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2018.02.26 住民参加

第2回 担い手を生み出す秘策は無作為抽出~福岡県大刀洗町~

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【インタビュー1】

安丸国勝・大刀洗町長に聞く

 全国初の無作為抽出型住民協議会は、この人物の決断によって実現した。3期目の安丸国勝町長は1944年生まれで現在、73歳。前例踏襲や横並びといった行政の悪しき習性に染まらぬ民間出身のリーダー、大刀洗町の安丸町長に話を伺った。

安丸国勝・大刀洗町長安丸国勝・大刀洗町長

──安丸さんは民間企業の経営者出身で、2008年に大刀洗町の町長になりました。1999年と2000年の町長選に立候補し、いずれも敗退しています。
 そうです。大刀洗町は2004年に住民投票を行い、市町村合併せずに単独で行くことになりました。しかし、町の財政状況は良くなく、私が町長になるまでは毎年4億円から5億円の赤字を出していて、基金を取り崩して赤字分を補塡していたのです。それでも職員は赤字を出しているとの意識を持っておらず、「大丈夫」という感覚でした。何も手を打たなかったら、基金は数年でなくなってしまうのにです。当時の総務課長は「軟着陸させるので」と意味の分からないことを言っていましたね。

──公務員と民間人の感覚は違います。
 そうです。町の職員はおそらく、私が町長になることを一番嫌がっていたと思います。当初はなかなか職員に受け入れられませんでした。私は役所も民間の発想を取り入れないとだめだと思い、職員を東京財団の研修に送り込みました。その職員が大刀洗町でも事業仕分けを実施しようと提案しまして、やってみようとなったのです。抵抗や反対はそうなかったですね。

──事業仕分けの判定人12人は住民から無作為抽出し、仕分け人は構想日本のスタッフと町長が選任した住民がそれぞれ2人ずつでした。
 なぜだか理由はよく分かりませんが、たくさんの住民が傍聴に来てくれました。しかし事業仕分けを4回やったら、町に仕分けるものがなくなってしまいました。そこで構想日本の加藤秀樹代表とお酒を飲みながらいろいろお話ししまして、住民協議会をやることにしました。

──無作為で抽出した住民の中から委員を選任する住民協議会の開催は全国で初めてです。不安はありませんでしたか。
 ありませんでした。やってみてだめだったらやめればよいと思っていましたから。それに事業仕分けであれだけたくさんの傍聴者が来てくれましたからね。

──議会から反対の声は出ませんでしたか。
 議員は、本心では(住民協議会を)快く思っていないのではと思います。本当は嫌だと。中には「無作為抽出で選ばれた住民は行政とのつながりを持っていない人たち。そういう人たちが行政にあれこれ注文を出すのはおかしい」と発言した議員もいました。でも、議員みんなが「反対だ」とはなりませんでした。

──住民協議会を町長の附属機関とする条例を真っ先に制定しました(2013年12月)。
 さっと条例化しました。私はやろうと思ったら、すぐやるタイプなんです。皆さんが気づかないうちにね。これは冗談です。議会はもっと反対するかと思いましたが、全会一致で可決されました。住民協議会は議論を重ね、住民たちの意見を聞くことが主目的だと議員に説明しました。議員たちは(ものごとを住民協議会に)決められることを嫌がっていました。決めるのは自分たちだとの意識が強いです。

──住民協議会は試行も含めるとすでに5か年度にわたって実施されています。
 議員も住民協議会を傍聴していまして、参考になっているはずです。議会も住民との意見交換会を毎年、4か所で開催していますが、参加者は皆、同じような人たちばかりです。住民協議会のメンバーとは明らかに異なります。

──確かに住民協議会のメンバーは年齢層も性別も職業も町での居住歴も実に多彩です。
 住民協議会は何かを決めるのではなく、皆さんが意見を出し合って意識を高めていただくことが、主目的です。実際、住民協議会のOB・OGの中にはその後、PTA会長になったり、地域のリーダーになっている人がいます。議員はまだですが、なってもおかしくない人もいます。今は高校生を委員に含めていますが、これからは中学生や小学生にも傍聴してもらえたらと思っています。住民協議会に参加することがきっかけになって、地域への意識を高めた住民がどんどん増えていったら、大刀洗はすばらしい町になると思います。

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