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2018.01.25 政務活動費

第19回 政務活動費・議会図書室の充実(上)

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2 政活費の不正使用が生じる原因と打開の方途

(1)技術的問題
 政活費の不正使用を是正する手法の検討が喫緊の課題である。例えば、ほとんどの議会で政活費の事前交付・返却方式を採用しているが、事後交付(領収書と使途の明記)への変更を模索することも必要だろう。また、インターネット上での領収書の公開など、情報公開は徐々に整備されてきた。政務調査費から政活費に改正された際に、議長がその使用をチェックすることが法律に盛り込まれたことからすれば、当然である。
 政活費は公金であるがために、不正に使われていないかをチェックするシステム(手続)が必要である。例えば、公認会計士、税理士、弁護士など専門家による政活費のマニュアルあるいは手引き作成時の支援や、使途のチェックの支援を想定するとよい。ただし、コストパフォーマンスを考慮し、厳格なマニュアル作成から出発すべきであろう。

☆キーワード☆
【政活費の透明性確保(熊本市議会の例)】
〈基準の明確化〉
 実費弁償、基準の明確化(人件費・事務所費は総額の2分の1を超えないこと、後援会活動・政党活動と重複する部分は実態に合わせて2分の1や3分の1といった按分)、使途基準表の作成、図書購入の場合の書名明記、中途辞職・任期切れの場合に備品(10万円以上)の返却ではなく未償却残高の返却、領収書の添付と公開等を行っている。
*条例・規程・運用の手引きの策定を行う際に、第三者に調査委託を行った(日本公認会計士協会南九州熊本県部会)。
〈第三者機関によるチェック〉
 議長の調査権に基づき第三者の意見を聴取(使途調査の委託(南九州税理士会))。
*熊本市議会の政活費の動向から要約(鈴木弘議員の発言(全国市議会議長会 2013))
*熊本市議会の場合、政務調査・活動費の交付条例の制定に当たって、特別職報酬等審議会を経ていることも大きな特徴である。

 ところで、いくら完璧な制度をつくっても、最大会派が継続的に存在している議会では、第三者機関や議会事務局といえども、その会派の意向に反することは困難である。そのような議会では政治倫理条例を制定し、その中に議会事務局の自立性を保障する条項を挿入すべきだ。

(2)議会・議員の役割の不自覚
 新たな議会の役割を自覚できず、従来の議会運営を行っている議会だからこそ、これらの不祥事が生じているともいえる。
 兵庫県議の号泣事件は人格問題としてだけではなく(誰が選んだかという有権者の責任問題は今後考える必要はある)、議会運営の問題としても捉えなければならない。政活費の前身である政務調査費が地方自治法に挿入されたのは、地域経営の自由度の高まりに対応した議会を担う議員(会派)のパワーアップを図るためである。これを理解できなければ、「第二報酬」として議員はそれを位置付けることになる。
 政務調査費・政活費は議会改革の本史への突入においても重要ではあったが、その第2ステージ(住民の福祉への連動)にはその活用が不可欠である。


(1) 政務調査費の導入に当たって、交付要綱により会派に交付していた「調査研究費」の違法性を是正することもその理由の1つだった。
(2) 小田 1998、参照。当時の議員の不祥事をレポートしている。
(3) 「人材難 資質低下指摘も」という見出しを一面に掲げる新聞もある(『北海道新聞』2014年7月6日付)。
(4) 新しい議会の動向は、『日経グローカル』246号(2014年、全国市区調査)、廣瀬克哉・自治体議会改革フォーラム編『議会改革白書』各年版、生活社、早稲田大学マニフェスト研究所議会改革調査、各年(都道府県、市)、及び各年のマニフェスト大賞の内容とその講評、参照。

〔参考文献〕
◇江藤俊昭(2016)『議会改革の第2ステージ――信頼される議会づくりへ』ぎょうせい
◇小田勉(1998)「腐敗する地方政界!! 地方議会議員のあきれた行状」『政界往来』64巻4号
◇全国町村議会議長会(2013)『第8回全国市議会議長会研究フォーラム in 旭川 講演録』
◇勢簱了三(2007)『地方議会の政務調査費』学陽書房
◇勢簱了三(2015)『地方議会の政務活動費』学陽書房
◇チューリップテレビ取材班(2017)『富山市議はなぜ14人も辞めたのか』岩波書店
◇塚田洋(2012)「国立国会図書館による地方議会図書室への支援」『びぶろす』56号(この号の特集の1つは「地方議会図書室」)
◇塚田洋(2013)「地方議会図書室に明日はあるか――都道府県議会図書室を例に――」『季刊誌 カレントアウェアネス』No.316
◇原田光隆(2008)「政務調査費制度の概要と近年の動向」『調査と情報』608号
◇廣瀬和彦(2009)『政務調査費ハンドブック』ぎょうせい
◇廣地毅(2013)「政務活動費の法的性質に関する一考察(1)(2・完)――政務調査費から政務活動費へ」『自治研究』89巻4号、5号
◇宮沢昭夫(2016)『「政務活動費」ここが問題だ――改善と有効活用を提案』公人の友社
*各議会の「政務活動費ガイドライン」等を参考にした。
*「全国議会調査 議員報酬と政務活動費」『日経グローカル』302号(2016年)

【後掲資料:全国町村議会議長会】

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