2018.02.26 議会図書室
第20回 政務活動費・議会図書室の充実(下)
4 もう一歩の先に:議会図書室の充実
(1)議会図書室の現状
住民自治を進めるために、本連載ではこれまで議員報酬・定数、議会事務局、政活費の役割について確認してきた。もうひとつ重要な議会図書室の現状と課題を考えたい。まず、現状の確認から出発しよう。
① 規模による大きな相違
議会図書室は、法律上、設置が義務付けられているために、公式上「設置」されている。とはいえ、物置となっていたり、応接室と併用されていたりするなど、本来の議会図書室の意味をなしていない自治体も多い。都道府県、政令市、県庁所在市、いわば大規模な自治体の議会図書室は次のようになっている(5)。
議会図書室の平均職員数は都道府県3.8人、政令市3.6人、県庁所在市2.6人(うち専任1.5人、0.6人、0.1人、うち兼務2.3人、3.0人、2.6人)、司書の配置は都道府県0.9人、政令市0.6人、県庁所在市0.0人、となっている。なお、専任の職員を置いているのは、都道府県では39議会(83%)、司書を置いているのは34議会(72%)である。政令市では専任の職員、司書とも置いているのは10議会と半分である。県庁所在市では専任の職員を置いているのは2議会(和歌山市と宮崎市)であり、ほかは「無人の『倉庫』の状態」である。すでに指摘したように、それよりも規模が小さい自治体の議会図書室は、公式には設置されていることになっているとしても、その機能を果たしていないものも多い。そもそも、議会事務局職員が平均2.4人(全国町村議会)では、充実した議会図書室を望んでも、現時点では現実的ではない。
② 議員のためだけではない議会図書室
地方自治法上、「一般」の人の利用も可能とすることができる(自治法100⑳)。都道府県議会の場合、カウントをしていない議会もあるが、おおむね「一般」の人(事務局職員、執行部職員を含めて)も閲覧を行っている。驚くことに、政令市、都道府県庁所在地では、「一般」の人が閲覧できない議会もある(6)。「一般」の人への貸出しは、都道府県議会の場合、ほとんど不可であるが、4府県のみ可能である(山形県、群馬県、京都府、島根県)。調査依頼が議員以外でも可能な都府県もある。議会事務局職員(東京都、高知県、愛知県など)や執行部職員(三重県、愛知県、富山県など)である。
「一般」の人の閲覧・貸出し・調査依頼も制度化すべきであるし、その周知が必要である。千代田区議会では、「ちよだ区議会だより」に「区議会図書室の図書も閲覧できます」という記事を掲載している(例えば、2015年8月19日付)。
とはいえ、そもそも議会図書室と呼べない議会も町村議会を中心に多い。議員も活用できない議会図書室では意味をなさない。早急な整備が必要である。
〔参考〕地方自治法100条
⑰ 政府は、都道府県の議会に官報及び政府の刊行物を、市町村の議会に官報及び市町村に特に関係があると認める政府の刊行物を送付しなければならない。
⑱ 都道府県は、当該都道府県の区域内の市町村の議会及び他の都道府県の議会に、公報及び適当と認める刊行物を送付しなければならない。
⑲ 議会は、議員の調査研究に資するため、図書室を附置し前二項の規定により送付を受けた官報、公報及び刊行物を保管して置かなければならない。
⑳ 前項の図書室は、一般にこれを利用させることができる。