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2017.12.25 選挙

選挙制度いじりに向けて ――『地方議会・議員に関する研究会報告書』について(その3)――

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総合判断

 結局のところ、『報告書』は何といっているのかというと、制度の具体化に当たっては、様々な意見に留意する必要がある、ということだけである。比例代表選挙といっても様々なバリエーションがあり、それぞれにメリット・デメリットがある。また、名簿届出要件をどう考えるかも、悩ましいわけである。
 選挙区設置も悩ましい。現行制度では、選挙区が設置できるにもかかわらず、実態として選挙区設置が進んでいないということに留意すべきと、『報告書』も述べている。簡単にいって、各市区町村としては選挙区設置が難しいということである。市区町村の任意判断では選挙区設置は進まないので、仮に選挙区設置を進めたいのであれば、何らかの手立てを国がする必要があると、『報告書』はいう。例えば、選挙区設置指針を策定または法定するとか、選挙区設置に係る第三者機関を設置するなどである。もっとも、都道府県議会は選挙区設置がなされているので、何らかの基準で選挙区を設置させることは不可能ではないだろう。とはいえ、かつての郡市単位、または今日の市町村単位という基礎的単位が市区町村の場合存在しないので、基準や指針は立てにくいだろう。せいぜい、合併前の旧町村単位しか存在しない。それが今日に意味のある地域かといえば、そうともいえない市区町村もあるからである。もちろん、旧町村単位が実質的な地縁になっている場合には、選挙区設置はしやすいかもしれない。それでも、「合区」が必要な地区とそうでない地区で、もめることはあり得よう。
 さらに、選挙区における定数の問題が生じる。選挙の性格を公平にするには、定数もそろっている方がよい、などといわれる。かつての衆議院は、定数3から5の中選挙区制ということで、一応は統一的にそろっていた。しかし、都道府県のように、定数1の小選挙区から、定数数十の大選挙区までバラバラでは、あるいは、政令指定都市のように、定数2から定数20までバラバラでは、そもそも全体としての県民・市民意思などは存在し得ないと見るべきかもしれない。定数によって投票行動の意味が変わるので、当然に選挙結果の意味解釈も変わるからである。しかし、定数をそろえようとすると、区割は極めて困難になる、定数を小さくすればするほど、区割は困難になる。区割が面倒だということで定数を大きくすると、有権者の情報コストが減らないままになるので、選挙区設置のメリットが乏しくなる。
 ということで、『報告書』は、案2(制限連記制)については大規模(定数11人程度以上)の選挙区設置を提唱する。制限連記である以上、ある程度の候補者数がいることが前提なので、あまりに小さな定数では意味がない。それでは実質的には小選挙区と同じになってしまうからである。もっとも、あまりに定数が多いと、情報コストが過大になってしまう。結局、『報告書』は、1946年衆議院選挙の大選挙区制限連記制の故事にのっとり、定数11人以上で3人連記制を想定するそうである。しかし、これでは情報コストはかなり大きくなるように思われ、今以上に有権者は「選択のしようもない」と思うかもしれない。
 また、案3(選挙区設置)に関しては、単記非移譲式の場合には、中規模の選挙区設置を提唱している。この仕組みは、『報告書』がいうように、確かに情報コストを低減するだろう。しかし、区割負担などは避けがたい。さらには、全域1区の大選挙区制よりは死票は間違いなく増えるので、少数意見は代表されにくくなる。このような留意事項を『報告書』も挙げているのである。実際、特に小規模団体こそ、地縁のしがらみが強く、少数意見がいいにくいのであって、このような選挙区細分を小規模団体に導入することは、住民代表という点からは相当のマイナスがあるかもしれない。

【つづく】

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