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2017.06.12 仕事術

第7回 監査委員による行政監査、財政援助団体等監査は意味がない?

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行政監査と財政援助団体等監査の多面的な成果

 行政監査と財政援助団体等監査には、我が市では、ざっくりいって、監査委員の活動全体の2~3割程度の労力をかけている。監査を受ける側の団体や担当部局は、監査対象となっただけで、相当に緊張するようだ。いつ自分たちの事業や団体が対象となるかもしれないという事実が、緊張感をもたらし不正行為を抑制する。私の3年余りの議選監査委員の経験では、この2つの監査において、重大な瑕疵(かし)を指摘した、あるいは対象となる事業や団体のあり方を揺るがした、というような直接的な成果はなかった。そもそも、そんな重大な瑕疵が見つかるようでは、日常の監査活動が機能していないともいえる。だからといって、この2つの監査が必要ないということにはならない。直接的な成果以外にも、多面的な成果があるからだ。
 そのことをより深く知っていただくために、監査委員が、具体的にどのようにして監査対象先を選定するかをご紹介する。行政監査、財政援助団体監査ともに、まず、基本的には事務局原案が示される。事務局原案では、過去の実績に基づき、これまで実施していない、あるいは実施してから年月を経過した事業や団体がリストアップされる。また、定期監査などで問題点が指摘されてきた事案も対象となる。例えば、行政監査の対象として「消耗品の購入」や「市の加入する保険」を横断的なテーマとしている。こういった部局横断的なテーマは、議会の一般質問や所管委員会調査などで取り上げにくいテーマである。まさに、行政監査らしいテーマといえる。行政監査以降は、定期監査などで、指摘された事項について改善が図られているかチェックすることになる。
 私が議選監査委員を務めていた3年の間、行政監査対象先の選定については、事務局原案ではなく私の提案を採用していただいたのが2回、事務局原案に従ったのが1回である。1年目と3年目は、私の提案を採用していただいた。2年目は、私自身も問題意識を持っていたテーマであったため、事務局提案に従った。
 財政援助団体監査については、例年2ないし3団体を対象とするが、毎回必ず1つは、これまでの議員活動を通じて私が精査すべきと思った団体を対象としていただいた。それまでは、対象先の選定に、議選監査委員が積極的に提案するということは、あまりなかったようだ。本来、議選監査委員が議員として問題意識を持って活動をしていれば、積極的な提案があってしかるべきだ。これこそ、議選監査委員の優位点である。行政監査や財政援助団体監査のテーマとして取り上げていただいたおかげで、議員の議会活動だけではなかなか得ることができない調査活動ができ、新たな知見を得ることができた。その知見に基づき、守秘義務に抵触しない範囲で私の所属する委員会の特定事件として、その団体に関わる調査へつなげていった。
 行政監査の場合、監査事務局が対象事務や団体に対して、時間をかけてヒアリングや資料収集を行ってくれる。議会にも調査担当は置かれているが、これほどの対応は望むべくもない。我が市の議会の場合、33人の議員に対して、調査担当はわずか3人。調査担当は、広報誌作成も担当しているから、調査だけに専念しているわけではない。結局、一般質問のための調査は、議員個人の作業となる。それが、監査事務局の場合は、事務局職員が専任で対応してくれる。事務局からは、テーマに関係する資料作成に加えて、質問すべき項目案の提案がある。資料は、テーマによるが、おおむねA4サイズで、少ない場合でも30頁程度。多い場合は、200頁ほどになることもある。これらの資料は、行政内部のみならず議会にとっても貴重な資料であり、問題のない内容については監査結果も含めてウェブ上への全面公開が求められる。我が市に限らず、多くの市町村が行政監査の資料と結果を公開することで、行政監査のレベルがアップしていくことは想像に難くない。
 さて、資料が一定程度整い、調査が進むと、関係者からのヒアリング実施となる。ヒアリングについては、実施日を決めて関係者に来ていただく。行政内部であれば、日程調整は比較的容易だが、外部の方々をヒアリングにお招きする場合、対象者の都合に合わせて日程を調整することとなる。また、外部の方々へのヒアリングは、専門用語などを使わないよう配慮する必要がある。それでなくても、監査を受けるなどめったにないことなので、多くの場合、緊張されている。詰問調にならないよう気をつけなくてはならない。
 我が市の場合、用意した質問項目について、当日、担当の監査委員がまとめて質問し、補足の質問を担当外の監査委員が質問するという形式をとっている。民間の方が対象の場合、用語なども慣れていないことが多く、正直にいえば、行政内部に対する監査に比べて、質疑については手間取る場合が多い。また、監査権限があるといっても、やはり民間の方が対象の場合は、こちらも遠慮がある。そのため財政援助団体監査については、よほどの不正などが見られない限りは、ツッコミが弱い印象は否めない。その分、財政援助支出を担当する側の行政部門への質問でカバーすることとなる。私も民間の方への質問の場合、普段に比べて相当ソフトに対応しているが、それでも後から「あいつは何だ」と陰で文句をいわれたことがあった。いずれにせよ、民間の方で行政内部に強力なコネクションを有していることを自負している方であっても、監査の対象に聖域はないのだということを知らしめ、厳正に監査を行うという事実が重要である。私の提案した財政援助団体監査の対象は、まさにそういった団体であった。こうした背景もあり、ある団体は、様々な配慮があったのか、これまで監査の対象とされてこなかったが、私が提案したことで初めて監査の対象となった。財政援助団体を監査の対象とすることそのものが、成果なのだ。

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