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2019.10.10 条例

自治体議会のための条例立法の基礎(1)

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3 条例立法権の根源的な根拠はどこにあるのか

(1)地方自治の保障そのものに内在している
 国家の統治機構の形を定める日本国憲法は、国の立法権と行政権を4章「国会」と5章「内閣」に配置し、これらと並列する形で「地方自治」を8章に配置して、地方自治を保障している。その8章の総則規定である92条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」と規定しているが、この規定は、「地方自治の本旨」という憲法規範が、国の法律に制約を課すことによって、地方自治を保障しているというふうに読むことができる。すなわち、この保障された地方自治そのものに、自治体の権能、つまり条例立法権が内在しているのであって、条例立法権の根源的な根拠は、この「地方自治の本旨」の憲法規範にあるといわなければならない。
 この「地方自治の本旨」は、「住民自治」と「団体自治」を意味するとされているが、基本的人権の保障を基本的原理とする日本国憲法のもとにあっては、「住民の基本的人権をより良く保障すること」も含んでいると考えられ、条例立法権はそのためにあると考えることができる。

(2)日本国憲法94条との関係
 日本国憲法94条の「法律の範囲内で条例を制定することができる」とする規定が、条例立法権の根拠規定であるとする考え方もあるが、同条の規定は、国家の中で並存する法律と条例との間に矛盾や抵触があってはならないから、条例は「法律の範囲内」でなければならないとして、両者の間の調整を図るための規定であるとみることができる。この「法律」が「地方自治の本旨」に反しないものでなければならないことが、地方自治の保障の意味するところである。

(3)地方自治法14条の意味
 地方自治法14条1項は、自治体は「法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる」と規定していて、条例立法権の根拠であるようにみえる。
 しかし、この規定は、府県制・市制・町村制を引き継いだ形で地方自治法が制定された際に、もともとは条例制定権の根拠として規定されていたものが整備されて規定し直されたものである。条例立法権が憲法に規定された日本国憲法下にあっては、条例制定権の根拠としての意義を失ったものと理解されなければならない。
 2条2項の事務とは、2000年地方分権改革によって、法律又はこれに基づく政令により自治体が処理することとなる事務を含め、すべての「自治体の事務」をいうこととなっている。
 なお、地方自治法14条2項が「義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない」としているのは、いわゆる侵害留保の原則を定めたものであるが、侵害留保の原則というのは、絶対主義の君主主権のもとであっても、国民の権利を侵害(規制)する場合には、せめても、国民代表議会の同意が必要であるとする原則であった。この規定も、市制・町村制を引き継いだものであり、基本的人権の保障を国家存立の目的とする、国民主権の憲法のもとでも同じであるというわけにはいかない。侵害留保の原則は、最低限の要請にすぎず、住民の人権・生活を保障する給付行政についても条例で定めるのが本筋であると考えるのが正論である。

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