有権者はどう見ていたのか
青木 ここで、LM連盟のインターネット調査の結果を紹介したいと思います。調査の目的ですが、政策ビラ解禁の影響と課題や政策型選挙を実現する方策を、有権者目線で調べたいと考えて実施しました。項目としては、①選挙の際に何を判断材料にして投票しているか、②「候補者の情報不足」は解消に向かったか、③有権者が求める選挙の情報とは、の大きく3つです(図1)。
全国の都道府県、政令指定都市、市部で投票した有権者1,487人を対象に、2019年6月7日~6月9日実施しました(有効回答数1,097)。
図1 インターネット調査の目的
まず、「統一選から政策ビラ解禁されたことを知っていましたか」という問いに対して、「知っていた」と回答した人は3割と、ほとんど知られていませんでした。
また、選挙期間中、「どんなツールを見聞きして、参考になったか」という設問に対しては、選挙公報は約80%の方が役に立ったと回答しました。ちなみに、統一選前の調査での同じ設問に対する回答としては、そこでも「選挙公報が1番見聞きされていて有効」、一方で、「選挙ポスターは見聞きしたけれど有効でない」などの回答があったところです。
今回、政策ビラは、ここなんですね(図2)。「まあまあ見聞きされて、まあまあ参考にされた」ツールといえます。だから、届いた人には届いたとは言えます。しかし、公選法改正の際に議論されていたような候補者の情報不足の解消については、道半ばです。もっと「役にたった」というところまでいかないと、いけなかったのではないかと思います。
図2 議会選で見聞きしたツール×有効だった割合
佐藤 配布できる政策ビラの数は4,000枚です。全員に届けられる選挙公報とは、母数が違いすぎて、有効性の単純な比較は無理だと思います。
青木 実際に政策ビラを見たっていう人は20%です。1000人に調査して200人。その方たちに、政策ビラの内容について、「何を見たか、何が役立ったか」を聞くと、「政策」「実績」となっています。「経歴」「思い」についてはあまり見てないけど、「役に立っている」、という結果です。もしかしたら、このあたり(政策・実績・経歴・思い)の情報をビラ上で伝えていくと、政策ビラが役に立ったと感じる人が増えていくかもしれません。
ただ、このアンケート回答者は政策ビラと認識していても実際のところ「事前ビラ」と混同している可能性もありますね。
実際見聞きした人が、「何枚手に入ったか」というと、「1枚」というひとが16%、「2、3枚」という人が6割くらい、「4、5枚」12%くらいです。どこで入手したかというと…
図3 選挙ビラの入手場所
全員 (覗き込んで)これでは違反になります…
青木 有権者は、選挙ビラと事前ビラを混同しているのかもしれません。
また、「政策ビラが解禁されて、どう思う」?ということについての調査では、一番多かったのは、「個別入手でなく、選管等でまとめて入手したい」というのが6割くらいありました。あとは「個々の候補者の政策がわかりやすかった」というのが4割、他には「町村議選でもほしい」という感じですね。
川名 政策ビラを入手できた有権者にとっては多少役に立ったってことですね。
黒川 有権者にもっと政策ビラが届くようにするためには、一律4,000枚とか8,000枚とかでなく、人口の何%の枚数などと、設定すべきかもしれません。
有権者にもっと政策ビラを届けよう、と語る黒川氏
田中 枚数についての議論は、時間がかかるような気がします。ただ、選挙管理委員会でとりまとめてインターネット上に掲載してはというアイデアについては、法の建て付けさえきちんとできれば実現可能性は高いように思います。現状よりは届けられる有権者が多くなるのではないでしょうか。