2018.09.10 コンプライアンス
第9回 政治活動の要「後援会活動」(平時編)
(2)公職者等からの寄附の禁止(法199条の2第1項)
公職者等は、選挙区域内の者に対しては、原則として寄附をすることはできません(法199条の2)。例外的に寄附ができるのは、以下の場合です。
〈例外1:政党その他の政治団体又はその支部への寄附〉
・政治資金規正法3条1項の定義する「政治団体」(解説1の4参照)と同じ意味です。
・後援団体である後援会が「政治団体」に当たらない場合、寄附はできませんし、「政治団体」に当たる場合でも、自身の資金管理団体(政治資金規正法19条2項)である場合を除き、「一定期間」中はすることができません(法199条の5第3項)。
〈例外2:公職の候補者等の親族に対してする場合〉
・「親族」とは民法上の親族(配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族)と同じであり、自らの又従兄弟姉妹(いとこ)、配偶者の伯(叔)父母や甥姪(おいめい)までを指します。
〈例外3:自らが選挙区域内で行う専ら政治上の主義又は施策を普及するために行う講習会・政治教育のための集会に関する必要やむを得ない実費補償をする場合〉
・「専ら」ですから、講習はそこそこに食事会を行うとか、親睦旅行と併せて開催するといった形では「専ら」とは認められません。
・「実費補償」であり、最小限度の金銭や現物支給に限られ、過剰な補償をすれば寄附となります。
・食事についての実費の補償は禁止されます。
・この場合でも、通常用いられる程度の食事の提供(目安として選挙のときの弁当料程度のものと考えられていますが、明確な基準ではないので簡易な茶菓程度に抑えておくべきかと思います)を超えるような饗応(きょうおう)接待(お酒が代表的な例です)が行われる場合や、「一定期間」中に行う場合は禁止されます。
(3)後援団体である後援会の行事等における寄附の規制(法199条の5第2項)
「一定期間」中に、後援団体である後援会が行う総会や集会、行事(旅行や見学も含む)などにおいて、推薦・支持している公職者等の選挙区域内の者に対して饗応接待や金銭・記念品などの物品の寄附をすることはできません。
この規制は、条文が「何人も」としているように、寄附をする者が後援団体である後援会の場合のみならず、行事の参加者など誰であっても対象となりますので注意が必要です。
もっとも、「一定期間」中であっても、通常用いられる程度の食事の提供は認められています。また、「記念品その他の物品」となっていますので、記念品に準じるものを指し、行事で使うメモ紙やポケットティッシュ程度のものはこれに該当しません。
3 文書図画の掲示に関する規制(法143条)
公選法は、公職者等や後援団体の政治活動のために使用される、公職者等の氏名・後援団体の名称又は公職者等の氏名類推事項を記載する文書図画につき以下のような規制をしています。
(1)立札・看板
ア 記載の内容
公職者等の氏名や氏名類推事項、後援団体の名称のほか、政治活動に関することを記載できますが、特定の選挙を想定した文言や投票を呼びかけるような記載があれば、事前運動(法129条)とみなされる可能性があります。
イ 設置場所
当該公職者等又はその後援団体が政治活動のために使用する事務所。
※ここにいう「事務所」は、単に事務所の名前だけというものは含まれません。公職者又はその後援団体として具体的な政治活動に関する事務(例えば、支援者拡大のための定例会議を開いているとか、パンフレットの作成、政策懇談会や演説会の運営を行っているなど)を行っている場所である必要があります。したがって、勝手に名目上事務所を名乗って後援団体の知らないところで事務を行っていても、上記要件は満たさないことになります。
ウ 総数(法143条16項1号、公選法施行令110条の5、138条)
※この場合の後援団体は、同じ公職者等の後援団体が複数ある場合、全てを合算した総数になります。ですから、ある公職者等に2つの後援団体があっても総数が倍になるものではありません。
エ 事務所1か所ごとの数(法143条16項1号)
事務所1か所につき合計2つまで。
オ その他の要件
大きさはタテ150センチメートル、ヨコ40センチメートル以内で、かつ選挙管理委員会から交付を受けた証票を貼り付けなければなりません(法143条17項、公選法施行令110条の5第4項)。
後援団体が証票の交付申請をするに当たっては、公職者等の同意を得る必要があります(公選法施行令110条の5第5項)。