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2018.03.12 予算・決算

第2回 修正案作成だけで油断は大敵!

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 議会も一時はこの論理に押し切られ、表決結果を受けて市長は、次のように述べている。
「先ほど、議案に対する修正案が可決されました。ただし、その後、修正案を除く原案について可否を諮られましたことにより、執行部としては何と解釈してよいか不明の点がございます。いずれにいたしましても、修正案には本市の義務に属する経費が削除されておりますことから、地方自治法第176条第1項の規定により、再議に付さねばならないことになっております。それに対応するため、本日の会議は散会せず、少々お時間を賜りますよう議長をしてよろしくお願いいたします」。そして休憩後、「確認した結果、再議の申出をする必要はないことが分かりましたので了解をいたしました」となった。
 その後、結論からいえば執行部側も解釈を改め、議決結果は修正案が確定となり、市長は再議書を提出することになった。この市長の発言からも分かるように、「修正案を除く原案について可否を諮った」ことで、修正していない原案を改めて諮り、それに賛成したのだから、原案賛成であるとの立場に立ったという執行部側の見解が表れている。
 こうした解釈の相違によって混乱が生じた要因は、修正案をネガティブリスト形式で作成したことに尽きる。もし、ポジティブリスト形式による修正案であれば、このような解釈の相違は生じなかったであろう。そのため、修正案はポジティブリスト形式で作成すること、また、修正案を諮る前に開催される議会運営委員会では、それぞれの表決の持つ意味を確認することが重要であることを、改めて強調したい。
 ではなぜ、執行部側の解釈を改めさせることが可能であったかについても、ここで述べておこう。まずは、修正案の諮り方はともあれ、本来の議会の意思がどこにあったかということが最も重要であるということだ。議会の団体意思がまず尊重されるべきというのが、まさに会議原則である。仮に、執行部側の解釈の立場に立ったとして、そもそもネガティブリスト形式による修正案が可決した時点で、修正部分とそれ以外の部分の原案は可決しており、一事不再議の原則に立てば、その後の議決は瑕疵ある議決という解釈も成り立つ。また、10年前には同じ諮り方、同じネガティブリスト形式による修正案で、修正案が問題なく成立していた。もし、今回の執行部側の解釈をとるなら、10年前の修正案の解釈が誤りということになる。
 ネガティブリスト形式による修正案を諮った三重県松阪市も、同様の諮り方で修正案が成立している。そして、議会に提出した時点では気がつかなかったが、10年前とは違い、筆者が平成29年3月定例会に提出した修正案は、ネガティブリスト形式としては不完全であり、全ての予算書の頁を含んでおらず、修正該当箇所の頁しか含まれていなかった。つまり、修正案を可決した時点で、修正箇所が記載された頁以外は含んでいなかったのである。
 以上、長々と説明してきたが、修正案が完成したとしても、その諮り方、表決の持つ意味を、議員も執行部もきちんと確認していくことが、無用な混乱を避ける意味でも重要であるということである。
 したがって、修正案はポジティブリスト形式で作成し、「町村議会の運営に関する基準」にあるように、修正部分を諮り、その後、修正部分以外を諮ることである。もし、どうしても全ての予算案の頁を含むネガティブリスト形式の修正案で提案するのであれば、修正案の採決は修正部分以外の採決も同時に含まれていると理解すること、また、この方式では、修正部分以外の反対は不可能であることに留意していただきたい。修正案が複数あった場合の諮り方や再議の仕組みについても取り上げたかったが、この点は次回以降に譲りたいと思う。


■参考文献
◇香川県坂出市議会ホームページ
◇全国町村議会議長会ホームページ

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