2017.08.25 議会事務局
第27回 議会としての意思表明、「意見書・決議」
民間企業などには意見書を提出できないの?

自治法に定められた意見書の提出先は、国会と関係行政庁だけです。衆議院と参議院、そして国の官公庁や都道府県なので、民間企業などは含まれません。つまり、法的根拠を持つ意見書は、民間企業などには提出できないことになります。
それでは議会として何もできないのかというと、そんなことはありません。自治体議会として思いを伝えたい相手は、国会やお役所ばかりではないでしょう。自治体の利害に大きな影響がある特定の企業や法人に対して、値上げの見合せ、企業やイベントの招致などを求めたいことは十分考えられます。
法律上できないのは、あくまで自治法に定められている意見書を民間企業などに提出することなので、「これは法律に基づいた意見書です」と言わなければいいわけです。通常の意見書は、その本文に「地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します」といった表現を入れて、法律上の意見書であることを明記します。逆に、民間企業などに提出したいものは、このような表現を入れずに自治体議会としての要望や決議として扱えば、それによって表明した意思を民間企業などに提出することは何ら違法ではありません。そのような議決によって提出する例は実際にあります。
意見書や決議を議決して効果はあるの?

法律上、意見書を受け取る国会や関係行政庁の側に、回答や何らかの行動の義務は明記されていません。受け取るだけ受け取って、結果として何も変わらないことはあり得ますが、県に送付された意見書を担当職員が受け取ったまま放置し、知事に情報を伝えていなかったことが発覚して問題になることなどもあるようです。一方、決議は法的根拠がないものですから、当然ながら法的拘束力もありません。
議長不信任決議や議員辞職勧告決議も同じです。議決しても議長や議員が辞める義務は法的にはありません。多数の議員がそのような意思を示すこと自体が深刻な事態ですから、政治的には無視していいものではないでしょうが、責められた側が意地でも辞めなければそれまで。勢い余ってこんな決議をすると、逆に痛い目を見たり混乱を助長したりするだけということもあるので、その後の展開も考えて判断することをお勧めします。
では、意見書や決議を議決する意味はないのでしょうか。安易な乱発は控えた方がいいと思いますが、無意味ではありません。広く問題視されている国政の課題について、全国の自治体議会の大半が反対を表明する意見書を提出すれば、国も無視できなくなります。その自治体特有の問題や価値観を表明することも、自治体のPRとして意味のあることです。
いかがでしたか? これを機に、どんな「意見書・決議」を、どんな手順で議決し、どうフォローしていくか考えてみるのもいいかもしれません。次回は、議会改革の代表的な取組みである「議会報告会」について取り上げます。