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2019.02.12 カテゴリー

第8回 「議員」の調査について改めて考えてみよう~議員の資質向上と事務局の補佐機能~

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議員の情報入手の方法・その2

 議会図書室の有効活用も大切です。地方自治法100条19項には、「議会は、議員の調査研究に資するため、図書室を附置し前二項の規定により送付を受けた官報、公報及び刊行物を保管して置かなければならない」という議会図書室の規定があります。行政からの情報は、行政が保有しているという意味で行政の視点での情報であり、議会の本来の役割からすれば、行政から独立した情報源を持たなければ、行政の監視を適切に行うことができません。そのためには、議会図書室の整備が必須要件となります。
 自治体議会には議会図書室が設置されているものの、休眠状態か、あるいは置かれている図書等が最新のものではないなど、議会図書室の存在を重要視していないのではないかと思わざるを得ない状況が見受けられます。広島県呉市議会では、常設の司書(嘱託職員)の配置によるレファレンス機能の向上、市・県立図書館や広島修道大学図書館との連携が図られ、議員の質問等に活用されているとのこと(第11回マニフェスト大賞(2016年)「優秀成果賞」受賞)。これは、行政からの情報とは別に、議員自らの調査による情報の重要性を示すものです。
 議会図書室の整備には、議会内での合意形成、そして行政への予算要望など、いくつかの課題を乗り越えなければなりませんが、整備といっても、議員の質問を支援できるよう、司書が在職するならばその技量を高める、新たに公立図書館と連携するなどにより、現状の水準を上げることが可能な場合もあるでしょう。
 合議制機関としての力を強めるためには、個々の議員の力を強めることが必要です。「百聞は一見にしかず」です。議会の政務活動費や委員会視察を活用して、議会図書室について先進的な議会を訪ねることから始めてはどうでしょうか。

二元代表制における議員の「姿勢」、「精神」

 これまで、自治体は議会と首長の二元代表制であり、2006年の栗山町議会基本条例の制定を経て、議会の住民参加が深まってきたこと等について触れてきました。
  住民参加に取り組んでいく場合の最大のポイントは、
「学び」と「交流」といえます。学校教育や生涯学習でも、教え、教えられることで互いの理解が深まっていきます。また、オータムセミナーの事例でも挙げたとおり、悩んでいること、分からないことに対する学びと交流があってこそ理解が深まります。それは、議会における住民参加にもつながる考え方です。芽室町議会、旭川市議会の事例でも挙げたとおり、住民と議会との双方向のコミュニケーションが働いてこそ互いの理解が深まり、より良い関係が築かれるのだと思います。このように、住民参加を通して、住民と議会の双方が学び、そこに交流が行われることが肝要です。
 いうまでもなく、自治体は、議会と首長の二元代表制です。法政大学名誉教授であった故松下圭一さんの著書『自治体は変わるか』(岩波書店、1999年)に掲載された次の図が、国(左側)と自治体(右側)の議会構造の違いを分かりやすく表現しています。
二元代表制
 この図(右側)から明らかなように、議会と首長は、それぞれ住民の負託を受けており、それぞれの立場でその役割を果たしながら、住民福祉の向上を目指すということです。これは、情報収集の面においてもいえます。すべての情報を議会が独自に収集することは不可能ですが、行政との間に緊張感をもたらす、切せっ磋さ琢たく磨まするという意味でも、議会の視点で情報収集をするという「姿勢」、「精神」を持ち続けることが大切です。
 今回は、議員の調査の手法について触れました。議員に「調査権」はありませんが、議員としての調査活動の幅を広げることはとても大切です。そのための視点として、公文書公開制度の活用、議会図書室の整備について説明しました。
 とはいえ、このような道具立てが整ったとしても、その成果が、質問等を通して、議会として行政の監視に的確につながっていかなければ意味がありません。ですから、日常的に議員としての資質を向上させるよう、議員個々の努力・研さんが必要になってくるのです。
 各自治体議会において、議員の調査を支援するための体制整備の必要性は、横浜市や呉市の取組みを見ても明らかです。一方で、小規模自治体議会の体制整備は、現実問題として難しいものがあり、この場合は、専門的知見の活用や議会サポーター・議会モニターの採用、大学からの支援など外部との積極的な連携が必要になってくるでしょう。
 どちらの場合であっても、議会事務局の補佐は重要であり、それを生かすためには、首長とは別に住民の負託を受けている議会議員としての議員力向上が必要です。

(『自治体法務NAVI』「とっても身近な自治体法務シリーズ」2018.12.15号より転載)

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