地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2018.04.10 広報広聴

第37回 議会報告会を「協議等の場」に加えるべきか?

LINEで送る

議会事務局実務研究会 吉田利宏

お悩み(加えろといわれてもさん 50代 市議会事務局課長)
 初めてお尋ねします。市議会では6年前に議会基本条例を定めました。議会基本条例では、政策検討会、議会報告会を定めています。会議規則の「協議等の場」には、現在、全員協議会、正副委員長会議だけが規定されています。政策検討会や議会報告会については規定がないわけですが、一部の会派より「条例で定めているのだから、会議規則でも定めるべきだ」との意見が出ています。特に議会報告会は、「住民との関係を重要視していないメッセージを送ることになるので、明らかなミスだ」と厳しく批判されています。他の会派は特段異論がないようなのですが、議会基本条例で定めているからといって会議規則上の協議等の場に規定すべきなのか、そこのところが少し分かりません。整備の方針などをご教示ください。

回答案
A 議会基本条例に規定されている「場」はすべて協議等の場として会議規則に規定しなければならない。
B 議会報告会は、住民の意見を聴く機会であり、議会活動ではないため、会議規則上、規定することはできない。
C 本会議や委員会などの法定の議会活動の場との密接なつながりがあるなら、議会報告会を協議等の場として規定することはできなくはない。

お悩みへのアプローチ

 「思う存分やりなさい」。上司からそう励まされて頑張ったところが、「やりすぎだ!」としかられたということがあるかもしれません。「無礼講、本気にするのは無礼者」なんて川柳もありましたっけ……。いわゆる「協議等の場」を会議規則に加える改正が行われたのは、平成20年に成立した「地方自治法の一部を改正する法律」によってです。衆議院総務委員会の委員長提出法案でした。参議院での趣旨説明によると、その改正の趣旨は「議会活動の範囲を明確化する等」とされています。なるほど、地方自治法には本会議、委員会といった議会活動の場が規定されていますが、実際の議会活動の場はこれにとどまりません。おそらく、「全員協議会」はどこの議会でも行われているでしょう。「各派代表者会議」、「正副委員長会議」などの場を持つ議会も多いことでしょう。政策などを議論する場としての「政策検討会」、議員と住民が意見交換する「議会報告会」や「一般会議」などが議会基本条例に規定されている議会もあることでしょう。
 正式な議会活動となれば、活動期間中のけがなども公務災害補償制度の対象となります。また、費用弁償の対象として協議等の場への出席を加えることになります。議員にとっては、現在の事実上の議会活動について、法的な環境を整備するという意味があります。また、住民からすれば「非公式な議会活動」として実体の見えにくい議会活動を会議規則に規定することで明確化される意味があります。

◯地方自治法
第100条 ①〜⑪ 略
⑫ 議会は、会議規則の定めるところにより、議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行うための場を設けることができる。
⑬〜⑳ 略

回答へのアプローチ

 「議会活動の明確化」が法改正の趣旨ならば、「議会として行っている活動はできるだけ会議規則に規定するのがいいのではないか」と思うかもしれません。そこは、一筋縄ではいかないのです。平成20年改正は三議長会からの要望を受けて実現したものですが、全国都道府県議会議長会と全国市議会議長会の要望は、地方自治法に「議会の議員は、議会の権能と責務を認識し、その議会の会議に出席し議案の審議等を行うほか、当該普通地方公共団体の事務に関する調査研究及び住民意思の把握等のための諸活動を行い、その職務の遂行に努めなければならない」旨の規定を求めるものでした(1)
 「議会活動の明確化」という意味では同じであるものの、改正の内容は、要望とはかなり異なるものです。地方自治法に直接、三議長会の要望事項が規定されたわけではなく、地方自治法100条12項の規定が加えられました。会議規則というのは、簡単にいえば議会の運営に関するルールです。会議規則で規定して明確化するというのは、本会議や委員会での審査や審議などに欠かせない議会運営上の場として、明らかにするという意味を持ちます。三議長会の明確化の範囲と、改正内容での明確化の範囲は図のようなズレがあります。回答案のうちではCをとりたいと思います。

図 議会活動の場図 議会活動の場

 「思う存分やれ」と上司がいっても、アロワンスの範囲を超えると「やりすぎだ!」としかられます。議会活動の明確化を額面どおり受け取って、すべての場を会議規則に規定すると、「それはやりすぎだろ!」ということになるかもしれません。
 事実、法改正を受けて三議長会は標準会議規則を改めていますが、具体的な協議等の場を定めているのは、全国町村議会議長会のみで、それも全員協議会だけとなっています(2)
 議会報告会は、議会が住民の意見を聴くことを中心とする場です。例えば、「決算の審議の前に必ず議会報告会を行って審議のポイントを絞る」というように、議会報告会を本会議や委員会での審査・審議につながる必須の手続として位置付けたときには、会議規則で協議等の場として加えることもあるだろうと思います。ただ、中心となる議会活動からすれば、やや遠い気がします。間違ってほしくないのは、会議規則に規定するかどうかと、重要な場かどうかは別問題だということです。今や議会として住民との意見交換は必須です。「政策サイクルを回す」ためには、住民の意見が議会審議の出発点となります。会議規則で位置付けにくくとも、議会基本条例でキッチリと位置付けた上で、効果的に運用すべきであると思います。

この記事の著者

議員 NAVI

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る