いよいよ4月に迫る統一地方選挙。今回の選挙から解禁される、選挙期間中の政策ビラについてLM推進連盟の地方議員メンバーに、徹底的に議論をして頂きました。良い政策ビラとは何か?政策ビラの作成に悩む皆さま必見です。ぜひご覧ください!今回は下編をお届けします。
目次
(上編 2019/2/18公開)
1 政策ビラ解禁、各議会の反応は?
2 選ぶ・選ばれるチャネルが増える
3 公費負担条例の制定状況は?
4 「届け方」にもテクニックがある!?
(中編 2019/2/25公開)
5 政策ビラ、どう作る?
6 ここでおさらい、政策ビラ解禁の意義とは
7 政策(マニフェスト)の評価・検証という難題
8 議員にとっての政策(マニフェスト)の達成とは何か
(下編 2019/3/4公開)
9 政策ビラに必要な要素は?
10 新人議員と現職議員で政策ビラに盛り込む内容は変えるべき?
11 政策ビラと他のツールの連動も考えよう
12 選挙が変わる、政治が変わる、そのターニングポイントにしよう!
番外編 インフラとしての政策ビラ。その保存を考える。
9 政策ビラに必要な要素は?
青木 ここで話題を変えて、普段配ってらっしゃるチラシを見ながら、感想や工夫点、どういう思いを込めているかなどについてお聞きしていきたいと思います。
(写真)普段配っているチラシを持ってきてもらいました
川名 私は、普段配布するチラシと、選挙前に撒くチラシとは分けています。
普段配布するチラシはニュースがメインです。自分のことはほとんど書いていません。市民が知りたい、あるいは知っておくべき情報を載せて、そこに自分の主張を少し入れ込んで、余ったスペースに自分のプロフィールを入れる程度。これが普段のスタイルで、市民から一番反応がありますよ。
白井 政治には興味がなくても、最近うちのまちで何があったのかなという人には、受け取りやすかったり、読んでもらえたりするのかな。
川名 「自分が言いたいこと」なのか、「市民が読みたいことや読むべきもの」なのかで、チラシ作成の方向性が変わるんだと思いますね。
それからトップ画面(※チラシの表面)でほぼ印象決まります。そこがだめだと、中を読んでくれるところまでいきません。
青木 ファーストビューは大事ですよね!!
佐藤 デザインについて言えば、前回選挙の直前に配布したチラシは、デザイナーさんとかなり打合せして作成しました。狙いとしては、これまで自分を支援してくれた人たちに加えて、もっと幅広い層の有権者に見てほしい、気づいてほしいという想いで、こういうキャッチーな感じのデザインになりました。ポスターもこのデザインで統一しました。
内容については、「何をしてきたのか」、「何をするのか」ということを伝えないといけないと思っています。現職議員として活動してきたのに、政策ビラには「これをやります」しか書いていなかったら4年間何していたのって言われてしまいますよね。だからそこはちゃんと盛り込まないといけないと思っています。
(写真)「何をしてきたのか」、「何をするのか」ということを伝えないといけないと語る佐藤議員
田中 私は定例会後にチラシを配布していますが、これまではA4裏表で白黒で作っていました。だけど、「それじゃ誰もみない」という話になって、最近はA3サイズに大きくし、フルカラー、そして紙面上文字を少なくしました。
全員 ほんとだ!文字が少ない!
