2019.03.14 コンプライアンス
第13回 選挙告示直前! 注意点のおさらい(2)
Answer
A1選挙運動を行うための役割分担を事前に決めておくことは、選挙運動の準備行為として許されています。もっとも、かかる準備の結果や今後の選挙運動等の活動予定を後援会報で広く後援会員に告知することは、その必要性に疑問があり、準備行為の範囲を超えて事前運動に該当する可能性が高いと考えられます。
A2選挙運動員になってもらうことの内交渉であり、典型的な準備行為として許されています。
A3選挙運動員になるように伝えることはQ2と同様、準備行為といえます。しかし、選挙運動中の給与の保証をしている点については、働いていない以上、本来給与がもらえないにもかかわらず選挙運動に従事している時間について給与を支払うことを意味し、また報酬の支払ができない選挙運動員に対して実質的な報酬を約束するものであり、買収申込罪又は買収約束罪(法221条1項1号)に該当します。
A4選挙運動員予定者に対し、選挙運動のための研修・打ち合わせを行うことは、円滑に選挙運動を開始するために必要な準備行為といえます。なお、この際に選挙運動員予定者に対し、投票依頼等をすることが許されないのはいうまでもありません。
A5選挙の告示前に選挙事務所の物件を探すことは、選挙運動の準備行為として認められています。ただし、物件探しの依頼にかこつけて投票を依頼すれば、それはもはや準備行為とはいえず事前運動となります。
A6選挙事務所の物件探しにおいて、優先的に紹介するように依頼することは、その態様が社会通念上正当な交渉といえる範囲であれば許されます。
社会通念上正当とはいえない場合としては、例えば、ライバル陣営がすでに物件の契約直前となっているところを無理矢理横取りすること、ライバル陣営から問い合わせがあった場合に虚偽の説明をするよう不動産業者に指示することなど、取引きを阻害したり取引行為として相当性を欠くようなものが挙げられます。このようなことがあった場合、ライバル陣営から民法上の不法行為責任(損害賠償)を追及されかねません。
なお、選挙区域内に居住する不動産業者に対して、設問のような物件の優先紹介やライバル陣営に紹介しないことに対して謝礼の支払を持ちかけたりした場合は、運動買収として買収罪(法221条1項1号)が成立する可能性があります。