2018.05.25 住民参加
第5回 地域の担い手を育み、支え、増やす若者議会〜愛知県新城市〜
新庁舎建設をめぐって対立激化する新城市民
合併した新城市の大きな課題が、老朽化した市庁舎をどうするかであった。穂積市長は、合併特例債を活用して新庁舎を建設する計画を発表した。5階建てで、総事業費は約50億円とされた。これに対し、人口減少が進む中で「身の丈に合わない」と、反対する声が広がった。規模の大幅縮小を求める住民団体が結成され、3階建て、総事業費約30億円の代替案を提示した。こうして市を二分する議論となり、双方が激しく対立する事態となっていった。2013年11月の市長選が雌雄を決する舞台となった。一騎打ちとなり、911票差という僅差で穂積氏が3選を果たした。
だが、これで一件落着とはならなかった。規模の大幅縮小を求める住民団体が住民投票で白黒つけるべきと主張し、署名集めを開始した。わずか5日間で9,600人余りの署名が集まるなど、住民総数の3分の1以上の確保が確実な情勢となった。これに慌てた執行部寄りの議員たちが住民投票条例案を議会に提出し、可決成立させた。住民投票は彼らが主導する形となり、それに呼応するように市は現計画のままでは資材高騰などにより、総事業費が70億円に膨らむとし、計画見直しを表明した。
2度目の決戦となる住民投票は、2015年5月31日に行われた。5階建て50億円か、住民団体が主張していた3階建て30億円かといった分かりやすい選択肢ではなく、現計画を基本とする付替え道路ありの縮小か、付替え道路なしの大幅縮小か、二者択一となった。結果は、付替え道路なしの大幅縮小に賛成が1万2,899票。現計画を基本とする付替え道路ありの縮小に賛成は9,759票にとどまった。
穂積市長はこの住民投票の結果を受けて計画の見直しを発表し、新庁舎は4階建て、総事業費約40億円に縮小されることになった。
しかし、大幅な規模縮小を主張してきた住民団体は納得できず、市長リコールを目指す署名集めに乗り出した。2016年1月のことだ。だが、3度目の決戦には至らなかった。8,286人分の署名を集めたものの必要数に満たず失敗に終わったのである。こうした紆余(うよ)曲折を経て、やっと新庁舎建設が始まった。工事は順調に進み、2018年5月7日から4階建て新庁舎での業務が開始された。なお、議会などは新庁舎に移転せず、東庁舎などで業務を続けている。