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2019.11.11 コンプライアンス

第18回 災害時の活動と公職選挙法

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解説2 具体的検討
 解説1で述べたことを踏まえ、災害時に想定される活動を想定しつつ、私見を交えながら具体的に考えてみたいと思います。

1 公職者等によるボランティア(Q1③~⑤関係)
 昨今はボランティア活動が盛んになり、災害が起こった場合も迅速に多方面で活動が展開されています。奉仕・共助の精神からも大変すばらしいことですが、公選法との関係ではどうでしょうか。

(1)公職者等が行うボランティア活動は「寄附」に当たるか
 ボランティア活動は基本的に無償又は低廉な対価で行われるものです。
 そうすると、ボランティアを受けた者にとっては、無償や相応の対価なく労務の提供を受けたことになって、公選法上の「寄附」になるとも思えます。
 しかし、後片付けの手伝いや救援物資の仕分け等、一個人が行う通常のボランティア活動では、特段の事情がない限り特定の者に対する財産上の利益があるとは言い難く、公選法上の「寄附」には当たらないものと考えます。
 これに対して、自らの経営する会社の従業員や重機を多数動員して作業を行ったり、歌手活動をしていた公職者等がチャリティコンサートを開催するような場合は、一個人が行う通常のボランティアの範囲を超えており、「特段の事情」があるとして「寄附」に該当しうると考えます。
 被災者に対し、事務所に備蓄してある非常食などを提供することはどうでしょうか。これについては、ボランティアとはいえ物品の提供の面も強く、寄附に当たるのではないかと考えます。微妙な線引きではありますが、違法となる可能性は否定できないと考えます。

(2)ボランティアへの対応
 ボランティアの方々へ公職者等から食事や休憩場所として事務所の一角を提供するなどの対応をすることはどうでしょうか。
 まず、ボランティアへの食事の提供は、上記の被災者への非常食提供と同様、純粋なボランティアとは評価できず、寄附に当たると考えます。
 事務所の一角を休憩場所として提供することは、ボランティアに対して特段の財産上の利益を与えるものではないといえますので、寄附には当たらないと考えます。ただし、電話等の設備利用も認めるとかボランティア事務所として提供するなど、態様によっては場所の利用利益を提供したと評価され、寄附に該当する場合も考えられます。

(3)設問の検討
Q1③ 地元支援者宅等での片付けや清掃の手伝い
 上記のとおり、一個人の通常のボランティア活動として行われるものであり、財産的価値がある特段の事情もないため、寄附には当たらないと考えられます。
 これに対し、被災した住宅の解体工事を無償で請け負うような場合は相当な費用の支払を免除するものであり、特段の事情が認められ寄附になります。

Q1④ 街頭募金活動への参加
 公職者等が街頭募金活動に参加し、募金箱を持って募金を呼びかけることは、特段の財産的価値を有するものとは考えられませんので問題ありません。ただし、後述のとおり集まった募金をどうするかという点で問題となる可能性があります。

Q1⑤ 支援者等へのボランティア参加の呼びかけ
 ボランティアを呼びかけること自体は、何ら財産上の利益を与えるものではありませんので問題はなく、その後の支援者等のボランティア活動は個々人の活動ですので公職者等の寄附の問題でもありません。
 もっとも、ボランティアの呼びかけに伴い、何らかの利益の供与(例えば、手伝ってくれたお礼に夕食をごちそうするなど)があれば、それ自体について寄附の問題が生じることは別論です。
 また、公職者等が代表を務める会社の従業員に呼びかけてボランティア活動を手伝わせること自体も、寄附には当たらないと考えられます。ただし、欠勤した期間について給与を保障し又は支払うことは、当該従業員が有給休暇を取得している等給与を支払うものとされている場合を除き、財産上の利益を供与したものとして法199条の3の寄附に該当します。

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