2017.11.27 議会事務局
第17回 議会事務局の新たな役割――議会との二人三脚による住民自治の進化・深化――(上)
(2)議会事務局をめぐる制度と現状
議会事務局をめぐる制度と現状を確認しておきたい。議会事務局は、都道府県では必置であるが、市町村ではいまだに任意(条例委任)である(自治法138①②)。定数は条例で定めることになっているが、独自条例はほとんどない(執行機関の職員定数条例の中に含まれる)。議会事務局職員の任免権は議長が有していること、指揮命令系統は、事務局長は議長の命を受け、その他の職員は上司の指揮を受けて業務に従事することになっている(自治法138⑤⑦)。なお、議長に限ってではあるが、秘書の任用は可能である(地方公務員法3③Ⅳ)。しかし、その適用は管見の限りでは見当たらない。
こうした制度に基づき、実際には議会事務局の位置付けが低く、議会事務局職員の意識や行動の根拠に揺れが見られる。町村議会では、いくつかを除いて議会事務局は設置されているものの、職員の数はあまりにも少ない。その定数の独自条例がないために(管見の限りでは大阪府のみ(1955年制定))、議会事務局が執行機関の一機関として位置付けられ、しかも実際の運用では出向制度が導入されているために、その発想を助長させている。また、こうした出向制度によって、議長の意向がその採用人事に当たって考慮されていない。さらに、「議会事務局」という名称もあってか、議会事務局長や議会事務局職員は、議長以外の議員から指示を出されることも多い(「小間使い」、「議員秘書」といった活動)。こうした議会事務局では、その役割が明確に位置付けられず、議会事務局職員にとってやりがいのある職場とはなっていないことも多かった。
もちろん、現行の制度でもこれとは異なる議会事務局像を描くことは可能である。それを提示するのが本連載の課題でもある。従来型の議会事務局像や現実を超えて、新たな議会事務局像を構想する必要がある。その前に、改革の視点を確認しておきたい。
☆基礎知識☆
【議会事務局設置の根拠法(地方自治法)】
第2編第6章第11節 議会の事務局及び事務局長、書記長、書記その他の職員
第138条 都道府県の議会に事務局を置く。
2 市町村の議会に条例の定めるところにより、事務局を置くことができる。
3 事務局に事務局長、書記その他の職員を置く。
4 事務局を置かない市町村の議会に書記長、書記その他の職員を置く。ただし、町村においては、書記長を置かないことができる。
5 事務局長、書記長、書記その他の職員は、議長がこれを任免する。
6 事務局長、書記長、書記その他の常勤の職員の定数は、条例でこれを定める。ただし、臨時の職については、この限りでない。
7 事務局長及び書記長は議長の命を受け、書記その他の職員は上司の指揮を受けて、議会に関する事務に従事する。
8 事務局長、書記長、書記その他の職員に関する任用、人事評価、給与、勤務時間その他の勤務条件、分限及び懲戒、服務、退職管理、研修、福祉及び利益の保護その他身分取扱いに関しては、この法律に定めるものを除くほか、地方公務員法の定めるところによる。
【議会事務局の現状】(江藤 2011、2012)
① 都道府県議会:議会事務局職員数平均40.8人、議員1人当たり0.70人、議員数と議会事務局職員定数が同数(以上)なのは、東京都だけである(議員1人当たりの職員数1.0人)。議会事務局職員の在局期間は「3年未満」が64%となっている。
② 市議会:平均8.5人、議員1人当たり0.28人。
③ 町村議会:平均2.3人、議員1人当たり0.15人。
【議会事務局職員の意識】(江藤 2011、2012)
① 「議会に対し的確な情報を提供できるメリットがある」と思っている者は、60%である。
② 「みずから提供した情報で執行機関が質問・質疑等で苦境に陥ることを予見できるときは、自己抑制が働く」という意見に半数は同意していない(市町村45.9%、都道府県55.1%)。
③ 「議会事務局に希望しなくとも配属されている」(市町村76.5%、都道府県82.2%)。「早く戻らなくてもよい」(市町村62.4%、都道府県45.8%)。