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2018.02.26 住民参加

第2回 担い手を生み出す秘策は無作為抽出~福岡県大刀洗町~

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合併せずを選択した大刀洗町民

 両派の決戦は2度にわたって繰り広げられることになった。2004年1月の町長選では合併推進の現職に単独を主張する新人2人が挑んだが、結果は現職の辛勝となった。合併の是非を問う住民投票を実施するとの選挙公約が決め手となったといわれている。こうして町長選の約半年後に、改めて雌雄を決する場面がやってきた。小郡市との合併の是非を問う住民投票が実施され、長年の町の懸案事項への結論が下された。「合併しない」を是とする住民が7割に上り、町は単独の道を歩むことになったのである。
 民意を読み間違えた町長は4年後の町長選に出馬せず、そのまま引退。代わって地元で建設コンサルタント会社を経営していた安丸国勝氏が町長に選出され、町の行財政改革に乗り出したのである。
 閉庁日の土曜にもかかわらず、大刀洗町庁舎は多種多様な人たちが出入りしていた。2月3日のことだ。若い人やお年寄り、お子さん連れの女性やスーツをびしっと着た男性たちも。庁内を忙しそうに歩く人たちの中には町長や議長、議員や職員の姿もあった。土曜とは思えないほど活気に満ちていた。
 実は、ここ福岡県大刀洗町は全国の自治体で初の取組みを2014年2月からスタートさせ、その後も地道に継続させている町として広く知られている。2月3日はその取組みが行われる注目の1日であった。住民同士が町の課題について話し合う「住民協議会」の開催である。
 大刀洗町は2013年12月に条例を制定し、町長の附属機関として「住民協議会」を設置した。住民が町の様々な課題を行政任せにせず、「自分ごと」として解決策や税金の有効な活用方法を考え、話し合う新しい取組みだ。意見を集約して政策提言として取りまとめるが、何らかの結論を出すことよりも住民が地域のことを真剣に話し合うことで、政治や行政への参加意識を高めることを主目的としている。政策シンクタンク「構想日本」(加藤秀樹・代表)が発案・提唱しているもので、大刀洗町が全国の自治体の中でその先鞭(せんべん)をつけて実施している。

今や全国モデルとなった大刀洗町

 全国モデルとなった大刀洗町の住民協議会の一番の肝は、参加する住民を「無作為抽出」で選ぶ点だ。今やどの自治体も住民参加を行政運営の柱として掲げている。審議会やパブリックコメント、説明会や意見交換会といった住民参加の機会を積極的に設けることが、行政運営の基本となっている。しかし、その実態はどうか。住民参加といいながらそうした場に集まる、集められる住民は、自治会や各種団体の代表者といったケースが多い。行政のお眼鏡にかなったような人たちで、しかもメンバーは固定化されがち。こうした行政にお客様として呼ばれるような住民参加では、あまり意味をなさない。行政が住民の声を聞いたという体裁を整える形だけのものになりやすいからだ。
 大刀洗町が開いている住民協議会は、参加する住民を無作為抽出方式で選んでいる。まずは住民基本台帳から地域、年齢、性別などのバランスを考慮して一定数を抽出し、住民協議会の内容の説明文や参加を募る手紙を送る。そして、参加を希望するとの返信を寄せてきた住民を委員に任命するのである。希望者が多かった場合は抽選で絞り込むことになる。充実した話し合いにするには、メンバーが多すぎてもいけないからだ。こうして多種多様な住民が協議会のメンバーとなり、テーマごとに話し合いに臨むのである。つまり、これまで行政とまったく接点のなかった住民も委員になることになる。行政にとってもなじみのない住民が委員になるので、事前の根回しや打ち合わせなどできない。やらせや誘導、忖度(そんたく)などとは無縁のガチンコでの協議会となる。ちなみに、委員には費用弁償として1日につき3,000円が支給されるのみ。
 「20代から60代の男女1,000人を抽出して手紙を送りました。委員の数は20人ぐらいが妥当かとみていたのですが、参加希望者が89人にも上りまして、まったくの想定外でした。そこでくじ引きで20人に絞り込むことになりました。うちの町では2期目以降も参加希望者が(抽出者の)9%台と多いんです。よその自治体の希望率は5%台と聞いていますから、うちはその倍近い。その理由はよく分かりません」
 こう語るのは、大刀洗町総務課の田中豊和・企画監だ。住民協議会を立ち上げたときの町の担当職員である。
 2013年度にスタートした大刀洗町の住民協議会は、すでに4期目に入っている。これまで話し合われたテーマは、1期目が「ごみ問題」と「地域包括ケア」、さらに「地域自治団体と行政の役割」。2期目が「子育て支援」、3期目が「防災について」と、いずれも住民の日常生活に根差した重要テーマだ。

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