2018.09.10 コンプライアンス
第9回 政治活動の要「後援会活動」(平時編)
(2)ポスター
ア 記載の内容
ポスターには、立札・看板と同様、公職者等の氏名や氏名類推事項、後援団体の名称に加えて、政治活動に関することを記載できますが、名前をことさら大きく表示することや、特定の選挙をにおわせる表現を記載するなど事前運動に該当するような内容を記載することはできません。また、事務所・連絡所の表示や後援団体の構成員であることを記載することもできません。
他方で、ポスターの表面に掲示責任者及び印刷者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所を記載しなければなりません(法143条18項)。
イ 大きさ・数
法令上制限はありません。しかし、あまりに大量であったり、巨大なポスターなどは事前運動と判断されるおそれが強くなります。
ウ 掲示場所
掲示場所について公選法では定めがありませんが、選挙時の政党その他の政治団体等の政治活動ポスターの設置場所の制限(法201条の11第6項、145条)との関係から、国や地方公共団体の管理・所有に係る場所については原則として掲示すべきではありません。また、他人の土地や工作物への掲示については事前に承諾を得ておく必要がありますし、各地の景観条例等を遵守しなければなりません。
エ 掲示時期の制限
「一定期間」中は掲示することができません(法143条19項)。この「一定期間」は、
・任期満了による選挙の場合は、任期満了日の6か月前の日から投票日までの期間
・任期満了以外の理由による選挙の場合は、選挙を行うべき事由が生じたことを告示した日の翌日から投票日までの期間
となっており、解説2の2で説明した「一定期間」とは期間が異なりますので要注意です。
オ 「裏打ちポスター」の禁止
ベニヤ板やプラスチック板、段ボール、金属などで裏打ちされたものは、いわゆる「裏打ちポスター」として掲示することはできません。
この趣旨から、型枠にはめ込んで掲示する方法や、あらかじめポスターを掲示することを予定して掲示板を作成・設置してそこにポスターを掲示した場合もこれに当たりうるものとされています。
なお、街中でよく見る政党掲示板はどうなのかとの問題があります。政党については、一般に諸般の政治活動を行っていて、特定の公職者等の推薦・支持がその政治活動の主たる部分といえない場合には「後援団体」に当たらないものと解されており、この考えに従えば一般的な政党掲示板は本規制の対象外と考えられます。
反対に、公職者等や後援団体が上記規制を免れるために形だけ「政党」をつくっても、実質的に特定の公職者等のみの支持を政治活動の主たる部分とする政党であれば「後援団体」であり、その政党掲示板は後援団体の掲示板として上記規制の対象になると考えられます。
(3)演説会等の会場における文書図画
ア 演説会等とは
後援団体の政治活動のために行う演説会、講演会、研修会その他これらに類する集会を行う際に、その会場では公職者等の氏名や氏名類推事項、後援団体の名称を記載したものを使用することができます(法143条16項3号)。
例えば、政策勉強会や時局説明会、活動報告会など、いろいろな名称で政治活動の報告会や勉強会が開催されることがありますが、名称がどうであれ、その集会の性質や内容によって「演説会等」に当たるかが判断されます。
また、集会ですので、個別面接の形ではなく、不特定又は多数(すなわち不特定少数や特定多数の場合も含みます)の者を集めて開催する会合を指します。
イ 掲示できる文書図画
会場内において掲示できる文書図画の種類については制限がありませんので、ポスターや動画、垂れ幕なども使用できます。もっとも、その内容が投票依頼や特定の選挙に向けた活動報告など、選挙運動に及ぶ場合は事前運動となります。
ウ 掲示できる時期・場所
演説会等の開催中ですので、まさに開催時間中かそれに接着した時間帯に限られます。開催当日の早朝からとか、終了後の片付けが終わっても掲示したままにすることは接着した時間帯とはいえません。
また、条文は「会場において」としています。この「おいて」は、会場内のみならず、会場外であっても合理的に判断して会場といえる場所(例えば、会場までの廊下や会場建物の入口)であれば掲示することができます。
4 事前運動の禁止(法129条)
(1)後援団体も事前運動禁止
後援団体である後援会が推薦・支持する公職者等の政策を広めたり、組織拡大のために口頭で説明や呼びかけをして後援者を募ったり、ビラなどによる文書の頒布をすることは、政治活動として認められています。
しかし、選挙運動期間外に特定の選挙に向けた特定の候補者等の当選に向けた選挙運動を行うことは、事前運動として公職者等のみならず誰であっても禁止されています。
そのため、後援団体である後援会の活動においても、内容や方法によっては事前運動とみなされ、公選法違反となり得ます。
例えば、公職者等の名前を街頭で連呼したり、ビラに「◯◯さんに次の市政を託す!」などと記載すること、選挙告示時期の直前に大量のビラを配ったり後援会員の勧誘を集中的に行うなどすることは、事前運動とみなされる可能性が高いといえます。