2019.03.15 コンプライアンス
第14回 選挙告示直前! 注意点のおさらい(3)
4 文書図画の頒布・掲示制限(法142条以下)
(1)選挙運動期間に法定の種類・場所(方法)によってのみ頒布・掲示できる
これまでの連載で何度か解説してきたとおり、選挙運動用の文書図画については、頒布・掲示できる種類と場所(方法)に制限がありますが、これら文書図画自体が選挙運動のための機能を有するため、そもそも選挙運動期間外に頒布・掲示することはできません。選挙運動期間外に頒布・掲示すれば事前運動(法129条)と重複して違反となる場合があります。しかも、文書図画という証拠が残りやすい特徴もあります。
したがって、文書図画の頒布・掲示制限については、よく理解しておく必要があります。
(2)選挙運動のために使用する文書図画とは
頒布(法142条)、掲示(法143条)とも、規制対象は「選挙運動のために使用する文書図画」です。この意味につき、法142条(頒布)に関連して過去の裁判例では「文書の外形内容自体からみて選挙運動のために使用すると推知されるものを指称するのであるが、それは、当該文書の外形又は内容に何らかの意味で選挙運動の趣旨が表示されていて、見る者が頒布の時期、場所等の諸般の状況から推して特定の選挙における特定の候補者のための選挙運動文書であることをたやすく了解し得るものであれば足りると解するのが相当であり、所論のように、当該文書の外形内容自体に特定の選挙における特定の候補者の当選を目的とする趣旨が逐一具体的に明示されていなければならないとまで厳格に解するのは相当でない」(高松高裁昭和45年12月18日判決・高裁刑集23巻4号861頁・判タ263号275頁。下線筆者)とされています。
要するに、文書上に選挙運動の趣旨が示されていれば、それが詳細かつ明確に書かれていなくとも、その文書の記載や配られた時期、場所などの諸般の事情から、受け手が「あぁ、△△先生の○○選挙のための文書だな」と受け止めれば、「選挙運動のための文書」となると広く解釈しているのです。
(3)政党ポスターの制限
選挙告示前になると、政党の演説会告知の政党ポスター(いわゆる「2連、3連ポスター」)がたくさん貼られている光景をよく見かけるようになります。
選挙告示前の一定期間(後述)は、当該選挙の候補(予定)者等の氏名や氏名類推事項を記載したポスターは掲示できなくなります(法143条16項、19項)が、この演説会告知のポスターは政党その他の政治活動を行う団体の政治活動用ポスターであり、法143条の規制を受けません。そのため、法201条の14に基づき、立候補の日の前日まで掲示することができます。
なお、後援団体(法199条の5第1項)の政治活動用ポスターはここに含まれません。
この政党ポスターは、あくまで政党の政治活動として認められるものであり、候補(予定)者の名前や写真のみが大きく表示されていたり、当該候補(予定)者の政治活動のためにも使用されていると見られる場合や投票依頼の文言があるときなどは、法143条の制限に服することになります。また、事前運動にも該当することになります。
特に、演説会の告知であるはずが、相当先の開催であったり、そもそも「8月某日」や「市内各所」などと開催内容が曖昧に過ぎる場合などは演説会告知とはいえず、「弁士」の選挙運動目的と見なされやすくなります。
【文書図画の掲示における一定期間】(法143条19項)
・任期満了による選挙の場合は、任期満了日の6か月前の日から投票日までの期間。
・任期満了以外の理由による選挙の場合は、選挙を行うべき事由が生じたことを告示した日の翌日から投票日までの期間。
となっており、寄附の制限についての一定期間(法199条の5第4項、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律6条、7条)と少し異なりますので要注意です。
(4)告示前の文書図画の頒布・掲示制限のポイント
以上を踏まえて、告示前に頒布・掲示する文書図画についてのポイントを整理してみましょう。なお、事前運動のポイントも併せてご確認ください。