2018.02.26 選挙
選挙制度の選択制――『地方議会・議員に関する研究会報告書』について(その5)――
選択制のイメージ
『報告書』のこれまでの議論からも明らかなように、市区町村議会の選挙制度の場合は、団体規模で仕分けているようである。端的には、大規模団体は比例代表制が望ましいということである。人口規模で線引きをするか、あるいは、大都市(政令指定都市と特別区)は比例代表制ということである。これらの大規模・大都市団体の場合には、選択制というより、一律で比例代表制を強制することを念頭に置いているようである。その反射として、それ以外の団体は、案1(=比例代表制)・案2(=制限連記制)・案3(=選挙区設置)の選択制ということになる。
都道府県の場合には、一律の比例代表選挙を『報告書』は推奨する。ただし、比例代表選挙制度という原則の枠内で、A案(並立制)・B案(併用制)・C案(選挙区制)の選択制という余地があるという。
『報告書』は、端的にいえば、都道府県・政令指定都市・特別区という大規模・大都市団体に比例代表制を一律導入し、それ以外の団体には選択制を認めるという発想である。都道府県・政令指定都市に一律制度を導入するのは、時々見られる現象である。例えば、保健所・児童相談所の設置とか、外部監査の導入などである。また、これに加えて、特別区まで同じ制度になっていることもある。人事委員会の設置などはその事例である。それ以外の団体は、任意で採用できるという形にする。その意味では、取り立てて特異な選択制というものではない。むしろ、実態は大規模・大都市団体への一律導入(義務付け)と、それ以外の団体への任意導入という意味での「選択制」である。
おわりに
以上のように、『報告書』は、実質的に選挙制度工学に基づく選挙制度設計論に終始している。これによって、低投票率・無投票や議員の担い手不足が解消されるとは、とても思えない。そこで、『報告書』でも、最後になって、「立候補を促進する環境整備」についても論じている。具体的には、供託金制度、被選挙権年齢、公務員の立候補制限、議員在職中の立候補制限、議員の兼職・兼業などが、簡単に論じられている。しかし、必ずしも議論は深められていないのである。