2019.11.11 条例
自治体議会のための条例立法の基礎(2)
6 条例の組立て
条例は、総則規定、実体規定、雑則規定、罰則規定、附則規定の順序に組み立てられるのが通常である。
(1)総則規定
総則規定は、条例全体に共通する事項を定める規定であり、目的規定、定義規定などがある。
ア 目的規定
条例は、社会公共の課題解決のための手段であるから、その課題解決という目的が必ずある。その目的を規定するのが目的規定である。その目的は、条例の必要性を支える社会的・経済的・文化的・科学的な事実である「立法事実」と表裏一体の関係にあるものである。
目的規定は、以下のようなパターンで規定されるのが一般的である。
「……定めることにより、○○し、もって△△を目的とする。」 ↑ ↑ ↑ 規定事項 直接的目的 最終的目的 |
目的規定は、条例中の他の条項の解釈・運用の指針となる重要な規定である。
イ 定義規定
その条例の中で使う用語のうち、①一般的な意味とやや異なる意味で使う用語、②意味に幅のあるものの中から特定した意味で使う用語、について意味を明確にするために定義をするのが定義規定である。
例えば、いわゆるごみ屋敷条例である「京都市不良な生活環境を解消するための支援及び措置に関する条例」と「大阪市住居における物品等の堆積による不良な状態の適正化に関する条例」は、それぞれ以下のような定義規定を置いている。
〈京都市不良な生活環境を解消するための支援及び措置に関する条例〉
(定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定める ところによる。 (1) 略 (2) 不良な生活環境 建築物等における物の堆積又は放置、多数の動物の飼育、これ らへの給餌又は給水、雑草の繁茂等により、当該建築物等における生活環境又は その周囲の生活環境が衛生上、防災上又は防犯上支障が生じる程度に不良な状態 をいう。 (3)~(4) 略 |
〈大阪市住居における物品等の堆積による不良な状態の適正化に関する条例〉
(定義) 第2条 この条例において「不良な状態」とは、物品等の堆積によりごきぶり、はえその 他の害虫、ねずみ若しくは悪臭が発生すること又は火災発生のおそれがあること等の ため、当該物品等が堆積している場所の周辺の生活環境が著しく損なわれている状態 をいう。 2~4 略 |
京都市条例の「不良な生活環境」と大阪市条例の「不良な状態」とでは、定義の内容が異なっている。京都市条例の方は、当該建築物等の周囲(周辺)だけでなく、当該建築物等「における」状態を含めている。京都市条例は、その周囲に影響が及んでいる場合だけでなく、当該建築物等が「不良な生活環境」であれば、その原因者である住民を、その生活環境を解消するための福祉的支援の対象者として支援することとし、このことを条例の目的や条例で定める行政手法に掲げている。このように、定義規定の内容は、条例の目的や条例で定める行政手法に応じて、異なってくるのである。
なお、総則規定の中の定義規定という形ではなく、個々の条文中で、その用語の次に「(○○をいう。以下同じ。)」という形で定義をする場合もある。これも定義規定である。