2017.04.10 公職選挙法
第3回 収入・報酬・実費弁償・弁当・飲食物の提供等
4 飲食物の提供について(公選法139条)
(1)飲食物の提供は原則禁止!
公選法は139条で、選挙運動に関しての飲食物の提供を禁じています。これは、候補者に限らず、誰が誰に対して行う場合でも適用されます。
したがって、選挙運動に関してされる限り、後援者が候補者に飲食物を提供したり、街の人が選挙運動中の運動員に提供することも、禁止されます。
なお、「飲食物」とは、加工せずにそのまま飲食できるものを指します。お茶やジュース、お酒、お菓子、果物などが典型的なものです。そのため、加工しなければ飲食できないものは、ここにいう「飲食物」となりませんが、投票依頼の目的で提供すれば買収罪が成立しますし、寄附として扱われることにもなります。
また、「提供」は供与や饗応(きょうおう)接待をいい、現実に相手が供与を受け、又は饗応接待を受けたことで「提供」があったことになります。
(2)「選挙運動に関し」とは?
では、「選挙運動に関し」とはどういう意味でしょうか。これにつき、一般的には「選挙運動に関することを動機とする」ことをいうとされています。
つまり、選挙運動そのものに当たらなくても、提供が行われる時と場所、態様や目的から選挙運動に関連してされたものと認められるときには、「選挙運動に関し」の要件に該当することになります。
(3)例外
以上の飲食物提供の禁止に対し、公選法は以下の2つの例外を設けています。
このうち、例外②について検討します。
(4)例外②「湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子」とは?
例外②は、「湯茶」と湯茶に「伴い通常用いられる程度の菓子」の2つを許容しています。
「湯茶」は、いわゆる来客時対応で出すお茶等の簡素なものをいい、ビール、お酒やジュースなどはこれに当たりません。また、コーヒーについては、お湯を注ぐだけのインスタントコーヒー程度ならばギリギリ許される範囲かと思いますが、お湯で抽出するようなものや紅茶などは、湯茶に当たらないと考えます。
湯茶に「伴い通常用いられる程度の菓子」は、よくいう「お茶受け」程度のものをいうとされています。よく挙げられる例として、アメやせんべい、まんじゅうなどがあり、通常(社会通念上相当)の程度を超えない限り、みかんやリンゴなどの果物、漬物などもこれに当たるとされています。
ただし、「お茶受け」の限界がどこまでかは、そのときの社会通念に従って判断されるため、明確な基準はありません。
私見ですが、あくまで例外的に提供が認められる場合なので、ケーキや高級菓子など価格や加工の程度が高いもの(質的な過大)は含まれないと考えられ、またアメやせんべい、まんじゅう、果物などであっても多量に提供する場合(量的な過大)にはお茶受けとはいえない、さらには買収とみなされるおそれがあると思われます。
例外であることを踏まえ、質的・量的に最低限度の提供にとどめておくべきでしょう。
【事例の検討】
以下の事例に問題はないでしょうか。
ス 候補者の友人が陣中見舞いといって、せんべいとケーキを差し入れた。
セ 選挙事務所に来た有権者用にウォーターサーバーを設置し、「ご自由にお取りください」と書いた札を立ててチョコレートを提供した。
ソ 選挙運動員のうち数名が材料を持ち寄って炊き出しを行い、夕食として選挙事務所スタッフ全員に振る舞った。
スについては、飲食物の提供は、第三者から候補者などへ提供することも禁じられていますので、例外に当たらない限り許されません。せんべいの提供であれば「お茶受け」と見うる余地がありますが、ケーキは「お茶受け」とはいえず、禁止されます。
セについては、単に水やチョコレートひとかけら程度の提供であれば例外②に該当しますが、自由に又は制限なく提供する場合は、もはや量的に過大であり、お茶受けと見ることはできず禁止されると思われます。
ソについては、炊き出しを振る舞うことはまさに飲食物の提供であるところ、材料を持ち寄った者だけで飲食するのであれば自己消費として許されます。それを超えて第三者に振る舞えば、飲食物の提供禁止に抵触します。
5 おわりに
これまで3回にわたって公選法について解説をしてきました。第1回冒頭で述べたとおり、公選法は基準が非常に分かりにくい法律です。
それでも日々政治活動に励み、選挙を戦う読者の皆様にとっては必須の法律であり、付き合っていかなくてはならないパートナーです。
この記事が少しでも皆様のご参考になれば望外の喜びです。