2017.10.10 一般質問
執行部を動かす一般質問の作法心得
3 一般質問の作法心得
執行部も同僚議員も、あなたの一般質問に注目しています。もちろん市民も注目しています。あなたは、どのように一般質問をすれば、議員としての役割、議会としての権能を果たすことができるのでしょうか。
ここでは、一般質問の作法心得について考えてみましょう。
〈作法心得①:首長の力を知る〉
首長は、有力会派の合意が得られないときは、本心がGOであってもGOとはいわないことがあります。部長も首長の同意が得られなければ、本心がGOであってもGOとはいえないということです。そのような場合には白黒をつけず、次回の質問につなぐことも1つの方策です。
〈作法心得②:主張を相対化する〉
議員には、自分の主張を相対化して質問することが求められます。具体的には体系性、実現可能性などの視点から自分の主張をチェックするということです。そのためには、自治基本条例、議会基本条例、総合計画(地域生活環境指標、公共施設等配置計画、定員計画、財政計画)、分野別計画(中間計画)、人口ビジョン・総合戦略、公共施設等総合管理計画など自治体の基幹となる条例や計画の中に自分の主張の位置付けを確認することで、自らの主張の妥当性を改めて確認することができます。
このことは、地域にしても業界などの団体にしても自分の選挙地盤に関する質問事項を、自治体の課題全体の中で相対化することを意味します。そうすることで、例えば、提案の段階的導入や計画的対応など、より実現可能性と具体性を持った政策提案を示すことにつながります。このことに関連して、これまで執行部が取り組んでいなかった政策についての一般質問を行うのであれば、執行部が当該提案を政策全体の中で、どのように位置付け、対応していけるのかを十分に検討できる期間を確保した上で執行部の決断を迫ることが求められるといえます。
〈作法心得③:粘る〉
期待どおりの答弁がされなかったときに求められるのは粘り腰です。では、粘るためにはどうするか。答弁内容が、あまり積極的でないと思われる内容であっても、「積極的な答弁をいただき……」、「前向きな答弁をいただき……」とした上で、前向きに取り組むことを要請します。半年、1年と時間が経過することで、議会内の力関係や質問内容に関する執行部の方針が変化し、粘りが生き、質問内容が実現することもあります。
〈作法心得④:明確に質問する〉
一般質問では、何を質問するのか、その項目内容と目的を始めに明確に伝えます。その次に、質問の具体的な内容(政策の水準や手段)、理由、背景、データ等を示すとよいでしょう。まずは、この型を覚えて実践することが大切です。
近年は、議場内にモニターが設置されたり、資料配布の行われる議会も増えています。それらを活用する意味でも箇条書きや図解を用いた質問は効果的です。質問者本人の質問内容の整理にも役立ち、再質問時のやり取りにも効果を発揮するはずです。
〈作法心得⑤:丁寧に伝える〉
丁寧に伝えるということでは、話すスピードも大切です。早口の質問では、執行部は聞き取れません。事前に質問のフルペーパーが執行部に届けられていたとしても、傍聴者(受像者)には、全く分かりませんし、伝わりません。
一般質問は議会と行政だけのやり取りでないことを改めて認識する必要があります。両者の背景には市民がいることを忘れてはなりません。議会と行政が市民のためにきちんと議論し決定した上で実行し評価するのだから、それでいい、ということにはなりません。市民は、行政サービスの利用者という面を持ちますが、それだけではありません。議会や首長(行政)で構成される自治体政府をコントロールする政府の所有者としての面や、公共政策を含む政策を自ら実行する供給者としての面を持ちます。市民のこのような機能が適切に発揮されるためには、議会での一般質問と答弁の内容を市民が情報として把握していることが必要となります。
〈作法心得⑥:礼儀正しい態度・口調で質問する〉
一般質問での態度や口調があまりにも高圧的であると、答弁内容が、その場で変更になることが少なくありません。執行部は、議員の質問中にも、自分の答弁書を書き換えています。登壇しても、答弁しながら議員全員の反応を確かめつつ、次の言葉を選びます。答弁中に議員からヤジが飛ぶこともありますが、マイナス効果が大きいといわざるを得ません。
議会は、市民の信託に権限の源泉を持つ議会と首長(行政)が議論する神聖な場所です。自由闊達(かったつ)な議論は大切ですが、質問者、答弁者ともに礼儀正しい態度と真摯な議論が求められます。このような前提があって、初めて議会は実りある「議論のヒロバ」となり、理性的な決定も行い得るのです。
〈作法心得⑦:力を合わせる〉
同一会派、別会派を問わず、連携した連続型の一般質問を行うことが考えられます。連続型の一般質問を行うことで、論点・争点が深まります。そのためには、事前の議員間連携が必要となります。知ったかぶりの言葉(外国語、専門用語、略語など)を用いては、他の議員に発言の意図が伝わらないことが考えられます。一般質問の最中に、いわゆる大きな態度をとることはもってのほかです。連携をとろうとした同僚議員が引いてしまうことでしょう。
〈作法心得⑧:執行部を軽視しない〉
一般質問において(委員会などにおいても見られますが)、自分の主張を延々と述べた後、その内容についての執行部の考え方は分かっているので答弁は求めないという発言をし(実際には議員の認識違いの場合も少なくない)、執行部の答弁を求めようとしないケースが見られます。
しかし、このような発言は一方的すぎます。そもそも執行部が議会に出席しているのは、議会の要請に基づき議案についての説明をするためであるということを忘れてはいけません。議会軽視ならぬ執行部軽視といわれてしまうでしょう。これは、議会と首長(行政)の双方に信託している市民を軽視しているということでもあります。
●一般質問の作法心得
作法心得①:首長の力を知る
作法心得②:主張を相対化する
作法心得③:粘る
作法心得④:明確に質問する
作法心得⑤:丁寧に伝える
作法心得⑥:礼儀正しい態度・口調で質問する
作法心得⑦:力を合わせる
作法心得⑧:執行部を軽視しない