返上
 県議会議員Aが歳費を受け取るX県は、Aの選挙区内の者に当たるため、寄附はできません。
 そして、歳費の返上は、X県に対する歳費の請求権の一部免除又は返上部分の金銭の交付となるため、寄附となり、法199条の2第1項により禁止されます。
Q1② 関連会社等による寄附
 自身が代表を務める会社は、公職者等が役職員又は構成員となっている会社です。当該会社は、自身の選挙区内に事務所等がある団体に対しAの氏名を表示又は類推される方法で寄附をすることはできません(法199条の3)。
 したがって、Aの氏名を表示して会社から寄附を行うこと(なお、Aの氏名が会社名となっている場合には会社名自体でAの氏名が表示されていることになります)は認められません。
 一方で、Aの氏名を表示せず、類推される方法によるものでなければ寄附は可能です。
Q1④ 募金について
 公職者等の街頭募金活動への参加自体については、先に述べたとおり問題はないものと考えられます。
 集まった募金を届ける場合ですが、X県は選挙区内の者に当たるため寄附の禁止について検討が必要です。
 当該募金をA自身の名義で届ける場合は、もちろん寄附(法199条の2)となります。市民の有志からの募金を預かったとしてAがX県に届ける場合は、外形上Aの寄附と区別することは困難で、法199条の2第1項が公職者等の寄附を名義のいかんを問わず禁止していることとの関係で、Aからの寄附とされる可能性があります。
 また、募金活動をAの所属する関係団体が行って、Aの氏名を表示したりAの氏名が類推されるような方法で届けることも同様です。
 結局、Aが街頭募金活動を手伝った場合、集まった募金についてはA自身が届けることは困難であり、寄附と判断されるリスクが高いと考えられます。Aとしては、街頭募金活動を手伝ったとしても、集まった募金については関与しないのが一番といえます。
 なお、街頭募金活動に際してAが自らも募金すると、当該募金が寄附となることは当然です。
Q1⑦ 見舞金の問題
 後援団体が支給する見舞金は団体内部での関係ですが、これも寄附の禁止の問題となります。そして、後援団体において規約で見舞金の支給を定めておいたとしても、法199条の5第1項の 「花輪、供花、香典、祝儀その他これらに類するものとしてされるもの」に該当し、認められません。
 なお、後援会の会員個人の有志(公職者等は除く。法199条の2)が募金を募って他の会員に見舞金を出すことは、当該有志個々人の行動であり、本件に当てはまりません。
Q2① 間接的支援(1)
 政治資金パーティーは「対価を徴収して行われる催物」(政治資金規正法8条の2)をいいます。通常、後援団体等により主催されます。
 対価の徴収が要件ですので、対価を受けずに酒食等を提供することは単なる寄附(法199条の5)ですし、対価が設定されていたとしても赤字となるような低廉な金額であれば対価性を欠き、不足分は参加者全体に対する寄附といわざるをえません。
 これに対し、パーティーの経費に見合った正当な対価の支払を受けていれば、その催しにおいて被災地の特産品等を提供しても何ら寄附となるものではありません。
 ちなみに、パーティー全体では見合った対価を受けていても、個別の参加者について無料招待等を行っていれば、その限りにおいて寄附の問題が生じます。
Q2② 間接的支援(2)
 災害の影響で出荷できないだけで一定の価値がある商品をその価値に見合った金額で買い取るのであれば問題ありませんが、相場に見合わない高値での買取りや廃棄予定で売却の見込みがない無価値の商品を買い取ったような場合、金額によっては寄附に該当する可能性があります。
Q2③ 無形の援助
 被災地や被災者を応援する目的で名刺の裏面に広告を掲載したとしても、直ちに寄附とはなりません。ただし、従前から名刺広告として広告料をとっているにもかかわらず、被災地の方について特別に割引料金を設定したり、料金を請求せず無料で掲載したような場合は、差額について寄附となるおそれがあります。
 また、名刺を通常の名刺の使い方とは異なり大量・反復して配布するなど態様によっては掲載した広告主に対する寄附となる可能性がありますし、配布したBについて禁止される事前運動(法129条)と判断されるおそれもあります。
Q2④ 間接的支援(3)
 相当の対価を支払ってY市の事業者から商品を購入することは、単なる売買であって寄附には当たりません。また、他市への出張の際に手土産として訪問先に提供しても、当該相手方が選挙区又は選挙区域内の者である場合を除き、寄附とはならず問題ありません。むしろ、被災地支援としても有効な活動といえます。
Q2⑥ 情報の提供
 災害情報や物資の配給情報などは被災者や関係者にとって貴重な情報ですが、情報自体は、特段の事情がない限り基本的には財産的価値を有さないものと考えられます。特段の事情としてありうるのは、有料で提供している情報(例えば、有料配信のインターネット記事等)を無料で公開するなどした場合は、対価分の利益を相手方に与えたものとして寄附が問題となる可能性があります。
 したがって、適法に入手した情報を市民向けに発信しても、「寄附」とはならず問題ありません。ただし、著作権や肖像権等には注意しましょう。

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