2018.05.10 コンプライアンス
第7回 選挙事務所、どうしてますか?
イ ちょうちんの類
(ア)数
1個まで(143条10項、1項1号)。
(イ)大きさ
高さ85センチメートル×直径45センチメートル以内(143条10項、1項1号)。この大きさ内であれば形は問いません。
(ウ)記載事項
特に制限はありませんが、選挙事務所を示すためのものである以上、ポスター、立札、看板に準じて考えればよいでしょう。
(エ)掲示の場所
これについても、ポスター、立札、看板と同様、選挙事務所があるその場所に掲示する必要があります。
(オ)その他
ちょうちんの「類」とありますが、行灯(あんどん)がその例になります。実際はあまり使われていないと思いますが、行灯であっても上記(イ)の大きさの制限がありますので注意してください。
(2)選挙事務所で行うことができること、できないこと
ア できること
(ア)選挙運動のための諸活動
選挙事務所は前述のとおり、選挙運動の司令塔的な場所であり、選挙運動計画立案やそのための事務作業を行うことができます。
(イ)選挙運動
選挙事務所内で演説を行ったり、投票を依頼する電話をかけるなどの選挙運動そのものを行うことができます。なお、選挙事務所内での演説は夜8時を過ぎてもできますが、選挙事務所からあえて外に向かって演説するような場合は、164条の6第1項の脱法行為として許されません(連載第3回〔2017年11月10日号〕記事参照)。
(ウ)選挙運動用ポスターの掲示(条件あり)
選挙運動における文書図画の掲示は公選法が厳格に規制しており(143条1項)、選挙運動用ポスターについても同様です。ただし、市町村長選挙及び地方議会議員選挙においては、144条の2第8項によるポスター掲示場が設けられていない場合には、選挙事務所の内外に選挙運動用ポスターを掲示することができます(145条参照)。
(エ)選挙運動用ビラの頒布(知事選挙・市町村長選挙のみ)
知事選挙・市町村長選挙では、選挙事務所において選挙運動用ビラを頒布することができます(142条6項、令109条の6第3号)。なお、平成29年の公選法改正により、都道府県及び市議会議員選挙でも平成31年3月1日以降に告示される選挙からビラを頒布できるようになる予定です。
イ できないこと
(ア)飲食物の提供
選挙事務所の性質からすれば、そこで行われる飲食物の提供は「選挙運動に関し」て行われるものといえますので、選挙事務所にやってくる支援者・訪問者や選挙事務所内にいる選挙運動員などに対して飲食物を提供することはできません(139条)。
もっとも、「湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子」(同条本文かっこ書)や法定の条件に従って選挙運動員及び労務者に対する食事や弁当を選挙事務所で提供すること(同条ただし書)は例外として認められます。
(イ)選挙運動用ポスターの掲示(条件あり)
知事選挙及び144条の2第8項でポスター掲示場が設置されている市町村長選挙・地方議会議員選挙では、選挙運動用ポスターは定められた公営掲示場にしか掲示できませんので、選挙事務所の内外に貼ることはできません。
(ウ)認められた選挙運動用文書以外の頒布や掲示
上記ア(エ)で述べた選挙運動用ビラ以外について公選法は、選挙運動のために使用する文書の頒布を認めていません(142条1項、146条)。候補者の当選に向けた選挙事務を行う選挙事務所において、後援会報や広報紙といった候補者の氏名が記載された文書を頒布することは、通常、投票を得る目的で行われるものとみられますので、頒布することはできません。また、事務所内に掲示することも同様です(143条、146条)。
解説3 休憩所等の設置の禁止
選挙事務所それ自体ではありませんが、関係する規制として、選挙運動のための休憩所等の設置禁止があります(133条)。
「等」というのは、休憩所に類似して休憩ないし休息をとるために設けられた設備場所のことで、名称ではなく機能の点から判断されます。
選挙事務所の中に候補者や運動員の休憩場所を設けることもよくありますが、これは選挙事務所の機能として当然有しているものですので、公選法が規制する「休憩所等」には当たりません。ただし、この休憩場所を一般の有権者に開放して使わせるなどした場合は、選挙事務所としての機能と関係なく選挙運動のため一般向けに休憩所を設置したものとして違法となると考えられます。
また、ある候補者から見て他の候補者の選挙事務所は自分の選挙事務所ではないため、他の候補者の選挙事務所を休憩所として使わせてもらうことは、本規制に違反することになります。