2018.03.26 議会事務局
第34回 議長の決め方
議長は立候補できないと聞いているのですが?

自治法118条1項において、議会で行う選挙において準用する公職選挙法の規定が挙げられていますが、立候補に関する規定は挙げられていません。そのため「議長選挙において立候補という制度はない」と理解している方は少なくありません。
しかし、「立候補してはいけない」とはどこにも書かれていません。議員という限定的な集団の中から選出するので、立候補についてわざわざ規定する必要がないと解するべきです。「立候補しなくてはいけない」ともありませんので、立候補していない議員に投票して選出することも法的には可能です。実際に宮崎市議会では、正副議長立候補制を導入しているにもかかわらず、立候補していない議員が議長に選出されるという事態が起きました。しかし、立候補制を導入したということは、選出過程を透明化したいという議会の意思であり、議会として合意を得たものと思います。この結果は議会で決めたルールを自ら破ったものであり、批判が出るのは致し方ないものと思います。
議長を辞めさせるには?

ほとんどの議会では最大会派あるいは与党会派から議長を選出しており、議長に対する不満が表面化することはありません。しかし、様々な理由により、議長の交代を求める声が多数となる場合があります。そうなった場合よく耳にするのが「議長不信任決議案」の提出ですが、ご存じのとおり決議とは議会としての意思表明であり、法的な拘束力はありません。そのため、決議が可決されても議長はこれに従う義務はなく、そのまま継続して議長職に就いていることもよくあります。
つまり、議長職は本人が辞職する以外に辞めさせる手段はなく、どうしても辞めさせたい場合は議会として除名処分をするか、有権者の署名を集めて解職するなどして、議員職を失わせる以外に方法はありません。これは副議長も同様です。
しかし、議長を辞めさせたいがために議員の身分を除名により剥奪してしまうことは、議会の裁量権の範囲を超えたものとして知事の審決などにより除名処分が取り消される可能性があります。そのため、多くの場合、不信任決議のほかに辞職勧告決議なども出しながら並行して本人が辞職するよう説得します。また、議会の招集に応じないという強硬手段をとり、議長に辞職を迫る方法もありますが、市民の反発を招くおそれもあるので注意が必要です。
いかがでしたか? 議長になりたい議員が立候補し、所信表明を行う議会が急速に増えてきました。実際の内実はともあれ、市民に見える形で議長が選出されることは意義があることと思います。議長、副議長の候補が1人ずつしかいない議会は、複数の立候補者が出て所信表明で争うことができるようになると、さらに議会が抱える課題が浮き彫りになるのではないでしょうか。議長の実務については議員NAVI 2017年7月25日号で取り上げていますので、そちらも併せてご覧いただけたら幸いです。さて、次回は議会のスケジュールについて取り上げます。