田中 少ないので、自分の言いたいことをあんまり言えてない部分はありますが…。けれど「これくらいじゃないとまず読もうという気にならないよ」という意見の方が多いので、シンプルにしちゃいました。デザイン面で言えば、イメージカラーがピンクなので、そこはチラシでも統一して使っています。
あと、私の自治体の方では、選挙期間前にはあまり何回もポスティングをしない地域なので、皆さんのお話をきいていると、地域性があるんだなと思いますね。
青木 事前に配布しているチラシと政策ビラに載せる内容は、そんなに変わらないとします。そうすると、A3からA4サイズにするということなので掲載できる内容は絞られますよね。
より絞るとしたらどこ?どんな内容を掲載する?といったことをお伺い出来ればと思います。
川名 「自分が市民に対して何を伝えたいか」っていうことが比重として大きくなると思います。でも人にもよるかもしれませんね。顔写真が大きいのか、政策が占める割合が大きいのかなど。
青木 皆さんは政策ビラにキャッチコピーは入れますか?実はマニフェスト研究所が2018年に実施した調査では、キャッチコピーは不要とする回答が多かったんです(図4参照)。
(図4) 政策ビラに必要/不要な項目
(出典 「統一選 政策ビラ解禁に向けた議会イメージ・政策型選挙調査」早稲田大学マニフェスト研究所)http://www.maniken.jp/pdf/180822seisaku_cihougikai_research.pdf
川名 キャッチコピーはないと読みづらいと思います。でも「きれいなまちをつくろう」「みどりをたいせつにしよう」みたいな内容のないコピーだと……。
白井 そうですね。おそらく現状のキャッチコピーのレベルが高いものが少ないから、有権者からはそんなコピーなら要らないって言われちゃうんだと思いますね。チラシのデザインや構成上、キャッチコピーは必須です。
青木 大まかな掴みがないとわかりづらい、ということですね。
白井 キャッチコピーは、ファーストインパクトでまず何を感じてほしいかというのを込める部分です。読み手も無意識に見ていると思いますよ。
次に政策ビラは、ものすごく簡単に言えば片面政策、片面実績を盛り込めばいいと思います。現職であれば、実績部分は「4年間の検証」になりますね。それが理想的だと思います。
青木 それはそうですね。先ほどの調査結果でも、政策ビラに必要項目の1位が政策、2位がビジョン、4位に活動の成果ですから、実感と合っていますね。ビラの構成上、掲載する順番はどうでしょうか。
白井 そこはそれぞれが工夫する部分ではないでしょうか。候補者がみんな同じ順番同じ内容を入れたら、同じものになってしまいます。
青木 候補者の差別化とは逆に、有権者の方はビラの体裁が一緒のほうが見やすいかもしれませんね。そういう想いもあり、マニフェストスイッチをやっています。
全員 確かに同じフォームの方が見やすいかもしれないですね。
佐藤 たとえばマニフェストスイッチの円グラフとか、共通の何かが1つ入っているだけで違いますよね。
青木 それから、選挙公報は候補者の情報を得るためのインフラとして用意はされているんですけれど、候補者が書きたいことを書いていて比較しづらいです。別の設問で「選挙公報だけでいいとは思ってない」という回答もありました。
佐藤 大きいし、通勤途中で読めないですよね。
川名 それに、すごい文字量ですよね、選挙公報って。
白井 しかしこの調査、回答者がすごく真面目に設問に答えていますよね。実際の選挙で本当にこういった観点で選んでいるかっていうと、かえって図4の右側の方の項目を参考に選んでいるんじゃないのって穿ってみてしまいますね。候補者の人となりを見たいって、どうしても人情としてあるような気がします。
佐藤 図4で不要とされている情報でも、実際は見て判断していますよね。居住地とか学歴とか家族の状況とか推薦人とか……。有権者は見ていますよね。
青木 住民が議会に対してどう考えればいいのか分からなくて、引っかかりどころがなさ過ぎて、結局は図3の右側の方に位置する項目から判断せざるを得ないという状況なのかもしれませんね。
佐藤 左の方の項目は難しいですよね。大事なんだけど、それらを読み解いて差別化して、誰を選ぶかというのは有権者にとって難しい作業でしょう。並べられた場合にね、右を見ちゃうのが現実ですよね。
田中 そもそもこういうアンケートに真面目に回答する人たちは、左側の項目を参考にするのだと思います。でも現実的には、投票に行かない層ももちろん多いのでしょうが、とりあえず行ってみるかという層は、「今度友達が出るから一緒にいこうよ」と誘われてなどといったところが現実でしょうね。
川名 「チラシが読まれた/読まれない」というのが話題になるんですが、それとは別に「参考になったか」というのも考慮する必要がありますね。同じマニフェスト研究所の調査によると(図5参照)、「よく見聞きされて、かつ有効だった」というのは選挙公報や新聞・テレビ報道。「よく見聞きされたんだけど参考になってない」のは、街宣車・街頭演説や選挙ポスター。「あんまり見られないけど参考になる」のは住民集会やインターネット情報が多いですね。こういった調査を参考にして、各種ツールをどう使うかを考えたほうがいいと思います。
(図5)前回の地方議会選で見聞きした×有効だったツール
(出典 「統一選 政策ビラ解禁に向けた議会イメージ・政策型選挙調査」早稲田大学マニフェスト研究所)http://www.maniken.jp/pdf/180822seisaku_cihougikai_research.pdf