2019.11.11 予算・決算
第5回 予算の修正案
議会事務局実務研究会 野村憲一
予算の修正権
前回は長と議会の政策がせめぎ合う場面として、条例の修正案の話をしました。今回は長が提出する議案のもう一つの柱、予算の修正についてです。
地方自治法(以下「法」といいます)は、予算は長が調製・提出するとしており(法149条2号、211条、218 条1項・2項)、他方、議会側(議員、委員会)から予算案を提出することはできません(法112条1項ただし書、109条6項ただし書)。しかし、予算を定める権限は議会にありますから(法96条1項2号)、予算審議の過程でこれを修正することができます(法97条2項)。
法97条2項は「議会は、予算について、増額してこれを議決することを妨げない」としつつ、ただし書で「長の予算の提出の権限を侵すことはできない」と定めています。つまり、議会による予算の増額修正は、長の予算提出権を侵害しない範囲で認められます(減額修正は当然に認められるとされています)。
議会が議決する「予算」とは
まずは、予算と議会の議決との関係についておさらいをしておきましょう。 予算は、歳入歳出予算をはじめ計7項目からなり(法215条)、総務省令が定める予算の調製の様式(法施行規則14条)には、法215条所定の7項目に対応する1条から7条までの条文と、歳入歳出予算から地方債までの五つの表が書かれています。各自治体はこの様式を基準として予算を調製します。
予算と聞くと、あの分厚い予算書と、歳入歳出予算にある「款・項・目・節」の区分を思い浮かべると思いますが、先ほどの予算の調製に当たるのは、あの分厚い予算書の最初の数頁で、その後には歳入歳出予算事項別明細書などの「予算に関する説明書」(法211条2項)が続きます。歳入歳出予算に「款・項・目・節」の区分があるのはこの明細書の方で、予算の調製の表には「款・項」の区分でそれぞれの金額が記載されています。
議会が議決する「予算」とは、この調製の様式のことをいいます。つまり、議決の対象となるのは「款・項」(議決科目といいます)までで、その下に続く「目」以下(執行科目といいます)は、項の内容を説明するために示されているというわけです。したがって、議会による予算の修正は、原案の「款・項」のレベルで変更を加えることを指します。「目」以下の修正は本来議決対象ではなく、仮に議決したとしても長の予算の執行を法的に拘束するものではありません。このため、同じ項内での費用の増減など款・項の金額が変わらない場合は、修正案として提出できないことになります。