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2018.10.25

第10回 統一地方選前に住民の手で公開討論会の開催を!〜自治を実践する浦安市と小平市、流山市の住民たち〜

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【インタビュー2】

「政治・知りたい、確かめ隊」森野やよい・代表に聞く

 小平市で市長選や市議選を対象にした公開討論会を開催している住民団体「政治・知りたい、確かめ隊」の代表・森野やよいさんに話を伺った。

「政治・知りたい、確かめ隊」森野やよい・代表 「政治・知りたい、確かめ隊」森野やよい・代表

─どんなことがきっかけで「政治・知りたい、確かめ隊」を結成したのですか。
 現在、高校2年生の次女が1歳のときにこの会をスタートさせました。当初のメンバーは10人で、全員女性です。小平市の公民館が主催した「女性のための政治学」というセミナーで知り合った人たちです。

──ということは、皆さん、もともと政治に関心があったのでしょうか。
 いや、そういうわけでもないのです。私は「男女雇用機会均等法」の世代で、1988年に民間企業に就職しました。結婚して長女を産んだ後も働き続けましたが、次女ができたときに仕事を辞めて専業主婦になりました。でも、仕事を辞めたら時間はあるし、「何かやりたい」という思いを抱いていました。そんなときに市の広報紙を見て市民編集者を募集していることを知りました。それですぐに応募し、広報紙の作成に関わるようになったのです。そうしたら、あるとき、市の女性職員から公民館が女性を対象としたセミナーを開催する話を聞きました。平日の午前中の開催ですが、受講生は講義を受けている間、子どもを預けられるというのです。私は「公民館で勉強ができる」と飛びついたのです。それが「女性のための政治学」という講座でした。私はとにかく勉強したくて受講したので、そのテーマに特に関心があったというわけではありませんでした。

──なるほど。
 受講生は50人ほどで、もちろん全員女性です。2002年秋に始まった女性セミナーは3か月間続き、10回の講義で終了となりましたが、受講生の間で「もっと政治のことを知りたい」という声が広がり、10人で「政治・知りたい、確かめ隊」を組織したのです。2003年1月のことです。
 具体的に何をするかを話し合い、市議会を傍聴することから始めました。メンバーの中に70代の方がいまして、若い頃に1人で市議会の傍聴記を出したという人です。いろいろあって傍聴記は2号で断念せざるを得なかったそうです。その方が「議会を傍聴するとまちのことがよく分かる」と提案してくれたのです。
 2003年の6月定例会から議会の傍聴を開始し、その感想や意見をまとめた「議会ウォッチングをしてみました」を発行しました。定例会ごとなので年4回です。当初は1,000部(現在は500部)印刷をして公民館などの情報コーナーに置いたり、イベント会場で配ったりしました。市議会が傍聴できることを市民に伝えたかったし、もっと地域に関心を寄せてもらいたいとの思いからです。会を発足してから15年間ずっと議会の傍聴を続けていて、最新の「議会ウォッチングしてみました」は61号になります。会員は現在7人で、男性もいます。発足時から活動を続けているのは、私を含めて3人です。

──議会の傍聴席から議員の後ろ姿をずっと見続けてきたのですね。
 議会の傍聴を始めた頃は議員からいろいろなことを言われました。「何で傍聴に来ているんだ」とか「何か文句あるのか」と聞かれたこともあります。当時の小平市議会にはボス議員がいて、その人から「一般市民がちょっと議会を傍聴しただけで“あれはおかしい”なんて言うことの方がおかしい」と、きつく言われたこともあります。議会には議会のルールがある、事情に疎い一般市民があれこれ言うな! ということのようでした。
 でも、議会を傍聴するようになって地域のことにより関心を持つようになりました。もっと住みよいまちになったらいいなと思うようになったのです。議会のあり方についても同様です。傍聴していて分かりにくいことがたくさんあったので、会のメンバーと議会をこうしたらよいのでは、ここをこう変えたらどうかなどいろいろと話し合うようになりました。それで、こちらから議員たちに意見交換の場を設けるよう申し入れたのです。

──どうなりましたか。
 小平市議会には当時5つの会派があったのですが、意見交換会には全ての会派から議員が参加しました。これまで他会派の議員と話したことがなかったという人が意外にも多く、意見交換会は議員にも好評でした。それで、その後も「市議会議員との懇談会」と名称を変え、私たちの会が主催して毎年開催するようになりました。

