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2017.07.10 コンプライアンス

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解説

〈設問で公選法上問題となる点〉
 争点1 寄附の禁止(199条の2)
 争点2 文書に関する制限(142条〜146条)
 争点3 事前運動の禁止(129条)

●争点1《寄附の禁止》について
 公選法は、199条の2で、公職の候補者等が選挙区域内の者に対して寄附することを原則的に禁じており、これに違反すると罰則もあります(249条の2)。
 ここにいう禁止される「寄附」とは、「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のもの」(179条2項)をいいます。
 したがって、「寄附」となる対象は、金銭はもちろん、物品を借りたりサービスを受けたりすることなどであっても財産上の利益があるとされれば含まれます。
 また、寄附の相手方は公職の候補者等の選挙区域内の者であり、選挙権の有無を問いませんし、居住者のみならず一時的に滞在する者や、法人や団体も含まれます。
 寄附の方法に制限はなく、相手に直接金銭や物を渡すことや、債務の免除をするなど相手方に利益を与える場合(「供与」)のみならず、第三者を仲介して行う場合(「交付」)も含まれ、単なるその「約束」でも寄附となります。

●争点2《文書に関する制限》について
 選挙運動のために使用する文書図画の頒布又は掲示については、選挙の公正等の観点から厳しく制限が設けられており、原則として禁止(頒布:142条、掲示:143条)され、142条以下の例外に該当する場合のみ行うことができます。しかも、違反した場合には罰則が設けられています(243条)。
 「選挙運動のため」とは、選挙運動に資することを専ら又は主たる目的ないし意図する場合のみならず、従たる場合も含むと解されます。したがって、選挙運動に資することが目的に含まれていれば、一見選挙運動のためと見られない場合であっても該当することになります。
 「文書図画」とは、「文字若しくはこれに代わるべき符号又は象形を用いて物体の上に多少永続的に記載された意識の表示」とされ、文字でなく記号であっても、また紙以外のものに書かれたり、映像として表示されたものも含まれる広い概念です。
 「頒布」とは、不特定又は多数人に文書図画を配ることのほか、特定少数の人への配布でも不特定又は多数人に配布されることが予定又は予想される状況での配布も含まれます。
 「掲示」とは、文書図画を一定の場所に掲げて人に見えるように示す行為をいい、何かに貼り付ることが要件ではありません。
 また、公選法は上記規制の潜脱を防止するため、146条1項では、「選挙運動の期間中」に「第142条又は第143条の禁止を免れる行為として」、「公職の候補者の氏名若しくはシンボル・マーク、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する文書図画」の頒布・掲示を禁止しています。
 ここにいう「選挙運動の期間中」とは、その選挙の選挙運動ができる期間を指しますので、告示から投票日前日までになりますが、選挙運動期間外に行った場合は選挙運動期間外の選挙運動を禁ずる事前運動の禁止(129条)との関係で問題となり得ます。
 「第142条又は第143条の禁止を免れる行為として」とは、一見すると選挙運動とは関係のない広告やお知らせなどのような体裁・名目をとっているが、実質的に見れば選挙運動のためになされている行為をいい、本条が例示している著述、演芸等の広告に限られるものではありません。これに当たるかは実質的な判断が必要ですので、結局はその行為の行われた態様・目的・方法・性質などを総合的に考慮して判断せざるを得ません。
 なお、146条2項にはみなし規定があり、年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状その他これに類似する挨拶状を選挙区域内に頒布・掲示することは、意図にかかわらず上記禁止を免れる行為とみなされるので注意が必要です。
 142条又は143条と146条の区別については微妙なところがあるものの、文書図画の外形から見て明らかに選挙運動のために使用されていると認識できる場合には142条又は143条が、そうでない場合には146条が問題になると考えることが1つの目安になると思われます。

●争点3《事前運動の禁止》について
 公選法は、選挙運動の期間を規定し、その期間外に行う選挙運動をいわゆる「事前運動」として罰則をもって禁止しています(129条、239条1項1号)。
 「選挙運動」の意味について最高裁は「公職選挙法における選挙運動とは、特定の公職の選挙につき、特定の立候補者又は立候補予定者に当選を得させるため投票を得若しくは得させる目的をもつて、直接又は間接に必要かつ有利な周旋、勧誘その他諸般の行為をすることをいう」(最判昭和52年2月24日刑集31巻1号1頁)としており、実務上もその解釈にのっとって判断していますが、かなり広く認められる傾向があります。
 なお、争点2との関連でいえば、事前運動の禁止違反が同時に142条違反又は143条違反となる場合もありますし、また選挙運動期間外であれば146条の適用はないものの、選挙運動期間中であれば同条により規制される脱法文書図画の頒布・掲示が事前運動の禁止に抵触するとされる場合もあります。

 では、今回の設問ごとに見てみましょう。

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