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2017.08.10 仕事術

“議会あるある”から脱却し、話し合いのプロ集団になるために

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議会基本条例が要請する議員間討議

 「会して事を議する機関」が議会であるが、誰と誰が話し合うのであろうか。当然、議事機関を構成している「議員と議員」であることが一番にいえる。
 しかし、多くの議会では「議会と首長」の話し合いに最も時間を割いているのが実態である。議案の9割が首長提案であるからといって、「議会と首長」の話し合いが議会における話し合いの9割を占めるということではいけない。全国の半数に及ぶ議会で制定の進む議会基本条例で「議会は議員相互間の討議を重んじる」として議員間討議を規定している議会も少なくない。重んじるのであるから、少なくとも5割は必要となるのではないだろうか。つまり、議会で行われる話し合いの多くは「議員と議員」同士でなされるものでなければならないのではないか。議会基本条例では、ほかに、住民と議会の関係、首長と議会の関係、参考人等の制度活用、議会事務局の体制整備などを規定していることが多い。議会における話し合いは、「議員と議員」のほか、「議会と住民」、「議会と首長」あるいは「議会と学識者等第三者」、「議会と議会事務局」など様々挙げられるであろう。

「議会と住民」の関係を“vs”から“to”へ

 「議員と議員」、「議会と住民」、「議会と首長」など、仮にこれらを「○○と△△」としたとき、それは「○○ vs △△」の対立関係とイメージされやすい。お互いがやり合う、又はどちらか一方がやり込められるイメージである。そうではなく、[Heart to Heart]で表現される、「通じ合う」といった意味の“to”も大切ではないだろうか。
 予期せずして、議会報告会が「議会 vs 住民」に陥ってしまうことも議会あるあるに挙げてよい。
 議会事務局研究会がその中間報告書「今後の地方議会改革の方向性と実務上の問題、特に議会事務局について」(2010年3月)の中で、議会事務局に期待される機能のひとつとして「議会と住民との媒介的機能」を挙げているように、「議会と住民」の関係を“vs”から“to”にコーディネートすることも議会事務局の役割である。実はそれが、筆者の「かだって会議」の発想のもとでもあった。
 「議会と住民」の関係を“to”にすることで、話し合う目的や、今課題としているものが何か、まずベクトルの共有を図ることができる。それなしに無意識・無防備に話し合いを進めれば、それぞれの防衛本能が働いて、おのずと腕を組み出し、“vs”に陥っていくと、経験上考える。

市民と議会が協働し市政課題について話し合う場として久慈市議会じぇじぇじぇ基本条例8条に規定市民と議会が協働し市政課題について話し合う場として
久慈市議会じぇじぇじぇ基本条例8条に規定

議会報告会から学ぶもの

 宮城県本吉町議会、そして北海道栗山町議会による議会報告会の開催を受け、その恒久的な制度化を求める住民の声が議会基本条例制定へとつながった。地方議会に革命を起こしたともいえる議会報告会から10年以上たつが、その運営にはまだまだ課題が多い。議会報告会は、議会の課題をそのまま映す鏡であるともいえる。
 ここで、議会報告会にまつわる議会あるあるを紹介したい。

特定の人だけ発言し、他の人が発言できない/参加者が年配の男性に偏る/人が集まらない/行政や議会への不満・陳情に終始する/場の雰囲気が悪い/議会報告はさておいて意見交換に終始する

 例えば、暗中模索から始まった久慈市議会の議会報告会であるが、住民を前にして、委員長報告原稿をそのまま読み上げるようなことが過去にあった。その内容は、市長の提案理由書をほぼ書き写し、可決したことを添えた程度であった。それは議会報告ではなく、市長報告を代弁したにすぎなかったといえる。
 議会報告がうまくいかないと嘆く議会は多い。それは翻って、報告に足りうるだけの話し合いを「議員と議員」が議場で行ってこなかったということではないだろうか。
 もし大切な話し合いが会派室で行われ、そこで結論まで出てしまうのであれば、議場はいらない。誰もが集うフォーラムの場たる議場で「議員と議員と議員と……」によるインタラクティブな話し合いが行われて初めて長提案が100パーセント正解な選択肢でないことに気づけるだろうし、新たな住民価値の創造も図れるだろう。
 村議会廃止が話題となっている高知県大川村議会(定数6人)でさえ、その6点を結ぶ線は15本にもなる。皆さんの議会は何人で何本の線を結ぶことができるだろうか。そのうち何本の線でしか話し合いが行われていないか数えてみてほしい。より多く線を結び、それが束になって初めて、議事機関としての議会の議会力が発揮されるのではないだろうか。

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