2018.04.25 住民参加
第4回 議会会派が無作為抽出型の住民協議会を実施~神奈川県伊勢原市~
地方自治ジャーナリスト 相川俊英
門前町として栄えたまちの寂れた玄関口
古くから霊山として関東一円の人々に信仰され、親しまれてきたのが、神奈川県にある標高約1,252メートルの大山だ。山頂に紀元前97年頃に創建されたという大山阿夫利神社が鎮座し、中腹には関東三大不動の1つである大山寺が建っている。この大山を参拝することが江戸時代末期から庶民の間で一大ブームとなった。信仰と行楽を兼ねた夢のようなイベントとして広がり、大山登山の様子を描写した落語「大山詣」が生まれたほどだ。大山信仰は今なお根強く、その門前町として栄えたのが神奈川県伊勢原市である。
新宿から電車で1時間ほどの距離にある伊勢原市は、温暖な気候と豊かな自然環境を誇る。人口は10万2,416人(2018年4月1日現在)で、人口減少が急速に進む日本社会にありながら微増傾向となっている。しかし、まちの雰囲気は活気に満ちあふれたものとは言い難く、いたってのんびりとしている。換言すれば、どうにも地味で目立たぬ地方都市なのだ。そもそも大山の存在を知らないという人はそういないだろうが、その大山が伊勢原市にあることを認識している人は少ないのではないか。もちろん地元の人は別だが……。
4月8日の日曜日。取材のため伊勢原市を目指して小田急電鉄小田原線の急行電車に乗った。電車が「大山詣」の玄関口である伊勢原駅に到着し、大山登山とおぼしき年配のグループらと下車。ともに駅北口へ出た。そのまま大山行きのバス停前に行列をつくる一行をよそに、こちらは1人で伊勢原駅北口周辺を歩いて見て回った。
駅前ロータリーは狭く、奥行きもなかった。そこから道幅の狭い4つの道が放射し、バス停前には大きな鳥居が立っていた。その奥に商店街らしきものが続いていたが、周辺に土産物屋や食堂といったものは見当たらない。喫茶店が目に入ったが、日曜日だからか閉店していた。駅前にもかかわらず、店舗や事業所よりも更地や空き家の方が目につくのだった。率直にいうと、「これが人口10万人のまちの中心駅なのか」と思ってしまった。そこはかとなく寂れ感が漂い、まるで駅前の時の流れだけが停止してしまっているかのように感じられるのだ。
駅の乗降客(とりわけ大山詣の観光客)は、駅前に滞留することなく、バスや車、タクシーに乗り込んでさっと姿を消していった。実は、こうした伊勢原駅北口周辺をどうするかが、伊勢原市の長年の懸案事項となっている。