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2018.02.26 予算・決算

第1回 予算修正は議会改革の一里塚

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歳入部分の修正の判断が難しい

 前記2つの形式によらず、支出の修正項目だけを記載した予算組み替え動議を提出するという方法もしばしば用いられる。
 組み替え動議が賛成多数で可決したとしても、動議そのものに拘束力はないので、首長は従う義務はないが、もし首長が何らかの対応をしなければ、予算そのものが否決される可能性がある。そうした事態を避けるためにも、執行部が歳入部分の修正も含めて、予算案再提出の形で修正して提出することもあるようだ。筆者も平成27年3月に、予算常任委員会に組み替え動議を提出したことがある。結果的には否決されたが、予算修正案に比べてはるかに少ない手間ですんだ(図3参照。同図は、筆者が作成した組み替え動議を一部修正したもの)。

図3図3

 この手法は、該当する款項部分も明示しないので、予算修正動議ではなく、予算再提出を求める動議に性質が近い。
 歳入の修正を欠いた予算修正案は、地方自治法210条の総計予算主義の原則からも、若干疑問が残る。しかし、こうした形式をとりたくなる理由も分からないではない。増額、あるいは減額の場合でも、歳出部分の修正は容易であるが、歳入部分の修正となると、先ほども述べたように、どこの部分を修正すべきか判断が難しいからだ。
 繰入先として適切な款が予算案になければ、新たに款を立てればよいではないかという考えもある。しかし、新たな款を議員側から提案することは、特に増額修正の場合、首長の予算編成権を侵犯することになるという解釈もあるようだ。その難点を避ける意味でも、この歳入修正部分を明示しない方式は、便利である。
 組み替え動議による予算修正は、首長側が、組み替え動議の可決を受けて予算案を再提出する度量がないと成り立たない。款項への歳入の繰入れ若しくは繰出しについての該当箇所の明示がない以上、再提出された予算案が、議会の意図した内容と違ったものとなる場合も考えられる。そうなれば、さらに混乱が深まる。千葉市議会では、平成22年度当初予算に対して、2会派から組み替え動議が、1会派から修正案が提出された。いずれも否決。当初予算も否決された。結局、組み替え動議から正式な予算修正案に切り替えて3会派が提出。この案が可決されることとなったという。組み替え動議は、提出しやすいというメリットがある反面、千葉市議会のような状況を招く可能性もある。
 組み替え動議の事例は、予算修正に比べて件数も多いようである。いくつか調べてみたが、修正というより、予算案に対する反対意見に相当する内容が過半を占めるものもあった。少数会派のパフォーマンスとして利用されている例もあるようだ。やはり、執行部に対抗して責任を持って予算の修正をもくろむ以上は、組み替え動議によるのではなく、予算修正案の提出に取り組んでいく必要があるだろう。そうしないと、本当の意味での議会力は高まっていかない。


〔参考資料〕
◇千葉市長・熊谷俊人blog 「平成22年度予算は3会派による修正のうえ成立」平成22(2010)年3月20日(http://kumagai-chiba.seesaa.net/article/144124923.html

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