2018.11.26 コンプライアンス
第10回 政治活動の要「後援会活動」(選挙時編1)
7 人気投票の結果等の公表禁止(法138条の3)
後援会としては、選挙において支持・推薦する公職者等の評価が気になるところですが、公選法は人気投票の結果等の公表を禁じています。
具体的には、
① 選挙に関して
② 公職に就くべき者を予想する人気投票について
③ 経過や結果を公表すること
を禁止しています。
①は、これまで述べたこと(戸別訪問・署名運動の禁止)と同様です。
②は、要するにその選挙で議員や首長にふさわしい人を投票させることであり、対象者の立候補(又はその予定)の有無は問いません。
③については、その方法に限定はなく、文書を配布したり掲示することのみならず、ホームページに掲載したり、口頭で報告することも含まれます。
8 インターネットを使った選挙運動(法142条の3以下)
近時はインターネットを使った選挙運動も活発です。公職者等の応援のため、後援会としてどのようなインターネットの利用方法があるでしょうか。
(1)ウェブサイト(ホームページ・ブログ等)の利用
後援会の公式ホームページやブログ等(以下「ウェブサイト等」といいます)を開設し、支持する公職者等への投票を呼びかけることは、後援会としても有権者個人としても可能です(法142条の4第1項)。また、動画を配信することも同様です。ただし、著作権やプライバシーなどへの配慮が必要です。
この場合、ウェブサイト等に選挙運動用のビラやポスターの画像を掲載することもできますが、その画像を印刷した場合、当該印刷物が「選挙運動のために使用する文書図画」(法142条、143条等)となり規制を受けるため、掲示や頒布はできません。
また、ウェブサイト等は、投票日もそのままにしておくことができますが、投票日に更新することは選挙運動期間外の選挙運動となるためできません(法142条の3第2項、129条)。
さらに、ウェブサイト等には、電子メールアドレスその他のインターネット等を利用する方法によりその者に連絡をする際に必要となる情報(以下「電子メールアドレス等」といいます)を正しく表示させなくてはなりません(法142条の3第3項)。
電子メールアドレス等の例としては、メールアドレス、ツイッターのユーザー名や問合せフォームなどであり、インターネット上で直接連絡をとるために必要な情報をいいます。
(2)電子メールの利用
より直接的に有権者に働きかける方法として、候補者への投票を呼びかけるなど選挙運動としてのメール配信なども考えられます。
この点、公選法は、知事、市長、都道府県議会議員、指定都市の市議会議員の各選挙に限り、候補者又は確認団体(確認団体については、次回「選挙時編2」で解説します)にのみ選挙運動用電子メールの送信を認めています。他方、指定都市以外の市議会議員選挙、町村の首長選挙及び議員選挙では候補者のみとなっています(法142条の4第1項5号~7号)。
したがって、確認団体でない後援会や候補者でない個人が選挙運動用メールを送ることは認められていません。
これは、適法な送信者から送られてきたメールを転送する場合にも適用されるため、候補者から後援会に来た選挙運動用電子メールを会員に転送することもできません。
ここでいう電子メールとは、SMTP方式又は電話番号方式でメッセージを送るもので、簡単にいえば、皆さんが「Eメール」や「ショートメッセージ(SMS)」などと呼んでいるものを指します。最近はホームページを閲覧するブラウザ上で使える「Webメール」(GmailやYahoo!メールなど)も増えていますが、これも上記の電子メールに当たります(法142条の3第1項、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律2条1号)。
選挙運動用電子メールを送ることができる確認団体であっても、送信先はあらかじめ送信を求め又は同意した者につきその者から伝えられたメールアドレスや、普段から政治活動用メールを送っている相手で、あらかじめ選挙運動用メールの送信についての通知を受けても拒否しなかった者で、その者から伝えられた政治活動用電子メールアドレス(選挙運動用電子メールの送信を拒否されたアドレスを除く)などに制限されています(法142条の4第2項)。この場合でも、要件を満たすか判断するための記録を保持しなければならず(同条4項)、相手から送信しないよう求められれば送信することはできません(同条5項)。
普段の後援会活動において、入会届けなどに電子メールアドレスを記入してもらったり、メールアドレス入りの名刺をもらったりすることがあると思います。しかし、そのアドレスを使って自由に選挙運動用メールを送ることができるわけではないことは、肝に銘じておきましょう。