2017.08.10 一般質問
第33回 一般質問の「一問一答方式」をどう改善するか?
回答へのアプローチ
一問一答方式にもデメリットといえる部分があります。しかし、それを超える「論点が明確になる」というメリットがあります。デメリットの部分は議会で改善しつつ、より完成度を高めていくべきでしょう。また、制度論とは別に、個々の議員の慣れというか、スキルで対応できる部分もあります。
例えば、先に挙げた夫婦のやりとりでは、「13日は携帯の電波が届かない場所にいたんじゃないか?」と夫が答える可能性があります。これに「今どき電波が届かない場所なんてないでしょ?」と妻が続けると、電波が届かない場所があるか、それはどんな場所なのかという、本筋から離れた話に終始してしまう可能性があります。
再質問になっても、本筋から離れないように意識しながら質問するか、なぜ、そうした質問をするのか説明をしつつ細かい質問を行うなどの注意が必要です。「どうして、そのことを尋ねさせていただいたかというと」をいうフレーズを口癖にするぐらいでちょうどいいでしょう。
さて、回答案について検討すると、一般質問は自分のために行うのではなく住民のために行うものです。そうであるなら、やりやすいからという理由で一括方式を選択するのは感心できません。問題が複雑ではなく、しかも持ち時間が十分でない場合などには、一括方式を選択する場面もあるかもしれませんが、そうでなければ一問一答方式を導入した趣旨を踏まえて頑張ってみてはどうでしょう。Bは誤りとします。また、反問権の問題は必ずしも一問一答方式とリンクした問題ではないのですが、必要性が高まるということも事実です。反問によってペースが乱されるとしたら、逃げないでその原因を考えてみてください。その問題について勉強が足りないということはありませんか、解決方法へ至るストーリーがひとつしか想定されていないという点に問題はありませんか。議員の皆さんには厳しいかもしれませんが、執行部と堂々と渡り合う議員の姿を見たいと思います。Cは正解とはできません。Aをとりたいと思います。
実務の輝き・提言
一問一答方式を導入してみると、議会ではいろいろな不具合が生じるかもしれません。後発組は、先に導入している議会の話を聞いて導入するでしょうが、それでも、始めてみるといろいろあるはずです。それなら、導入後一定期間たった時期に議会で意見を集約して改善の方法を探ってみてはどうでしょう。その場合、制度の問題として解決すべきことと、議員個人のスキルアップで解決できる問題とを区別することが重要です。
往復方式で時間が足らず結果として再質問などが十分できない場合には、もう少し質問時間を確保することを検討してもいいでしょう。どうしても、一般質問の場合には答弁時間も長くなりがちですから、持ち時間は質問時間だけ(片道方式)としてカウントする方法もあります。数回の実施を経ると、質問時間や答弁時間の平均時間が出るでしょうから、一括方式時代のデータと比べながら、これまでの実質的な質問時間を確保できるよう調整すべきです。ただ、片道方式は、時間が読めなくなるため、執行部側は嫌がるでしょうから、その調整もしなければなりません。無駄な時間を少なくするためには、質問も答弁も自席で行うことを検討してもいいでしょう。ただ、カメラや写真映り的に必要な事情もあるでしょうから、最初の質問だけは答弁席で行うという妥協案もあります。
再質問以降のやりとりが住民によく理解できるよう、一般質問通告書は項目だけでなく、その趣旨などを記載し、一般質問の行われる前にウェブサイトで閲覧できるようにしておきたいものです。一問一答方式は、住民の目に見える改革です。「議会が変わった」ということをより住民に意識してもらえるようにしましょう。
反問権についてはいろいろとトラブルが多いものです。執行部側の発言が「反問権の行使の範囲を超えている」と議会側が問題にすることがよくあります。議会での実際の事例を挙げて「こうした発言は反問権の範囲を超えていますよね?」などと質問される場合も多いのですが、反問権は、それぞれの議会がそれぞれに内容を決めているものなのです。法令にそうした権利の内容が規定されているわけではありません。その意味では、A議会の反問権とB議会の反問権は同じものではなく、だからこそ、運用に当たってのその行使のルールをしっかり決めておかなければなりません。単に質問内容を確認するにとどめるものなのか、それとも議員の質問に対して問題点の指摘など自らの意見を述べることまで認めるのかどうかです(後者の内容だと「反論権」と表現されることもあるようです)。
また、反問権の行使を誰に認めるかも問題になります。論点を明らかにするための行為という意味を考えれば、部長や課長などにも認めることができますし、例外的な行為だと考えれば首長などだけに認めるというルールもありでしょう。議会基本条例でその対象まで定めていない場合には、まずは議会で議論する必要があります。
先ほどの「時間が足りない」という問題との関係でいえば、反問権行使の時間については質問でも答弁でもないのですから、「時計を止める(カウントしない)」という扱いも考えられます。
議会は伝統を重んじる場所です。しかし、始めたばかりの一問一答方式は、運用上の問題を踏まえて、よりよいものに改善をしていくべきものです。一定の改善が行われ、ベストと思われるやり方が定着したとき、初めて議会の伝統になります。