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2018.01.12 コンプライアンス

第4回 便りがないのは良い便り!?

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検討

 それでは、以上を踏まえて各設問の帰結を検討してみましょう。

Q1について
 設問の「私」は公職の候補者等であり、一時的にでも選挙区域内に現在する者に対しては、原則として「あいさつ状」を出すことはできません(147条の2)。
 そして、クリスマスカードも時候のあいさつとして「あいさつ状」に当たると解されており、また手渡すことも「出す」に当たるため、答礼のための自筆によるものでない限りは、同条に違反することになります。

Q2について
 年賀状については、147条の2が明文で選挙区域内にある者に出すことを禁止しています。ただし、「答礼のための自筆」によるものは例外的に出すことができます。その場合の「自筆」は、署名のみならず宛先やあいさつ文も自筆である必要があります。
 本設問の年賀状は印刷したものであり、その例外にも当たらないため、違反となります。
 なお、事務所移転のあいさつだけであれは、時候のあいさつ状とはいえないとも考えられそうですが、年賀状として出す場合には当然時候のあいさつ状に当たりますし、発送の時期からして文面が年始のあいさつを兼ねたものであれば、「年賀状」でなくとも時候のあいさつ状に該当すると考えられます。

Q3について
 「自筆」については解説1で述べたとおり、宛先の住所・氏名、あいさつ文、差出人の氏名が自筆である必要があります。したがって、宛名も自筆でなければなりません。
 自筆とは肉筆をいいますので、あらかじめ自筆で書いたものをコピーして使用することはできません。

Q4について
 147条の2にある「自筆」とは、差出人自らの肉筆をいいます。そのため代筆の場合は代理人の肉筆にすぎず、差出人本人の肉筆ではないため、公選法でいう「自筆」とは認められません。
 したがって、事務員に代筆してもらった時候のあいさつ状は禁止の例外には当たらず、出すことは許されないことになります。

Q5について
 「あいさつ状」の形式は、はがきに限られず電報やお祝い文も含まれます。
 もっとも、慶事のお祝いについては、「年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状その他これらに類する」もの、いわゆる時候のあいさつとはいえませんので、147条の2の規制にかからず送付することができます。
 なお、電報やお祝い文が解説2で述べたような事前運動や文書頒布の制限、寄附の禁止などの規制に触れないようにする必要があります。特にお祝い事の場合は、物品を送ることのないように注意すべきです。

Q6について
 成人式行事に対するあいさつ文は「年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状その他これらに類する」ものには当たりませんので、Q5と同じく送付することに問題はありません。なお、その他の規制に触れないよう注意すべきことも同様です。

Q7について
 ビラであっても、その形式・内容によっては「あいさつ状」となります。「あいさつ状」であるかどうかは、ビラの全体の形状やあいさつの内容、配布の時期などを勘案して判断されることになります。
 設問の場合は年賀文句を大書きしていることや、初詣客に向けてビラを配布しようとしていることなどからすると、年始のあいさつ状と判断される可能性が高いと思われます。その場合、あいさつ状を出すことができる例外には当たりませんので、公選法違反となります。
 なお、147条の2の「出す」は郵便に限らず、配布やポスティングも含まれます。

Q8について
 147条の2の「答礼のため」といえるためには、常識的な相応の時期になされる必要があります。前年の喪中はがきに対して1年たってからの年賀あいさつは相応の時期とはいえず、「答礼のため」の要件を満たしません。したがって、印刷はもとより、自筆であっても認められないことになります。
 また、一方で本設問では選挙後のあいさつの問題もあります。選挙後の当選に関するあいさつは原則として禁じられており(178条)、期間の制限(終わり)はないので前年の当選の報告でも該当します。ただし、自筆による信書の場合は許されており、本設問のような特定人に宛てた自筆による信書であれば、当選あいさつについては許されることになります。

Q9について
 暑中見舞状は147条の2が明文で掲げている制限されるあいさつ状であり、返礼のための自筆によるものであれば例外的に送ることができます。
 ただし、あいさつ状の制限の例外に該当しても、その他の規制との関係も問題となります。本設問の場合、その直後である秋に予定された知事選の立候補予定者とのツーショット写真やスローガンを載せていることからすると、知事選候補者についての事前運動と見られる可能性があります。

Q10について
 公選法はフェイスブックやホームページなどインターネットを利用した時候のあいさつを禁止していません。したがって、答礼のためでなくとも時候のあいさつをすることができます。
 ただし、他の規制との関係で、事前運動(129条)に該当するような内容のあいさつを行うことはできません。

Q11について
 メールでの時候のあいさつについても公選法は規制していませんので、メールで年末年始のあいさつをすることができます。他方で、公選法は選挙の当選に関するあいさつも禁止していませんので、メールで当選の御礼をすることも可能です。ただし、御礼とともに次の選挙や他の選挙の候補者への投票依頼をするなどした場合は、禁止される事前運動となります。

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