2018.11.26 コンプライアンス
第10回 政治活動の要「後援会活動」(選挙時編1)
4 飲食物提供の禁止(法139条)
何人も選挙運動に関して飲食物(湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子は除きます)を提供することは許されません。
これは後援会などの団体にも適用され、後援会名義であっても、会長個人名義であっても該当します。
「選挙運動に関して」とは、選挙運動に関連して又は動機としてなされるものであり、投票依頼などの目的は不要です。
また、「飲食物」とは、加工せずにそのまま飲食できるものを指します。お茶やジュース、お酒、お菓子、果物などが典型的なものです。
他方で、例外的に提供できる「湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子」は来客用の簡素なお茶やお茶受け程度のものをいうとされています(詳細は、金岡宏樹「お悩み解消!! 実務から見た公職選挙法との付き合い方 第3回」(議員NAVI 2017年4月10日号をご覧ください)。
したがって、選挙運動の事務を行う選挙事務所にジュースやケーキなどの飲食物を差し入れることは、法139条に違反することとなります。
5 気勢を張る行為・連呼行為の禁止(法140条、140条の2)
選挙運動のための気勢を張る行為や連呼行為は禁止されています。
これは、条文上いずれも「何人も」となっているため、選挙運動員ではない後援会員が行った場合にも適用があります。
(1)気勢を張る行為
意気盛んなことを示す行為ですが、条文の「自動車を連ね又は隊伍を組んで往来する」は例示にすぎず、その方法は様々なものがあります。声をそろえて喚声を上げることや、音楽を大音量で流したり、大人数でパフォーマンスをすることも、態様や行為の場所によっては該当することになります。
(2)連呼行為
連呼行為とは、一定の短いフレーズを短時間に繰り返すことであり、候補者の氏名やスローガン、「本日午後6時、○○にて演説会開催!」などの案内を繰り返し述べることが典型です。
なお、連呼行為の禁止には例外があり、演説会場や街頭演説・演説の場所、午前8時から午後8時までの間に選挙運動用自動車の上でする場合は連呼行為が可能です(法140条の2第1項ただし書)。ただしこの場合でも、学校・病院・診療所や療養施設等の周辺では静穏を保持するようにしなければなりません(同条2項)。
6 署名運動の禁止(法138条の2)
公選法は、選挙に関しての署名運動についても規制をしています。
禁止される署名運動は、
① 選挙に関して行われるものであること
② 投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的があること
③ 選挙人に対し署名運動をすること
の要件を満たすものとなります。
(1)要件① 選挙に関して行われるものであること
この要件については、「3 戸別訪問の禁止」で述べたことと同様です。
(2)要件② 投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的があること
これについても「3 戸別訪問の禁止」で述べたことと同様です。署名運動では何らかの主張・要望についての賛同や反対などの意見を求めるものが多いのですが、公職者等の掲げる特徴的な政策や、候補者のうちただ1人しか主張していないような要望と同様の内容である場合には、このような目的が肯定されやすくなると考えられます。
(3)要件③ 選挙人に対し署名運動をすること
「選挙人に対し」とありますが、解釈上、選挙区域内の選挙人(有権者)に限られず、例えばA市の市長選挙に関して争点となっているA市とB市の合併推進について、B市の選挙人に対して署名運動をするように、選挙区域内に影響を及ぼす目的でする場合も含まれるとされています。