──市民団体が議員との意見交換会を主催するというのは、とても珍しいですね。
 本来、市民と議会と行政(首長)は三角形の関係にあり、その頂点に市民が位置するものだと考えます。行政サイドは市民の意見を求める場や仕組みをいくつか持っていますが、議会と市民の間にはほとんどありません。私たちは、市民と議会をつなげていくことを一番の目的として、意見交換会を主催しました。

──森野さんらの「政治・知りたい、確かめ隊」は2008年に「わかりやすい市議会と、市民が市議会を知る機会を増やすことについて」の請願を議会に提出しました。この請願が7回の審査を経て可決され、一問一答方式の導入などの議会改革が進みました。市民と議員をつなげる活動の一環として、森野さんたちは市議選の立候補予定者による公開討論会も開催しています。
 公開討論会というよりも、立候補予定者を市民に紹介する会です。市長選は2005年から毎回開催していますが、市議選(議員定数28)は2007年と2015年の2回です。

──市議選は立候補者が大勢なので、大変ではないでしょうか。
 最初(2007年)のときは、リンカーン・フォーラムの内田豊さんに電話して相談したり、簡易マニュアルを参考にしました。
 立候補予定者全員(32人)に声をかけ、事前に選挙管理委員会にも連絡しました。当日は19人の候補者が出席し、ひな壇にずらりと並びました。席はくじ引きで決め、最初に1人ずつ中央に置かれたマイクの前に出て、立候補する理由などを話してもらいました。その後、個別テーマごとにそれぞれの意見を述べてもらい、討論会は3時間で終了しました。会場には160人ほどの市民が集まりまして、「候補者の人となりが分かってよかった」という声が多数、寄せられました。でも「候補者全員の意見を聞きたかった」といったものや「保守系の候補がいないのを残念に感じた」という声もありました。
 2011年の市議選のときも開催する予定でしたが、東日本大震災の影響で会場が使用できず、断念しました。2015年のときは午後と夜の2回に分けて開催しました。出席した立候補予定者(実際の立候補者は34人)は午後の部12人と夜の部13人の計25人で、参加した市民は合わせて160人ほどでした。最初に1人4分ずつ自己アピールをしてもらい、後半は会場から集めた4つの質問事項について、1人1分ずつ回答してもらいました。このときの公開討論会の模様はユーチューブにアップして配信しました。公開討論会の開催にかかった経費は7、8万円でした。会場費とポスターやチラシ代などで、私たち(「政治・知りたい、確かめ隊」)が負担しました。会場内にカンパ箱を置きましたが、集まったのは2,000円程度でした。

──市議選の公開討論会を開催することにどのような意味があるとお考えでしょうか。
 私たちは、市民の関心を高めて投票率を上げたいと考えています。そして、市民と市議会の間をつなげていきたいと思っています。市民の皆さんに(自分の一票を)誰に入れるかを判断する材料にしてもらうことです。どなたに一票を入れるかは皆さんにお任せしますが、この会に参加していろいろな候補者を生で見て、判断してもらえたらと思うのです。公開討論会に参加したある市民が「ずらりと並んでいる候補者を見たり、それぞれの話を一度に聞くと、違いが分かりますね」とおっしゃっていました。そのとおりだと思います。(私たち市民は)議会の傍聴席から議員全員の後ろ姿しか見ることができません。(議員全員と)対面できるのは、行政の執行部だけです。それって、おかしいと思うのです。公開討論会ならば、市民は前に並んだ候補者の顔をしっかりと見ることができます。選挙では1人にしか投票できませんが、公開討論会でいろいろな候補者の話を聞けば、多くの議員のことを知ることになります。自分が投票した候補者以外にも託せそうだと思える人が生まれるはずです。公開討論会に参加して全ての候補者を見ることで、市民が議会とつながるきっかけになると思うのです。市民と議会とのパイプがつながることになるのではないでしょうか。
 来年4月の市議選でも公開討論会を開催する予定で、若い方々に企画に関わってもらえないかと思っています。SNSなども積極的に活用したいと考えています。

──自分たちも公開討論会を開いてみたいと思っている方たちに何かありますか。
 公開討論会で一番大事なことは、公平・公正・中立に行うことです。特定の誰かを応援するものだと(住民は)参加しません。立候補する皆さん全員を応援するための会でなくてはなりません。それから選挙のときだけでなく、選挙が終わった後も議会を傍聴して議員を見続けることが大事だと思います。

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