2019.08.27 選挙
町議会議員選挙において当選人の不足があった場合には再選挙はいつ行われるのか/実務と理論
生田優人 総務省消防庁総務課
1 はじめに
近時、議員のなり手不足が指摘されている。平成30年11月には群馬県昭和村議会議員の選挙において当選人の不足による再選挙が行われた。平成31年4月に行われた統一地方選挙では、再選挙には至っていないものの、8町村の議会議員の選挙において当選人が不足し、定員割れとなったところである。
そこで本問では、地方公共団体の議会の議員の選挙における再選挙事由等の規定を改めて確認するとともに、町議会議員選挙において当選人の不足があった場合、どのような期日に再選挙が行われるかを検討する。
なお、文中意見にわたる部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りしておく。
2 公職選挙法における再選挙事由
公職選挙法(昭和25年法律100号。以下「法」という)は、109条及び110条において、各選挙につき当選人が得られなかったり、不足したりした場合などの再選挙事由を定
めており、各選挙において当選人の不足があった場合の再選挙の有無については、これらの規定に従うこととなる。
地方公共団体の議会の議員の再選挙に関しては法110条において規定されており、法109条に列挙されている事由が発生した場合において、当選人の不足数が一定数に達したときには再選挙を行わなければならない旨が定められている。
具体的には、市町村議会の議員の場合には、選挙区がない場合は当選人の不足が議員定数の6分の1を超えるとき、選挙区がある場合は当選人の不足が当該選挙区の
議員定数の6分の1を超えるときに、再選挙を行わなければならないこととされている(法110条1項4号)。ただし、再選挙を行うに先立ち当選人の更正決定(法96条)、
繰上補充(法97条)により当選人を定めうる場合にはこれをなすべきこと、争訟係属中は再選挙を行うことができないこと(法34条3項)等に留意が必要である。
他方で、当選人の不足が法定数を超えない場合であっても、選挙争訟の結果、当該選挙の全部又は一部無効の結果として当選人が不足するときには、再選挙を行わなければならないこととされている(法110条3項)。また、当選人の不足が法定数を超えない場合であっても、同一地方公共団体の他の選挙が、当該選挙区(選挙区がないときはその区域)で行われるときは、当該他の選挙に便乗させて同時に再選挙を行わなければならないこととされている(法110条4項2号)。ただし、再選挙事由が、当該他の選挙の期日の告示の日前10日以内に生じたものであるときは、再選挙を行わない。なお、便乗選挙は、あくまで同一の地方公共団体の他の選挙が行われる際に実施されるものであることから、県議会議員や知事の選挙に便乗して市町村議会議員の再選挙を行うことはできない。
なお、地方公共団体の議会の議員の再選挙(選挙の一部無効の結果行われる再選挙を除く)を行う事由が生じた場合に議員又は当選人がすべてないときは、法116条の規定により一般選挙を行うこととなる。
3 再選挙の期日
市町村議会の議員選挙における再選挙は、これを行うべき事由が生じた日から50日以内に行わなければならないこととされている(法34条1項)。ただし、異議の申出期間、異議の申出に対する決定若しくは審査の申立てに対する裁決が確定しない間又は争訟係属等期間は、再選挙を行うことができず、これらの期間の経過、異議の申出に対する決定又は審査の申立てに対する裁決の確定等のうち、最も遅い事由が生じた日から50日以内に再選挙を行うこととされている(法34条3項及び4項)。
また、他の選挙に便乗させて再選挙を行う場合は、当該他の選挙と同じ期日に行うこととされている。