2019.10.25 議員提案条例
第1回 議員提案条例は新たなステージへ
関東学院大学法学部地域創生学科教授 津軽石昭彦
1 分権改革から20年を前に
我が国の明治以降の政治・行政の中で、明治維新、戦後改革に次ぐ「第三の改革」といわれた地方分権改革(以下「分権改革」という)による具体的な制度改正として475本の法改正等が行われた、いわゆる地方分権一括法(1)が施行されてから来年で20年の節目の年を迎えようとしている。
分権改革に関しては、今なお、様々な改革が進められているところであるが、中央政府(国)と地方政府(自治体)の制度的な位置関係を大きく変えたのが、第1次分権改革で行われた「機関委任事務の廃止」であろう。
そもそも、我が国の地方制度は、明治維新以来、中央集権的であり、その基本構造は戦後も残り続け、機関委任事務が存在していた時代には、機関委任事務に関し、自治体の首長は、国の各大臣の下部機関として位置付けられ、国の統治機構の一部に組み入れられていた。機関委任事務は、都道府県で自治体事務全体の8割にも達していたとされる。
機関委任事務に関する議会の関与も限定的であり、機関委任事務に関しては、国の下部機関である首長の事務であり、当該自治体固有の事務ではないと解されることから、条例を制定することもできず、また、地方自治法第100条に基づく、いわゆる100条調査権の対象外とされるなど、議会の権限が及ばないものもあった。