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2018.01.25 政務活動費

第19回 政務活動費・議会図書室の充実(上)

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(2)基本的視点
① 議員の質の低下論の誤り
 政活費等に係る議員の不祥事を、議員の質の低下や議員の責任の欠如といった観点から批判することは、必要だと思われる。しかし、新しい議会を創造する機会とした方が生産的ではないだろうか。
 そもそも議員の質の低下と一口にいった場合、過去と比較できる基準やデータはない。それぞれの思いで語られるにすぎない。昔は確固としたリーダーとしての長老議員がいて議会をまとめていた、あるいは名望家である地方議員であるために職としてではなく名誉として議員活動を行っていたからだというものである。
 これは、中央集権制の下で議会の権限が限定されている時代に、議会運営をまとめ上げたリーダーを高く評価するものであり、水面下の議会運営を得意とし、新しい議会を創り出すタイプのリーダー像ではない。分権前の従来の議会を高く持ち上げる議論には、地域経営の自由度の高まりとともに飛躍的に高まった議会の役割の変化に対する認識は感じられない。
 逆に従来の不祥事を並べて、昔も不祥事はあり(小田 1998)(2)、変わらない、あるいは逆に減ったのではないかといった見解もある。この議論の根拠となる件数も数値化できない。仮にできたとしても、議員の質の低下論と同様に、今後の議会を創り出す意欲に欠ける議論となる。
 もちろん、かつての議員の中には、しっかりと質問を行い、首長等との緊張関係をつくり出した議員もいたことを否定するものではない。また、今日、議員定数の削減にもかかわらず、議員のなり手が減り、無投票当選や欠員が増加していることに伴い、従来とは異なる属性の人が議員となっていることもある(3)。前者についていえば、今日でも引き継ぐ議論ではあるが、新たな議会の上で発揮できる資質であること、個々の議員ではなく議会として執行機関と政策競争することを強調してきた。また後者は、新たな議員の活動は、従来の議員とは質的にも量的にも大きな変化があるにもかかわらず、それに適した報酬等の条件が保障されていないこと、住民から敬意が払われないこと、といった理由から議員のなり手が減少しているためであろう。これらの指摘は重要ではあるとしても、議員の質の低下を証明するものではない。様々な調査結果や、今年第13回を迎えるマニフェスト大賞の応募内容を考慮すれば(4)、議員の質の低下論は「ためにする議論」といえよう。
 また、議員の質の低下論と関連して議員の責任感の欠如もしばしばメディア等では強調される。この議論は単に抽象的な責任を問うもので、教師の責任、経営者の責任、マスコミの責任……といったように拡散し、究極的には「人として」にまで至る。それを強調することは無意味とはいえないまでも、それだけで自覚化できるわけでもない。議会は「住民自治の根幹」であり、それだからこそ「驚くべき権限」を有していることを議員が自覚することで、議員としての責任感が身につくと筆者は考えている。地方分権による地域経営の自由度の高まりや、急激な少子高齢化、人口減少、財政危機に伴う縮小社会における集中と選択が不可欠となった状況に、果敢に挑戦する議会が求められている。これを自覚した議員が増えれば不祥事は全くなくなるとはいえないまでも、大幅に減少するのではないだろうか。

② 政活費を考える視点
 政活費を考える上で2つの視点が必要である。1つは、「議会力・議員力アップ」の視点である。「住民自治の根幹」としての議会を作動させるために政活費を活用する視点である。もう1つは、「住民への説明責任」の視点である。これは、透明性のレベルを超えて、つまりどのように政活費が活用されたかにとどまらず、どのように住民福祉の向上に役立ったかを含めた説明責任である。これらは、衆議院と参議院の両総務委員会での付帯決議、つまり議員活動の活性化とその運用に当たって「国民の批判」を招かないようにという決議に通じるものである。
 これら2つの視点から政活費を考えることにしたい。前者の視点は以下3(次回掲載)で、後者の視点は以下及びで扱いたい。その前に、いくつかの論点を確認しよう。
 ⅰ 政活費の制度設計の際の論点
 政活費の透明性を担保することは不可欠(独自の使途マニュアルの作成・公表)、第三者機関の活用(使途マニュアル・基準づくりの支援、使途どおりに活用されたかのチェック)、充当可能対象範囲を広げる場合はその理由付け(広げないことも:函館市議会)、住民への分かりやすい説明の仕方の模索(活動指標だけではなく成果指標も)などである。これらを慎重に議論して制度設計を行う必要がある。
 ⅱ 政務調査費から政活費への移行に伴って広がった「充当可能対象範囲」の論点(裁判所判例によって確定していく。廣瀬 2008、廣地 2013)。
 「陳情」:今までも可能であったという議論はあるが、自治体の利益になることを説明すること(政党の全国会議出席や政党活動では活用できない)。
 「住民の意見聴取」:今までも可能であったという議論はあるが、政策立案に役立つことを説明すること(政党活動とは異なることを説明、もともと住民の声を聞くことは議員の仕事)。
 「会派の会議」:従来の政策議論はできた(ただし、会派内調整等は自治体の利益になるとは即断できないが)。
 今日、ようやく二元的代表制が作動し、議会全体で動くところが出てきている。議会・委員会として国に陳情し、住民との意見交換を議会全体や委員会で行ってきた。しかし、2013年の地方自治法改正により、議員や会派による陳情や住民の声を聞く活動に対しても、政活費を充てることができるようになった。この制度改正は、二元的代表制の作動をかつてのような会派や議員に分断する可能性があることに注意してほしい。
 ⅲ 条例制定に当たって、住民とともに考える必要がある。制定に当たってパブリックコメントを実施した議会は、千葉県、栃木県、大分県、福岡県、長崎県、東京都北区、伊予市、新潟市、青森市などである(宮沢 2016)。
 ⅳ 政活費と他の労働条件とを関連付けて検討する必要がある(江藤 2016:第5章)。後述する議会図書室や公立図書館の充実強化によって、政務活動を充実させること、あるいは政活費を削減することができる。

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