2018.03.12 コンプライアンス
第5回 楽しいイベント、うっかり違反にご注意を(その1:一般イベント編)
検討
それでは、以上を踏まえて各設問の帰結と理由を検討してみましょう。
Q1について
会費制だったとしても、招待として会費の支払が免除されており、支払の義務がないことになります。そのため、「寸志」は会費相当額であったとしても対価性のない金銭の供与であり、寄附に当たります。
そして、地元の団体に対して公職者等本人が寄附をしているのですから、禁止された寄附(199条の2第1項)として違反となります。
Q2について
解説で述べたとおり、神社側が事前に用意したものを参拝客に振る舞うだけであれば、神社のものを代わりに投げているだけで、公職者等が物品を供与していることにはなりません。これに対し、公職者等が神社から豆を買ってまいたのであれば、選挙区域内の者に対する寄附となります。
Q3について
会費は定められた費用の支払ですから、債務の履行にすぎず、寄附には当たりません。したがって、家族のみならず本人名で支払うことも問題ありません。
他方、清酒の差し入れは対価性なく物品を供与しているため、公職者等が自分の名義で差し入れれば典型的な寄附に当たります。ただし、本設問の場合は本人ではなく家族の名義です。解説で述べたとおり、家族の負担で家族の名義での差し入れであれば問題ないと考えられますが、実質的負担が公職者等本人であるなど形だけ家族の名前を使ったような場合や、本人の寄附と見うる形(「○○家」)などといった場合は、公選法違反となるおそれがあります。
Q4について
話を向けられたとはいえ、「次の選挙」に関して立候補の意向や抱負を語ることは、話をした時期や内容・態様によっては雑談といえども公選法で禁止される事前運動とみなされる可能性があります。もっとも、自身の政策や見解を述べるのであれば、単なる政治活動であって問題はありません。
Q5について
解説で述べたように、公職者等個人が現金の寄附を受けることは、選挙活動に関するものを除いて禁止されます。本設問の場合、「この町の発展のため活動費」として渡されており、政治活動に関してのものと考えられますので、公職者等が個人の立場で現金を受け取ることはできません。一方で、政党支部や政治団体に対する寄附は現金でもすることが可能であり、政党支部や政治団体に対する寄附と見ることができるのであれば、その立場で受け取ることはできると考えられます。
Q6について
献灯料は灯明を供えるための費用ですから、通常は対価を伴わず神社に対する寄附となります。しかし、献灯料を神社の祈禱に対する対価として納める場合は、祈禱という労務に対する対価としての意味を持つため、寄附とはならないと考えられます。
そこで、献灯料がそのような対価性を持つかどうかが問題になりますが、祭礼に招待され、もともと何ら会費等が求められていなかった場合には、献灯料を納めるかどうかは任意とされているため祭礼に対する対価性がなく、設問の場合は寄附に当たると考えられます。
まとめ
今回は、イベントのうち「一般イベント」についてまとめてみました。
地元密着のイベントなどでは招待という形で費用が発生せず、かえっておもてなしを受けることの方が一般的です。地域の文化を感じ、有権者とも触れ合えるとあって、ついつい気持ちも大きくなりがちですが、公選法は厳格に、そしてシビアに見ています。
また、一般のイベントでは支援者とは反対の考え方を持つ方も当然参加して皆さんの行動を見ています。自信を持って堂々と振る舞い、ささいなことでケチをつけられることのないよう法律の知識を持っておくことは、大きなアドバンテージになると思います。
次回は、後援会総会や旅行会など「身内のイベント」について解説します。