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2018.11.12 カテゴリー

第5回 議会改革の継続・継承と事務局人事のあり方~栗山町議会を訪れて

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「継続」と「継承」がポイント

 このように栗山町議会では、議会基本条例に規定する項目を着実・堅実に実施してきているといえますが、ここでのポイントは、「継続」と「継承」です。
 「継続」とは、条例に定めるそれぞれの取組みを意味あるものとして続けていくことです。議会基本条例に規定する議会報告会、一般会議、議会モニター等の取組みを着実に実施し、議会改革を実行してきました。それとともに、議会基本条例には見直し手続の条文(26条)があり、その規定に基づいて不断の見直しを進めてきました。2008年3月改正では議会モニター、議会改革推進会議及び調査機関の設置、他の自治体議会との交流及び連携の推進、同年12月改正では住民投票結果の尊重の追加、2009年3月改正では議会サポーターの導入、2011年3月改正では正副議長志願者の所信表明、2014年12月改正では議員の政治倫理に関する追加等、さらに2016年6月改正では見直し手続を1年ごとに改めるなど、これまで大小8回にわたり必要な改正が行われました。
 「継承」については、議会基本条例制定後に3回の改選を経ており、制定当時の議員(20人)は現在の定数12人中4人となり、改選を通して議員の構成に変化が生じています。新陳代謝は、議会という組織に新しい風を吹き込みますが、年を経るにつれて制定時の理念が見失われる可能性もあります。しかし、住民目線の議会運営がなされ、不断の議会改革が行われたことは、「継承」(バトンタッチ)が円滑になされてきたといえます。
 また、見逃せないのは、この間の議長の交代の少なさです。議会基本条例の制定前から今日に至るまで、前議長の橋場利勝さんから現議長の鵜川和彦さんへの交代があったのみです。そして、前議長から現議長に条例の理念が着実・確実に引き継がれたものと考えます。  このように、「継続」と「継承」により、「活ける条例」として活用されてきたことが、栗山町議会が先駆議会であり続けた証しです。

町政の課題への対応

 町政課題への対処方法については、議会、町長それぞれの役割があります。二元代表制の基本に立ち返ると、議会は合議制機関、町長は独任制機関という立場です。
 今、栗山町で課題のひとつとなっているのは、全国でも公立では数少ない町立の北海道介護福祉学校のあり方です。1988年設立のこの学校は、80人に満たない状況にあり、町では今後のあり方を検討しているとのこと。介護福祉というのは重要なテーマであり、若者の居住面でも意味を持ちますが、議会でも、所管の常任委員会が、町内8事業所との意見交換を行っているようです。
 この課題に関して、栗山町議会基本条例を効果的に運用するならば、議会報告会や一般会議といった町民との交流、専門的知見や参考人制度の活用等を図ることができます。介護福祉学校の学生との意見交換も考えられるでしょう。「継続」と「継承」によるこれまでの積重ねが、大いに力を発揮するのではないかと期待されます。行政の継続性は時間軸の中で力を増し、経験を蓄積してきた議会の継続性もまた、大きな意味を持つのです。

議会事務局の人事のあり方

 地方自治法138条5項では、議会事務局長以下の職員人事の任免権は、議長にあると規定されています。
 しかしながら、事務局長の実際の人事は、長が、自治体全般の人事異動において決めるケースが大多数で、議長はそれを追認することが多いのではないでしょうか。その場合に懸念されるのは、議会事務局と長部局との距離の取り方です。特に、議会事務局長のポストがその後、長部局の主要ポストにつながっていくような場合には、議会事務局長が長の「顔色」をうかがいながら職務を遂行するという事態にもなりかねません。栗山町議会の場合は、条例制定後12年間の2人の議長は、長に対して是々非々の態度をとり、事務局長人事にもしっかりと目配りをしてきました。こうした議長の下では、事務局長以下の職員にも「議会のために」という意識が働き、好影響が及んでいます。そのうえ今年の7月には、かつて議会基本条例の制定に関わった職員が、議長の意思のもと、主幹として復帰してきたのが好材料です。
 議会基本条例を「継続」、「継承」させていくためには、議会事務局が、議会全体をしっかりと支えていくことが必要であり、条例の理念や規定を通して、議会や議員がなすべきことを事務局の立場から伝えていくことも重要です。以上の点から、栗山町議会事務局には、今後も大いに期待し、注目していきたいと思います。
 一方、懸念すべき課題もあります。栗山町議会では、条例制定時の事務局長の退任以降、事務局長や主幹が、監査事務局との兼務発令をされていることです。北海道内では珍しいことではないようですが、本来ならば、少数(精鋭)の体制で議会事務に取り組まなければならないことや、議会が公の場で執行機関の政策や事業等をチェックするということからいえば、監査事務局との兼務発令は、望ましいこととはいえません。
 兼務体制の解消について、議長が町長に強く働きかけることが必要なのではないかと思います。このことは、少人数体制の議会事務局、議会にとって、全国的に問題意識を持つべきことと考えます。

(『自治体法務NAVI』「とっても身近な自治体法務シリーズ」2018.9.15号より転載)

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