2018.09.25 若者参画
第9回 投票率向上に立ち上がった若者と子育て世代〜市川市と松戸市〜
各地に広がる住民による投票率向上運動の波
市川市で産声を上げた「若者とママの投票率向上委員会」の取組みは、同じような思いを募らせる周辺自治体の住民に大きな刺激と共感をもって受け止められたようだ。須藤さんによると、同じような活動をしている周辺自治体の住民たちから次々に連絡が入り、直接、会って情報交換するようになったという。そのうちの1人が、千葉県松戸市の土岐金成さんだ。
市川市の北側に位置する松戸市は、市川市と同じく江戸川を挟んで東京都と接する。都心から20キロ圏内で、市内に6本の鉄道が走る。人口は49万660人(2018年9月1日現在)で、市川市とよく似た利便性の高い住宅都市である。共通点の多い両市だが、地方選での投票率の低さでも競い合っている。つまり、松戸市も日本有数の「3割自治体」なのだ。住民の多くが千葉都民で、地方政治への関心が薄いのである。
こうした現状に危機感を抱いていた土岐さんは今年3月、仲間とともに「DIO選挙プロジェクトまつど」を結成した。6月に迫っていた市長選やその後の市議選などへの関心を高めたいとの思いからだ。松戸市の地方選挙の投票率は急激な右肩下がりを続けており、2014年の市長選は35.56%、同年の市議選は37.74%といずれも3割台に沈んだ。隣接する市川市よりはましだが、恥ずかしい数値であることには違いない。今年は市長選(6月)と市議選(11月)が予定されていたため、土岐さんらは何とかして住民の関心を高めたいと取組みを始めたのである(インタビュー記事を参照)。
土岐さんらは、野外イベントを開催したり、フェイスブックなどを使っての情報発信を重ねたが、6月の市長選の投票率は散々だった。現職を含む4人が立候補したにもかかわらず、選挙戦は盛り上がりに欠け、投票率はわずか29.33%。右肩下がりに歯止めをかけるどころか、3割を割り込む悲惨な結果に終わった。再選挙で数値を大幅に上げた市川市に大きく水を開けられてしまったのである。自治の根幹が大きく揺らぎ、崩壊しかねない事態となっている。
危機感を募らせる土岐さんらは、現在、11月に予定されている松戸市議選(定数42)に照準を当てて活動中で、立候補予定者と市民が話し合うイベントの開催を準備している。同じ思いを持つNPO団体(ディープデモクラシー・センターとまつどNPO協議会)などと実行委員会を結成してのイベントで、10月27日に松戸市内で開催予定である。「まつどまちづくりギャザリング〜せんきょCAMPまつど2018」がその正式名称だ。
首長や議員を選ぶ選挙がきちんと機能しない限り、住民主体の地方自治など実現できるはずもない。もちろん、投票に行くことだけが自治を担うことではないが……。