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2018.05.10 コンプライアンス

第7回 選挙事務所、どうしてますか?

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解説2 選挙事務所についての公選法の規制
 公選法は、選挙事務所について規定を置いています。設置に関するものと選挙事務所においてできること、できないことに分けて見ていきましょう。

1 選挙事務所の設置に関する公選法の規制
(1)設置の準備
 選挙事務所の定義からすれば、選挙事務所の設置に向けた物件の借入交渉や後述のような選挙事務所を示す看板の作成を依頼したりすることは、特定の候補者の特定の選挙での当選に向けた活動であって、選挙の告示前に行うことは事前運動(129条)に当たるとも思えます。
 しかし、これらの行為は内部的な準備行為にとどまるもので、有権者に対して投票を働きかけるものではないこと、不正行為や選挙運動費用の増加防止といった事前運動禁止の趣旨に反するものではないことから、講学上、「選挙運動の準備行為」であり事前運動として扱われません。実際上も、選挙の告示まで事務所の設置ができず看板なども作成できないとなれば、選挙運動がほとんどできない結果となってしまい、不都合が生じます。

(2)場所
 選挙運動期間中の選挙事務所の設置場所について、公選法は制限を設けていません。したがって、選挙区域外(国政選挙における候補者届出政党や名簿届出政党の場合を除く(131条1項))や人里離れた山の中、動かない車両の中に設置することも可能です。ただ、選挙事務所は選挙事務の司令塔であるとともに、有権者へのアピール手段でもありますので、わざわざそのようなところに設置する意味はないと思われます。
 他方、選挙当日については、公選法は選挙事務所が投票所入口から直線距離で300メートル以上離れていない場合は設置することができないと規定しています(132条)。
 この投票所入口から直線距離で「300メートル」というのは、投票所の建物そのものではなく、敷地の入口を指します。ですから、投票所の建物の敷地を把握し、その入口(複数あれば全て)から300メートル離れているかどうかを確認しておきましょう。
 では、計算ミスで投票日直前にこの距離制限にひっかかってしまったことが判明した場合はどうするのでしょうか。
 その場合は、選挙運動最終日(投票日前日)、日付が変わる前に大急ぎで事務所を片付けて閉鎖してしまうことになります。
 選挙事務所の看板に白布を掛けて隠すか撤去し、ポスターを剥がし、机や電話などを片付けて、「事務を取り扱う」ことをできないようにして、所管の選挙管理委員会に選挙事務所の閉鎖を届ければ、その場所は「元」選挙事務所です。とはいえ、選挙運動最終日に全て片付けるのは、激戦の疲れもあって実際には大変です。

(3)広さ
 選挙事務所の広さについては、公選法に規定はありません。ですから、広大な事務所でもワンルームの事務所でも構いません。
 読者の皆様には釈迦(しゃか)に説法かもしれませんが、実際には借入費用と管理のしやすさなどを考えて適度な広さを選ぶべきだと思います。
 選挙時には思いの外たくさんの荷物や資材がありますし、選挙運動員や労務者、支援者など人の出入りもあります。また、個人情報やお金を扱うところでもあるので、セキュリティにも配慮しておく必要があります。
 選挙に勝っても不祥事で……とならないよう、司令塔である選挙事務所はしっかりと良い物件を選びましょう。

(4)数
 選挙事務所の数は、131条、公職選挙法施行令(以下「令」といいます)109条が選挙の種類に応じて定めていますが、原則として候補者1人につき「1箇所」です。
 例外となるのは、衆議院議員小選挙区選挙、参議院議員選挙区選挙と都道府県知事選挙において政令が定める交通困難等状況にある区域(131条1項、令109条、別表第三)です。地方議会議員及び市区町村長選挙については、そもそも例外の適用がありませんから、「1箇所しか設置できない」との認識でよいかと思います。

(5)形態
 選挙事務所設置の形態についても、公選法は規制をしていません。そのため、2人以上の候補者が共同で選挙事務所を開設することもできます。
 ただし、事務所費用の分担については注意が必要です。というのも、事務所費用を一方の候補者が全額負担すれば、他方候補者は無償で選挙事務所を開設できたことになるため、負担した候補者からの寄附(179条2項)となり、選挙区域が同じであれば選挙区域内の者に対する寄附となり、違法となる可能性もあります(199条の2第1項)。使用する広さ・時間等に応じた按分負担とするのが合理的だと思います。
 また、共同での選挙事務所の場合は、個人情報や機密情報の管理もシビアにすべきです。管理を誤ると支援者や有権者の信頼を失いかねません。

(6)移転
 選挙事務所の移転(条文では「移動」)は可能ですが、1日につき1回限りとなっています(131条2項)。今ある選挙事務所を閉鎖して別の選挙事務所を設置することも、実態としては移動と同じですので、同様の規制に服します。
 つまり、同時期に複数の選挙事務所が存在しないようにすれば、毎日1回だけ移転させることができます。
 なお、選挙事務所を移転したり、廃止した場合は届出が必要です(130条2項)。

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