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2017.11.10 コンプライアンス

第3回 見られていますよ「街頭演説」

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検討

Q1について
 設問の態様の場合、投票の呼びかけを行っていますが、個々の通行人に話しかけているだけで「演説」とまではいえず、公選法の規定する街頭演説の制限(164条の5及び164条の6等)は適用されません。
 しかし、告示日といえども投票の呼びかけを含む選挙運動ができるのは立候補の届出後からであり、届出前に選挙運動をすることはできず、設問の行為は事前運動(129条)となり許されないと考えられます。

Q2について
 設問の行為は選挙運動のための街頭演説であり、選挙運動は立候補の届出後からすることができますので、事前運動(129条)には当たりません。
 しかし、選挙運動のための街頭演説を行うには、選挙管理委員会の定める標旗を掲げなければならず(164条の5第1項、2項)、標旗を掲げないままになされた街頭演説は、これに違反することになります。

Q3について
 街頭演説は、電車、停車場その他鉄道地内では行うことができません(166条2号)。設問の場合は、公園のためこれに当たらないようにも思えます。しかし、街頭の人々へ向けて演説をしていたところ、ホームの人にまで聞こえたというのであればともかく、鉄道地のすぐ横で専らホーム上の人に聞かせる目的のみであえて街頭演説を行うような場合は、街頭演説場所の制限を潜脱するものとして許されないと考えられます。

Q4について
 他の選挙の投票が行われている場合、その投票所設置場所の入口(必ずしも建物の入口とは限らず、敷地の入口と考えます)から直線で300メートル以内の区域では、投票日の午前0時から投票所の閉まる時間まで街頭演説をすることはできません(165条の2)。
 設問の場合、投票時間中と考えられますので、街頭演説の場所が投票所の入口から直線で300メートル以内であれば、165条の2に違反することになります。

Q5について
 選挙運動のための街頭演説は午後8時までとされています(164条の6第1項)が、屋内で行われる屋内の人に向けた演説は「街頭演説」ではないため、午後8時以降も可能です。
 しかし、たまたま事務所の扉が開いていて声が漏れ聞こえたのではなく、スピーカーをわざわざ屋外に向けたり必要以上の大音量を出し、又は音が屋外に漏れ聞こえることを意図して扉や窓を開け放すなど、殊更屋外にいる人に聞かせる目的で屋内で演説をするような場合はまさに街頭演説であり、164条の6第1項違反になると考えます。

Q6について
 街頭演説の場所では、首長選挙では142条1項3号、5号~7号に定めるビラを配布することができます(142条1項、6項、公選法施行令109条の6)。しかし、地方の議会議員選挙においては、そもそも何も配ることはできません。

Q7について
 選挙運動期間中に掲示することができる文書図画について、公選法は規制を設けています(143条)。街頭演説においては候補者が使用するたすき(同条1項3号)と選挙運動用自動車・船舶に取り付けて使用されるポスター、立札、ちょうちん及び看板の類(同条1項2号)に限られます。
 また、あまりに大量ののぼりを立てた場合、通常の選挙運動を超え、選挙の静穏を害するものとして気勢を張る行為(140条)に当たる可能性もあります。
 そのため、設問のような行為は、許されない文書図画の掲示に当たり、公選法違反となります。  なお、知事選挙においては個人演説会用の立札・看板の類を掲示することができますが、設問の場合は多数であり、やはり許されないと考えられます。

Q8について
 街頭演説を行うに当たって、「選挙運動に従事する者」は15人以内かつ選挙管理委員会の定める腕章の着用が義務付けられています(164条の7)。この「選挙運動に従事する者」には労務者も含まれるため、設問の設営係や交通整理係であっても腕章をつけなければなりません。
 ただし、選挙運動用の自動車の運転手1人や船舶の船員は腕章をつける必要はありません(164条の7第1項、2項)。

Q9について
 公選法は文書図画等の回覧を頒布とみなして禁止しています(142条12項)。この回覧には文書図画を身につけて持ち歩くことも含まれます。
 そして、街頭演説で「選挙運動に従事する者」が身につける候補者名が記載された腕章も選挙運動のための文書図画に当たり、回覧行為は禁止されます。
 ただ、候補者のたすきは142条12項が回覧の例外として明示していますので、つけたまま移動することに問題はありません。

Q10について
 街頭演説においては、候補者がいなくても街頭演説をすることができます。ただし、街頭演説に当たっての制限は守る必要があり、標旗を掲げなければなりません。

Q11について
 街頭演説を行う際は、選挙管理委員会の定める標旗を掲げなければなりません(164条の5)。地方議会議員・首長選挙では標旗は1本しか交付されませんので、複数の場所で同時に街頭演説を行うことはできません。ただし、政党その他の政治団体が行う街頭政談演説であれば、街頭演説と同時に他の場所でも行うことができます。

Q12について
 街頭演説においては、録音盤を使用することができますので(164条の4)、生演説ではなく録音テープを流すこともできます。しかし、街頭演説を目立たせる目的で選挙運動員とともに大声で合唱するような場合は、通常の選挙運動とはいえず、選挙の静穏を害するとともに周囲の平穏を害するおそれがあるため、禁止される気勢を張る行為(140条)に当たる可能性があります。

おわりに

 今回は、選挙運動の典型でもある街頭演説を取り上げてみました。街頭演説は演説会と並んで有権者に自身の政策や考え方を直接伝える最も効果的な方法ですが、直接かつ原則として屋外で行われるがゆえに、多くの人の目に触れることになります。
 そのため、各陣営が何か効果的な方法はないかと工夫を凝らすのは至極当然のことですが、目立つことをした者が有利になるとなれば、行き着くところは候補者を通じた政策論争ではなく単なるパフォーマンス合戦になってしまいます。
 候補者同士がフェアに政策を訴え当選を争う。言うは易く行うは難しであることは、何度も選挙運動や事務を経験した筆者自身、百も承知していますが、街頭演説をはじめとする選挙運動の有り様を有権者、そしてライバル陣営は見ています。知らぬ間に違法行為を犯してしまわないよう、この記事を読んでいただいた後に意識を持ってもらえれば幸いです。

この記事の著者

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