2018.09.25 若者参画
第9回 投票率向上に立ち上がった若者と子育て世代〜市川市と松戸市〜
【インタビュー2】
「DIO選挙プロジェクトまつど」土岐金成・代表に聞く
市川市民に負けていられないとばかりに松戸市で投票率向上を目指す活動を始めた土岐金成さん。子どもの頃、東京から転居し、以来40年以上も松戸市に住む土岐さんに、取組みの経緯を聞いた。
──今年6月に行われた松戸市長選の投票率は29.33%で、とうとう3割を割ってしまいました。
今回の市長選では青年会議所(JC)主催の公開討論会も開かれず、(候補者による)演説や論戦も乏しい奇妙な選挙となりました。私たち「DIO選挙プロジェクトまつど」も当初、(市民に市長選への関心を持ってもらおうと)アイデアを出し合っていろいろな取組みをしようとしたのですが、立ち上げたばかりの団体ということもありまして、実際には1つしかできませんでした。
──野外での市民討論会ですね。
当初はJR松戸駅前広場でイベントをやりたいと考え、準備にとりかかったら、これが大変でした。市の担当部署との連携がないと借りられないと思い、選挙管理委員会に話を持っていったのですが、ダメでした。できたばかりの団体ですから仕方ないのかもしれませんが。それでも公園ならば借りられそうだということになり、松戸駅近くの西口公園をイベント会場にしました。公園内にテントを張り、市民同士が対話できるように椅子を用意しました。市長選に関するシールアンケートも実施しました。市長選告示1週間前の土日に開いたのですが、2日間で20人ほどしか集まりませんでした。事前にプレスリリースをしましたが、取材もありませんでした。しばらくはトライアルアンドエラーでやるしかないかと思っています。
──そもそもどういう経緯でそうした活動を行うようになったのですか。
地元の議会や行政に関心を持ったのは8年前からです。当時、市立病院の移転問題が浮上し、移転に反対する市民グループが住民投票で結着をつけるべきだと署名集めを行いました。私は「移転はどうかな」と思いましたが、かといって明確に反対だとも判断できずにいました。議会でどういう議論がされてきたのか全く知らずにいたからです。市政をしっかり見ておらず、判断する情報を持っていないので、分からなかったのです。
結局、住民投票条例案は議会で否決され、市立病院の移転問題は市長選(2010年)の争点となりましたが、私は自分が松戸に40年以上住んでいながら松戸の政治について全く知らずにいたことを痛感しました。その反省から市議会や行政の動きをしっかり見ようと思い立ち、市議会を傍聴してその内容をフェイスブックで発信するようになりました。
──そうですか。市を二分する大問題について、自分が何も知らずにいたことに気づいたことがきっかけとなったのですね。
フェイスブックでいろいろ発信しているうちに思いを同じくする人たちと知り合い、「松戸を良くする、市民の“ゆるーい”ネットワーク」という市民グループに加わりました。名前のとおり、特定の政党や会派に偏らず、主体的に松戸を良くしようという志を持つ市民が集まり、前向きで建設的な声を行政や議会に届けようという趣旨で発足したグループです。
──どのような活動をする市民グループですか。
フェイスブックなどでつながるゆるーいグループで、(ネット上も含め)参加した市民は2,000人から3,000人です。2014年の市長選前に立候補予定者に公開質問状を送り、フェイスブック上に掲載したり、チラシにして市民に配布したりしました。その年の11月に行われた市議選でも60人ほどの立候補予定者に公開質問状を送り、回答を市民に知らせました。いずれも立候補予定者をより深く、より多くの市民に知ってもらいたいという思いからです。投票するに当たっての判断材料にしてもらいたいというものです。質問項目はメンバーで話し合って決めました。
その後、中心メンバーの仕事が忙しくなったことなどもあり、これといった動きのないまま市長選挙が迫ってきました。昨年の暮れになって、投票率の低さを憂う方から「何かできないだろうか」と声をかけられ、2人で相談して「DIO選挙プロジェクトまつど」を結成しました。今年の3月のことです。
──たった2人で始められたのですね。
そうです。市長選直前の野外イベントは準備不足でした。今は手探り状態でいろいろやるしかありません。
──今年8月に松戸市内で低投票率を考えるイベントを開きました。
これは、「選挙に行こうとは思うんだけど……」といった人たちをターゲットにしたものです。イベントの正式名は「私が投票に行かない理由」です。実際に参加してくださったのは、いつも選挙に行く方が中心で、20人弱です。
──イベントの内容はどのようなものでしたか?
前半は私が投票率のデータを示しながら、状況を説明しました。後半は参加者が2班に分かれて、話し合う形をとりました。どうして(松戸市の地方選挙の)投票率がこうも低いのか、そして、どうしたらよいかなどについて皆さんが活発に意見を出し合いました。
心理的な壁があるという指摘がなされました。私も同感です。政治の話をするときにも壁があり、選挙に行くことにも壁ができているように感じています。その壁をいかにして壊すか、うまく壊す仕組みをつくり出せないものか。そもそも地方議会の動きや働きが見えず、住民は突発的に大きな問題が浮上して初めて、議会の存在を知ることになるという指摘もありました。
──11月に松戸市議選がありますが。
いろいろな取組みを考えています。市内の別のグループ(ディープデモクラシー・センターとまつどNPO協議会)からも、告示前に町の将来について語り合う集まり(まつどまちづくりギャザリング〜せんきょCAMPまつど2018)を一緒にやらないかと声をかけられています。投票率が少しでも上がるようになればと思っています。