2018.07.25 予算・決算
第4回 最終日に追加で提案された補正予算案を減額修正
当初は委員会への分割付託となったが
さて、今回の予算は、2分野にまたがるため、2つの委員会に分割付託となった。これまでも議論してきたように、予算案の分割付託は、特に予算を修正する場合には、まことに厄介な問題をはらむ。歳入と歳出が分離して委員会に諮られるため、話はますます混乱する。
東京オリンピック・パラリンピック関連の補正予算案は、歳入歳出ともに総務系の委員会に付託。そして、修正を求める環境関連の出張は、歳出は環境系の委員会に付託。しかし、環境関連の出張の歳入部分は、総務系の委員会に付託されている。例えば、総務系の委員会では東京オリンピック・パラリンピック関連の海外出張には賛成であるが、歳入にはそれだけでなく、市長ら3人の欧州視察も含まれている。いったいそれぞれの委員会でどのような意思決定をすべきなのか。最も分かりやすい方法が、両委員会とも否決し、本会議でも否決することである。しかし、これでは東京オリンピック・パラリンピック関連の海外出張まで否決されてしまう。もちろん、予算修正案が諮られた場合、修正案を先に諮るので、結果が確定すれば、東京オリンピック・パラリンピック関連の海外出張予算は残して、修正が実現する。歳入は認めるが歳出は否決すれば、事実上、予算凍結となるのであるから、それでいいではないかという考えも提起された。それはそのとおりであるが、いくら修正案が先に諮られるとはいえ、日程では、まず、それぞれの委員会の委員長報告が行われる。その報告をどうするかも問題だ。さらには、歳入歳出一体の原則に反する。今から考えると、総務系の委員会と環境系の委員会の合同審査という方法もあった。ただし、合同審査の調整はさらに時間がかかる。会派間の様々な議論の結果、分割付託を言い出した会派から、やはり分割付託はとりやめた方がよいのではないかとの意見が出された。
普段であれば最終日の議案の委員会付託を主張するのは、我が会派である。なぜなら、最終日に提案された議案を委員会付託で審議するのはおかしいという会派に対抗して、原則は委員会付託であり、合意があれば全体審議とすることを確認した過去があるからだ。今回は珍しく我が会派は分割付託を主張しなかった。一番の理由は、予算案の分割付託となるからだ。様々な水面下の交渉を経て、分割付託をとりやめるために、改めて議会運営委員会を開催しようとなった。
そうなると問題となるのが、すでに質問順と質問者が確定していた全体審議の議案質疑の扱いである。議案を審議する委員会に所属する議員は、委員会で質問できることから、本会議での議案質疑にエントリーしていない可能性もある。議会運営委員会では、分割付託のとりやめと、新たな議案質疑の質疑者の確認と質問順位確定を行った。
とんだドタバタ劇ではあったが、ほとんどの会派が結論として修正案に賛成であったからスムーズに事が運んだ。これで、予算の修正を意図した場合には、分割付託はふさわしくないことと、当然ながら、予算案の分割付託はいかに不合理であるかを、改めて我が市の議員は学ぶことができた。議会の経験知は、こうして実際にコトを起こすことで高まっていくことが、ここでも証明された。
議案質疑を通じても減額修正の趨勢(すうせい)は変わらず
ようやく本会議場での議案質疑が開始された。質疑者は、委員会付託を省略したことで1人増え、9人が行った。
議論の焦点は、やはり市長らの欧州出張であった。市長が現地へ出向きながら、これから連携を行う訪問先の市長に会えないことが問題視された。また、同様の連携をすでに行った市では、いずれも市長の現地訪問はなかったことが明らかにされた。我が会派が問題視したのが、3日後に迫る出発日の問題である。当然、飛行機の予約は手配済みだという。もし、キャンセルが発生した場合、その負担はどうなるのか。正式な契約書は交わしていないとのことであったが、旅行契約は約款の了承をもって契約行為が発生することから、飛行機やホテルを予約した時点で、契約行為が発生している。予約した時点で、議会に認められていない予算執行を事実上行ったことにならないかとの指摘がなされた。執行部との議論は平行線をたどったが、議案質疑を通じて、賛成者が増えるという内容ではなかった。質疑を通じて、減額修正ではなく、議案そのものの否決でよいのではないかとの議論も噴出したが、減額修正を支持する議員もいたため、再議を阻むためにも、最大公約数が確保できる補正予算案の減額修正とすることとなった。
採決の結果は冒頭述べたとおり。その後、市長らは、私費での参加を決めて、欧州に旅立ったようだ。議案提出前には、担当部局へのヒアリングが行われるが、このヒアリングの場では職員から「相当スジが悪いですよね」との自嘲するような言葉も聞かれた。多くの関係者が市長の議案提出に対して、提出しないように試みた形跡も見られた。また、議案そのものの否決ではなく、減額修正とした点についても、議会は執行部から一定の評価がなされたようである。
今回の補正予算案の減額修正を経て、我が市議会においては、予算案の修正が議会として使えるツールのひとつとして認識されていることが明らかになった。また、修正案の起案から議会での扱いまで、執行部との合意がとれているため、スムーズに事が運んだ。これまでであれば、しぶしぶ賛成するしかなかったが、問題箇所は減額修正するという、現実的な対応ができる文化が醸成されてきたのは、やはりこれまで、可決、否決を問わず何度も予算修正に挑んできた成果であるといえよう。
一方で、課題もはっきりした。予算案の分割付託はやはり修正になじまない。我が市議会では当初予算のみ予算特別委員会での審議である。しかし、今回のようなドタバタ劇を演じないためにも、予算常任委員会が補正予算案についても審議する方法を選択することが大事である。皆様の議会でも、可決の見通しがなかったとしても、ぜひとも減額修正に挑んでいただきたい。