2019.11.11 コンプライアンス
第18回 災害時の活動と公職選挙法
解説
解説1 災害時の援助と法的な問題
1 寄附
2 情報の収集と発信
解説2 災害時の援助と法的な問題
1 公職者等によるボランティア(Q1③~⑤関係)
2 募金・援助等(Q1①②④⑦、Q2①~④⑥関係)
3 その他災害復興に向けた政治活動(Q1⑥、Q2⑤⑦関係)
解説1 災害時の援助と法的な問題
災害が発生した場合、地域を支え、地域を第一に考えておられる皆様としては、できることは何でもやろうという気概を持って対応されると思います。
そんな場合でも、公人として、また一般人としても一定の制約があります。以下、基本的なポイントを押さえてみましょう。
1 寄附
被災者に対し義援金や救援物資を送ったり、災害ボランティアとして復興に協力するなどの支援をすることが考えられます。
しかし、災害支援にあっては、対価がないか、あっても低廉なことが多く、これらは法が規制する「寄附」との関係で問題が生じます。
そこで、これまでの連載でも繰り返し検討してきた「寄附の禁止」について、災害支援との関係で整理してみましょう。
(1)「寄附」とは何か
公選法上、寄附とは「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のものをいう」(法179条2項)と定義されています。
そのため、お金を出すことのみならず、モノや財産上の利益を与えること、すなわち現物交付や債務の免除、労働力の提供なども含まれます。
さらには、実際に渡さない段階の単なる「約束」でも寄附に該当します。
(2)誰が規制対象か
ア 公職者等(法199条の2第1項)
これには、第三者が公職者等の名義を使って行うことも含まれます(法199条の2第2項)。
イ 公職者等に関連する会社・団体(法199条の3)
公職者等が役職員や構成員である会社・団体(法199条の3)については、公職者等の氏名や氏名が類推される方法での寄附が禁止されます。政治家であれば種々の団体等に理事などの役員として参画されていることも多いため要注意です。
ウ 後援団体(法199条の5第1項)
「後援団体」とは、政党・後援会などの団体やその支部であって、公職者等の政治上の主義・施策を支持、又は特定の公職者等を推薦・支持することがその政治活動のうち主たるものをいいます(199条の5第1項)。ここには一般の政党は含まれないと解されています。
(3)禁止される寄附は
選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)内にある者(法199条の2第1項、199条の3、199条の4、199条の5第1項)に対する寄附です。
ここにいう「者」は有権者のみならず未成年者などの選挙権を有しない者や、法人のほか、法人格のない団体(地方公共団体を含む)なども含まれます。
寄附の際に選挙区・選挙区域内にいれば足り、住所があることは必要ありません。例えば、たまたま日帰り旅行で選挙区内を訪れていた子どもに対し物をあげたりすると、公選法に抵触する可能性があるのです。
なお、公職者等が役職員や構成員である会社・団体の場合は、公職者等の氏名が表示又は氏名が類推される方法での寄附が対象です。
また、政党その他の政治団体やその支部に対する寄附は禁止から除かれています(法199条の2第1項ただし書、法199条の3ただし書)が、災害時の寄附として特定の政治団体に寄附する状況は想定しにくいかと思います。
(4)後援団体と見舞金
後援会などの後援団体においては、公職者等を支持・支援するほかに会員の懇親なども目的とされていることが多いと思われます。
しかし、公選法は、後援団体の設立目的に従った事業に関する寄附であっても、花輪、供花、香典、祝儀その他これらに類するものとしてされるものについて認めていません(法199条の5第1項)。後述のとおり、災害見舞金も「その他これらに類するもの」となるため、結局、後援会として支払うことはできません。